公開日 2020/04/03 06:30

AKGの新生“Yシリーズ”、意外にも初のノイキャンBTヘッドホン「Y600NC」をチェック

<山本敦のAV進化論 第186回>


アクティブ・ノイズキャンセリング機能の効果を報告したい。本機が搭載しているのはハウジングの外側・内側の両方に向けたマイクによって集音された環境音を、ノイズの解析・消去に使うハイブリッド方式のデジタルNC回路だ。

消音効果はどの帯域もおしなべてとても高いが、あえて言うなら特に人の話し声がきれいに、気にならないレベルまで抑えてくれる。消音効果に違和感を感じることがなく、すっと静寂に包み込まれるような自然な使用感に整える冴えた技術に、マイクロフォンのリーディングブランドでもあるAKGの底力を感じる。

多くのANC機能を搭載するヘッドホン・イヤホンがそうであるように、本機もまた外音取り込み機能である「スマートアンビエント」を搭載する。取り込み方が2種類あり、音楽再生のボリュームを下げて外の音に集中したい時には「トークスルー」、音量を下げたくない時には「アンビエントアウェア」を選ぶ。本体右イヤーカップ側面のリモコンボタンから、外音取り込み機能のオン・オフを選ぶ。ボタンを押したときに2種類のモードのどちら側でスマートアンビエントを起動するかはアプリで先に設定する仕様だ。

外音取り込みの効果も報告したい。アンビエントアウェアをオンにすると、屋外を歩きながら音楽を聴いていても自分の足音が聞こえる。周囲に注意を向けるべき環境音にしっかりと気が付くはずだ。再生中の音楽にマイクに由来するノイズは乗らないので、移動しながら音楽を聴く場面では積極的に使いたい。

AKG Headphoneアプリから各種設定が可能。スマートアンビエントのボタン操作の割り当てもここから行う

イコライザー機能は任意のカーブを設定したユーザーのカスタム値を複数個保存できる

ヘッドホンは質量を約322gとしている。イヤーカップが少し大柄なので重そうに見えるかもしれない。実際にスペックだけを比較すると、本機よりも軽いANC機能を搭載したBluetoothワイヤレスヘッドホンは他にもある。

本機の魅力は柔らかく、耳の形に自然と沿ってくれるクッションを搭載したことと、パッシブな遮音性も自然に得られる適度な側圧感を実現していることだ。耳を包み込まれるような優しい装着感を実現しているので、長時間にわたる飛行機や電車、バスなどの旅の時に身に着けていても疲れを感じないと思う。

クッション性の高いイヤーパッドを採用

本体の操作は、左のイヤーカップがボリュームのアップダウンのダイヤルになっているギミックが面白い。アンビエントアウェア機能のオン・オフをスイッチするボタンや、再生一時停止のボタンをイヤーカップの側面に付けているが、必要最低限の機能操作に絞り込んでいるため、操作性はシンプルで馴染みやすい。アプリも同様に操作をすぐにマスターできるだろう。

イヤーカップの側面にリモコンボタンを配置する

一点不足に感じる部分は、ANC機能のオン・オフの切り替えがアプリ、本体のボタンのどちらからもできなかったことだ。つまりANC機能は電源を入れてから常にオンで使うことを想定しているヘッドホンなのだ。例外として、付属のケーブルを使ってプレーヤーに有線接続した場合は本体の電源を入れなくてもリスニング可能なので、ANC機能はオフになる。

ケーブルをつないでワイヤードリスニングも可能。本体の電源をオンにしなくても有線リスニングの場合はパッシブのヘッドホンとして使える

外の音をモニタリングできる機能も載せたことで、安全性は十分に確保できているという考え方なのだろうか。合理的だとは思うし、実際にオフにできないことであまり不便に感じることもないのだが、選択肢として「BTオン&NCオフ」という使い方も用意してほしい。もしソフトウェアアップデートにより仕様を変えられるのであれば、ANCの「レベル調節」機能も含めて将来トライしてほしいと思う。

有線接続のY50から着実に進化を遂げてきた、Yシリーズの最上位モデルのエッセンスは最新のY600NCにもしっかりと受け継がれていた。名門AKGのスピリットを受け継ぐANC機能搭載のワイヤレスヘッドホンが実売価格25,000円前後で購入できるのであればおトクな買い物になりそうだし、実際に同価格帯では音質とデザイン、機能性の3拍子が最も高いレベルに揃ったヘッドホンのひとつだと思う。カラフルなY400 WIRELESSも女性の音楽ファンに人気を集めるヘッドホンになりそうだ。

硬派でシックなたたずまいのY600NCは、従来のYシリーズのヘッドホンからまた一皮むけた落ち着いた品のある力強さをユーザーに実感させてくれるだろう。

(山本 敦)

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