「交換パッド」でヘッドホンのポテンシャルをさらに引き出す! カスタム職人・ZMF、「Universal Pads」での音質への飽くなきこだわり
ヘッドホンを中心にラインナップを強化するZMF
アメリカ・シカゴに本拠を置くZMF headphones(以下、ZMF)といえば、天然木ハウジングなど使用素材を厳選し、製造もMade in USAにこだわるなど、徹底したモノづくりが特徴となっている新進気鋭のオーディオブランド。
ラインナップは高級ヘッドホンがメインとなっているが、近年はヘッドホン用アクセサリーのほか、ヘッドホンアンプなども手がけ始めている。そんなZMFから、新たに他社ヘッドホン向けの交換用イヤーパッドが登場した。それが「ZMF Universal Pads」だ。
ZMF Universal Padsの特徴を端的に表現すると、“音質向上のためのチューニングアイテム” といえる。単に装着感が向上するだけでなく、お気に入りのヘッドホンのサウンドが生まれ変わってくれるのだ。
本来の交換用イヤーパッドといえば、消耗品であるイヤーパッドを定期的に交換することでベストな装着感へと返り咲くためのもの。当然のごとく純正品が主流で、市販品も “安価であること” が最大のメリットとなっている。しかし、ZMF Universal Padsはこれまでの製品とは役割が異なっていて(役割が増えているといってもいい)、音質チューニングの役割も担ってくれる。
これは、ZMFが起業時に市販ヘッドホンのカスタムメーカーだったことが大きい。創始者であるザック・メアファー(Zach Mehrbach)氏にとって、ヘッドホンのカスタマイズは得意とするジャンルで、音質や音色に少なからず影響を与えるイヤーパッド造りも手慣れたものなのだろう。結果として、ZMF Universal Padsはこれまでの交換用イヤーパッドとは趣が異なる、画期的な製品に仕上がっているのだ。
“音質”をさらに追い込む豊富なバリエーション
ZMF Universal Padsの特徴は3つある。ひとつは装着感の向上、続いて音質の向上、最後にバリエーションの豊富さだ。
このうち、前者2つに関わるのが厳選した素材の採用だ。表皮にはラムスキンやスウェード、カウハイド、プロテインレザー、ラムスキンとスウェードを掛け合わせたハイブリッドなど、ヘッドホンごとに異なる素材をチョイス。また、製品によっては穴あり穴なし、高さの異なるモデルなども用意され、ヘッドホンそれぞれ、ユーザーそれぞれにとってベストなフィット感を提供してくれる。
また、モデルによってはフィルター(イヤーパッド内側に薄い布を付属している)も用いるなど、チューニングパーツとして仕立てられている。しかも、聴感だけでなく音響特性も測定して、製品として作り上げているというのだから恐れ入る。
ここまで徹底したモノづくりは、羨ましいかぎり。というのも、筆者は以前から某社の市販イヤーパッドに関して音質のアドバイザーを担っているが、その際、コストの都合で無念にも不採用となった仕様が多々あったからだ。市販イヤーパッドはあくまでも消耗品であり、純正品と大差ない金額で纏めなければならないため、販売できる価格にある程度の縛りがあるためだ。
一方、ZMF Universal Padsはメインの価格帯が2万円程度と、純正品の価格に揃えない独自のモノづくりを行っている。結果として、装着感と音質の両面で妥協のない製品に仕上がっている。僅かばかりながら市販イヤーパッドの制作に携わった人間にとって、このZMF Universal Padsはとても魅力的な製品に映る。
また、バリエーションの豊富さにも頭が下がる思いだ。たとえばゼンハイザーHD6xx用は「スウェード穴あり」「ラムスキン穴あり」「ラムスキン(穴なし)」の3タイプも用意され、専用のプラスティックパーツが必須で他の市販メーカーが敬遠しがちなゼンハイザーHD8xxも、「スウェード」と「ラムスキン」の2タイプが用意されている。このラインアップの豊富さは嬉しいかぎりだ。
ノムケンおすすめパッドを厳選して紹介!
羨ましさのあまり、ついつい前段が長くなってしまったが、ここからは特にZMF Universal Pads仕様をオススメしたいヘッドホンと、それに組み合わせる推奨タイプを紹介していこうと思う。
まずはFOCAL(フォーカル)の「UTOPIA SG」だ。こちら、繊細なディテール表現と大胆な抑揚を併せ持つFOCALのフラグシップヘッドホンで、そのままでも素晴らしいサウンドだが、フォーカル用「ZMF Focal+ Subs」に交換することで、さらなる音質向上が押し進められる。
モデルは3タイプあり、純正と似ている「ラムスキン穴あり」は純正よりも音像がクッキリしてくれてよいが、一番のオススメは「スウェード穴あり」タイプ。こちらに交換することで、聴き心地の良い、それでいてフォーカスの良好な中高域に変化してくれる。リスニング用途としては理想的な変化だと思う。なお、フォーカル用はもうひとつ「スウェード穴なし」タイプもラインアップされているので、密閉型などのモデルではこちらも試す価値がありそう。
続いてオススメなのが、やはりゼンハイザーHD8xx用「HD8xx Sennheiser Subs」だ。「スウェード」と「ラムスキン」の2タイプが用意されているが、こちらはモデルによってベストな製品が異なる印象だった。「HD 800」は「ラムスキン」と組み合わせることで高域のちょっとしたディップ(が影響しているだろうモヤモヤ感)が解消されるし、「HD 800 S」は「スウェード」と組み合わせることで帯域バランスを変えずフォーカスのみが高まってくれている印象。ヘッドホンのモデルによって、ベストなバージョンが異なる典型例といえる。
ゼンハイザーHD6xx用「HD6xx Sennheiser Subs」は、ヘッドホン側のバリエーションが比較的多いこともあってか、使いこなしにややクセがある。「HD 650」では「スウェード穴あり」「ラムスキン」「ラムスキン穴あり」の3タイプとも相性がよく、「ラムスキン」ではダイレクトでキレがよい中高域とややウォーミーな低域とか見事なバランスした現代的なサウンドに変化してくれる。
「ラムスキン穴あり」は、フォーカス感が向上して楽器の音色の特徴やボーカルの表情がよく伝わってくるようになる。音色が純正に近いので「HD 650」本来の音が好きな人はこちらがオススメだ。最後の「スウェード穴あり」は、音色が自然で高域ものびのびとしている。正直「HD 650」本来の音とは随分とかけ離れてしまうが、リスニング用途で使うことが多い人にはこちらがベストだろう。
一方「HD600」の場合は音質的には確実に向上するものの、音色変化が顕著なため、好みが分かれそう。個人的には「ラムスキン穴あり」が「HD 600」らしさを残しつつZMF Universal Padsのメリットを感じられる組み合わせだった。
もうひとつ、オーディオテクニカMシリーズやソニーCD900ST系用の「ATH + Sony Sub Pads」も特徴的だった。サウンド的にピッタリ填まってくれたのはオーディオテクニカ「ATH-M50x」で、純正よりも厚みのあるイヤーパッド形状のおかげでほんの僅かに耳から離れてくれるため、高域の鋭さが和らぎ、それでいて伸びやかなサウンドへと変化してくれた。音場表現も向上してくれるので、モニター用とリスニング用、両使いができるヘッドホンへと変化してくれた。
ちなみに、Mシリーズの最上級モデル「ATH-M70xa」はイヤーパッドの取付方法が異なるためこちらは利用できない。ソニーは「MDR-CD900ST」「MDR-M1ST」で試したが、音場が広がる代わりに音が遠くになってしまうため、こちらも好みが分かれそうではある。
このほかにも、HIFIMAN用の「Hifiman+ Subs 2024」や、もともとのZMF用もあり、いずれも大なり小なり装着感と音質の両面で向上が見られた。そのクオリティアップは、市販ケーブル交換に匹敵する、いや、ヘッドホンによってはそれ以上の効果を体感させてくれる画期的な製品となっている。皆さんにも、ZMF Universal Padsがもたらしてくれる良サウンドを、ぜひ一度体験して欲しいと思う。
(提供:ブライトーン)































