公開日 2026/03/11 06:30

まさにライブの特等席!個性派ヘッドホン・クロスゾーン「CZ-12」で“禁断の果実”を味わおう

「オーディオを、遊ぼう! “ザ・良音計画”」第7回
前田賢紀
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2025年4月にスタートした本「オーディオを、遊ぼう!“ザ・良音計画”」も7本目。連載陣諸先輩方の背中は遠くにも見えないが、音の仲間たちを、楽しく、真面目に、どっぷりとオーディオの楽しさに誘惑しちゃうぞ! というコンセプトは曲げず、一途に“良音計画”を遂行したいと思う。

クロスゾーンのヘッドホン&オンキヨーのヘッドホンアンプでCDやQobuzを聴きまくろう!

アコースティックな手法で“頭外定位”を狙う

今回、白羽の矢を立てたのはクロスゾーンのヘッドホン「CZ-12」だ。

CZ-12はクロスゾーン最新機種にして、シリーズ最廉価となる10万円切りのプライスタグと共に、ブランド認知拡大(ファン獲得!)をうかがう戦略モデルだ。では木よりも森と、クロスゾーン・ブランドの成り立ちそのものをまずお話ししよう。

クロスゾーン最新ヘッドホン「CZ-12」(価格:99,000円/税込)。ケーブル、キャリングケース付属

クロスゾーン・ブランドを擁するのは台湾の光学部品メーカー「亜洲光学」。デジタルカメラやスマホカメラはもちろん、ディスクドライブの光学ピックアップレンズなども手掛ける、業界の縁の下の力持ちである。

その縁の下〜が「そろそろ自社ブランドで勝負しよう!」と思い立ったのがコトの起こりで、何を作る? 誰と作る? どう作る? といった様々な試行錯誤から日本の大手オーディオメーカーのOBと出会い、ヘッドホンジャンルへの挑戦が決定された。これが2012年頃のこと。

当時は日本でもヘッドホン、イヤホンがオーディオ界の大きなうねりとなっており、ヘッドフォン祭、ポタフェスなどのイベントもヒートアップ。ソニー、ゼンハイザー、オーディオテクニカといった長年ヘッドホン、イヤホンを手掛けてきたメーカーに加え、有名無名、ベテラン&新人ブランドがバトルロイヤルを繰り広げる、そんなタイミングだった。

逆に言うと、よほど個性ある製品をリリースしないことには、ニューブランドが支持を受ける/注目を集めるのは難しい状況だったと言える。

クロスゾーンのデビューモデル「CZ-1」(価格:308,000円/税込)。現行品

クロスゾーンはその個性を頭外定位、つまりスピーカーで音楽を聴いているような自然なリスニングの実現に求めた。ヘッドホン、イヤホンの宿命でもある頭内定位を克服しようとしたのだ。

ちょっと面白いのがこの頭外定位の実現にあたっては、AVアンプでおなじみのバーチャルサラウンドやDSPなど電気的な解決法を採らず、純アコースティックな手法で勝負している点。だから仕組みとしては可視化しやすい。

前方左右のスピーカーが発する音は、右は右耳、左は左耳からだけ入ってくるわけではない。右の耳には右スピーカーの音がまず入るが、追って左スピーカーの音も入る。それをアコースティックなカラクリで行っているのがクロスゾーンだ。エンクロージャ側面のゴールドパイプ(音響管)を通過させることにより、逆チャンネルの到達に時差を発生させているのである。

逆チャンネルの情報を“タイムラグを設けて”届ける役目を果たすのが金色の音響管

ドライバーはベリリウムコーティングされたトゥイーターとウーファーに加え、逆チャンネル再生用ドライバーの3基が搭載される。シルバーのトゥイーターは前方から耳に向かって直線的にサウンドを放射する位置にあることから、「CZ-12」のサウンドキャラクターを決定づける存在と言っていい。

装着時に耳の前方に位置するシルバーのユニットがトゥイーター。左にタテに並ぶふたつの丸い隆起の内側に正チャンネル低音用ドライバーと逆チャンネル再生用ドライバーが収まり、そのサウンドは音響ホールから放出される

軽量化と低価格化を狙った戦略モデル

2016年発売の初代「CZ-1」からよりフレンドリーな価格を目指した「CZ-10」、よりヴォーカル再生に注力した「CZ-8A」に次ぐ4機種目が本機「CZ-12」である。目指すところは軽さと低価格化の両立で、本体質量は歴代最軽量となる約310g、キャリングケースも付属して税込価格9万9000円だ。

ヴォーカルのより魅力的な再生に注力したクロスゾーン「CZ-8A」(価格:231,000円/税込)。現行品

軽量化はより一般的な形状のヘッドバンドに変更されたことが大きい。エンクロージャのデザイン、パーツ自体は「CZ-10」と同じだが、吸音材の出し入れなどの実施により、「CZ-12」は他モデルよりメリハリがあり、よりアクティブな方向へチューニングされているという。

軽量性を求めて変更されたヘッドバンド。小さくたためるのでアウトドアリスニングを楽しみたくなる

まさにライブ会場の「特等席」が再現!

では御託はこれくらいにして、さあ、クロスゾーンを遊ぼう!

能率は99dBと密閉型ヘッドホンとして標準的だが、3基のドライバーを駆動するわけだから、スマホダイレクトで本領発揮とはいかないだろう。据え置き、モバイルを問わず、ヘッドホンアンプを用いたいところ。

そこで連載前回記事で組み立てたオンキヨーの特許技術を搭載したヘッドホンアンプに登場願った。ミスター・オンキヨー・レッツ・ジョイナス!

このヘッドホンアンプは独自回路によるノイズレスが特長で、色付けなく、入ってきた情報をそのまま丁寧に調理してくれる。六面にアクリル板を用い、電子回路が丸見えなその『TRON』的サーキットデザインは、昭和の元少年の心をくすぐって止まない(笑) 。

オンキヨーの特許技術搭載、超低ひずみヘッドホンアンプキット「TRHPA-KIT01」(価格:44,000円/税込)※共立エレショップにて予約受付中

音源は毎度おなじみハイレゾサブスク「Qobuz」である。DACはオーディオテクニカのコンパクトモデル「AT-HA40USB」。LINE出力からオンキヨーに接続した状態で、クロスゾーン様をお迎えした。

直接音、間接音をアナログ的にミックスしたことによる頭外定位であるならば、場の再現性が得意であろうと、音源はクラシックやジャズなど生録方面を、ロックやポップスはライブ盤を選んだ。

まずはチャイコのPコンといえば! の代表的熱演、アルゲリッチとコンドラシンのデッカ録音をセレクト。特にこの第三楽章における高市早苗首相のドラミング以上にロックな、四輪駆動車のような爆走感がたまらない。演奏が良すぎてコーフンしてしまうので、もしかしたら試聴ソフトには不向きかもしれない(笑)。
 
いやはや、これは噂にたがわぬ鳴りっぷり! 頭外定位と言ってもずっと前方に、それこそスピーカーを響かせるようにはならないけど、確実に頭の中ではなく、目〜額の少し前あたりに聴こえる! 演者との距離が感じられる。中規模ホール1階の中央前方で聴いているような印象だ。うーん、アルゲリッチが、コンドラシンが近いっ!

クラシックソフトだともうすこし低音がたっぷりが良いと感じたため、ヘッドホンアンプからプリメインアンプに換えラウドネス・スイッチをオン! 熱心な音の仲間たちはトーンコントロールやラウドネスを使わないピュアダイレクト主義者が多いと察するが、自分の好みの音を手に入れる手段としても、トンコン、ラウドネスは積極的に使いたいもの。

「CZ-12」を着けっぱなしでこの原稿を書いていて、もう3、4時間経ってますが、その軽量性と思いのほか耳にハマるおにぎり形状のイヤーパッドが装着感バッチグー。

音楽のみならず、ドキュメンタリーやスポーツ観戦など映像作品、ウェブ動画もいい。なにより、規格がどうとか、コーデックがなんだとか、使うにあたっての適合制限がないのが最高だ。だって、ミニジャック一発で何にでもつなげられて、頭外定位という禁断の果実を味わえるのだからね!

その後、YMOのライブ盤「YMO TRANS ATLANTIC TOUR LONDON 10/16/1979 (Live at The Venue October 16 1979)や、ユキヒロさんの「METAFIVE(LIVE)」で、1000人程度のライブホールの包まれ感を楽しんだ。

わけても後者は2016年録音と最近(でももう10年前かあ!)なので音の輪郭もシャープだし何よりヴィヴィッド、味が濃い!  「RADIO JUNK」や「CUE」などYMOの楽曲も織り交ぜるなど、楽曲のセレクトもフルコースでお腹いっぱい。
  
前者、YMOは微妙にフュージョンな“あの頃感”を楽しみつつ、ユキヒロ、教授を偲ぶことにいたしましょう。しんみり。
  
神保彰さんの最新作「34/45」を聴いたら、これまた驚かされた! ドラマーのソロアルバムゆえドラムが主役なのは道理だけど、まるで自分が神保さんのポジションで聴いているようなのだ。まるで録音の現場に立ち会っている⁉ と言っては盛り過ぎだけど、特等席には違いない(1曲目「Mid Summer Shuffle」の角松敏生さんのギターも最高!)。

シンセサイザーのモニターとしても優秀!

それから「あ、そうだ!」との思い付きで試してみたのが、シンセサイザーのモニターヘッドホンとしての活用だ。

時々アナログシンセをイジって遊んでいるが、その際の定番ヘッドホンはフォステクスの「RPKIT50」。フォステクスお得意の平面振動板ユニットを用いたモデルで、やや能率の低いのが珠にきずなのだが、モニターライクなまっすぐな聴こえ方が好ましい。

わたしの定番ヘッドホン、フォステクス「RP-KIT50」とクロスゾーン「CZ-12」の揃い踏み

でもってシンセに「CZ-12」をつないだところ、まず能率が標準的なので音量が稼げた、とこれは当然。そして頭外定位というクロスゾーンならではの特長がより疲れにくい響かせ方/聴かせ方となっているようで、長い時間リラックスして弾いて、遊んでいられたのだ。

閉塞感が軽減されたと言うべきか、これは意外にして嬉しい新発見だった。 

「CZ-12」をシンセで使ったら……なんだか心地よかった!

初代「CZ-1」発売当初の価格は税込27万5000円。「ニューブランドのこんな高額なヘッドホンが売れるのか?」とメーカーからして不安を感じていたというが、好意的な反響を得てシリーズ展開に至ったクロスゾーン。世の中あれもこれもインフレで、いつしかヘッドホンのプライスタグ「〇〇万円」もめずらしくはなくなってきた。

どんなにキレが良くてもフォークボールだけで投球が組み立てられないのと同様、クロスゾーン一台でヘッドホン趣味を完結することはできないだろう。これはソニーやゼンハイザーといったど真ん中ストレートに対するオルタナティブな、しかし積極的な選択なのである。

「百読は一聴に如かず」はまったく正しい。オーディオ専門店で、家電量販店でクロスゾーンと運命の出会いを果たしてほしい。あなたが長年鍛え上げてきた“オーディオ耳”は、この個性派をどう感じるだろう?

個性派ヘッドホン、ぜひ体験して欲しい

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