公開日 2012/08/03 10:00

【レビュー】クリプシュのフロアスタンドスピーカー「RF-82 II」のコストパフォーマンスは?

ブックシェルフ「RB-61 II」と聴き比べも
岩井喬
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■フロアスタンド「RF-82 II」のコストパフォーマンスは?


リファレンスシリーズにおいて、最上位「RF-7 II」のすぐ下に位置するフロアスタンディング型2ウェイ3スピーカーモデルが「RF-82 II」だ。セラミックモーター搭載の2.5cmチタンドライバーユニットに装着された90°×60°スクエア“Tractrixホーン”からなる高域と、20cmセラメタリック・ダブルウーファーによる低域から構成されており、空気の流れを最適化したデュアル・リア・ファイアリング式バスレフポートを採用している。

RF-82 II

新デザインとなったフット部はオプションでスパイクも用意されており、スピーカーターミナルはバイワイヤリングにも対応。キャビネットはチェリーとブラックの2色がラインナップされているが、フロントバッフルはどちらのカラーリングにおいても同じブラック仕様となる。

背面の様子

チェリーモデルもラインナップ

能率は98dBと非常に高い設定となっているので小出力の真空管アンプとの組み合わせでも十分な音量を出すことができるだろう。なお今回の試聴では本機とほぼ同じ価格帯となるSACDプレーヤー、デノン「DCD-1650SE」とラックスマンのエントリークラス・プリメインアンプ「L-505uX」を組み合わせることにした。

サウンドのファーストインプレッションとしては、「L-505uX」のきめ細やかでバランス良いサウンドをそのままストレートに引き出してくれる印象で、“Tractrixホーン”による高域のスムーズな伸びと素早いアタック感、ヌケ良く厚みもある中域の再現性の高さを存分に堪能できる。

低域方向は大口径ユニット2発による量感豊かな押し出しに支えられ、どっしりと重厚なベースサウンドだ。クラシック音源としてSACDの諏訪内晶子をチョイスしたが、バイオリンの滑らかでハリ良い弦のタッチとともに、バックに広がるオーケストラの細やかでミドルレンジが充実したホールトーンが流麗に浮き立つ。ローエンドの響きはちょうど良いダンピング感でアタックの反応も速い。

解像感や音場の広さに関しては程良い表現にとどまるが、すっきりとしたヌケの良さと重厚感を同時に味わえるホーンシステムならではの醍醐味がこの価格レンジでも体現できることにおいて高いメリットを感じることができた。

続くジャズ音源のオスカー・ピーターソン・トリオではアタックの速いピアノは軽やかなタッチで、スネアブラシは荒々しい強めの当たりを表現。ウッドベースはボディのふくらみがリッチで弦の艶も程良く出している。

もうひとつのジャズ音源Pure2においては、鮮やかに切れ込むホーンセクションが元気良いはつらつとした輝きを見せ、ピアノのアタックも鋭く立ち上がる。

ウッドベースは弾力良く爪弾きの輪郭を腰高に描く。ドラムの響きは豊かでふくらみが強いが、ボーカルの口元はスカッとした鮮やかなキレを持っており、凛としたヌケ良いエッジを聴かせてくれた。

使用イメージ

ポピュラー音源としてはバンドサウンド系のYUKIと、打ち込み系のデジタルサウンドであるKOTOKOを用意した。

まずYUKIではクール&ウェットなボーカルが鮮やかに浮き立つ。クリーンギターの爪弾きもヌケ良くクリアに響く。リズム隊は太く穏やかに伸び、軽々と浮き上がる高域と対照的だ。

KOTOKOにおいては、エッジの硬い輪郭感となるボーカルやコーラスが粒立ち良く描かれる。口元はストレートに伸び鮮やかさが引き立つ。キーボードのフレーズはボディの厚みを感じさせつつ軽快なタッチで押し出される。シンセベースは引き締めが甘いが量感はたっぷりと得られている。

最後にロック音源としてヒート、エイジアを聴いてみた。スウェーデンの若手ハードロックバンドであるヒートはどっしりと太いキックドラムと重みのあるベースを軸に、キラキラとした輝きを持つキーボードのフレーズは中域が厚く存在感がある。

ボーカルやエレキは鮮やかに際立ち、ソロギターは刻みの粒立ちを細やかに引き出す。特に早弾きフレーズは鮮度の良いソリッドさを持つ。

続くエイジアは結成30周年を記念して発売されたオリジナルメンバーによるアルバムを用いたが、ヌケ良く詰まりのないボーカルの質感はハリ良く厚みもあり、ナチュラルで落ち着いており聴きやすい。ドラムの中低域はふっくらとした太さを持ち、オルガンの響きも深く心地が良いものだ。エレキのディストーションはボディ感も十分でまろやかかつ爽やかに浮き上がる。

■ブックシェルフ「RB-61 II」と聴き比べてみる


ここでリファレンスシリーズにおけるブックシェル型ミドルクラス機「RB-61 II」と入れ替え、コンパクトモデルでのホーンサウンドも検証した。

RB-61 II

サランネットを装着したところ

“Tractrixホーン”の構成は「RF-82 II」と同じものとなるが、低域は一回り小さい16.5cmのセラメタリック・ウーファーを搭載する。レンジ感のバランスが良く、低域の押し出しとホーンサウンドの融合感も絶妙だ。

諏訪内晶子では厚みあるバイオリンのボディ感をしっかりと残しながらハリ良いタッチを鮮やかに描く。金管楽器のリリースは締まりがあり安定した太さを感じる。

オーケストラ全体の粒立ちも細やかでホーンならではの音の立ち上がりの良さ、微細な音の再現性の高さを実感できた。

Pure2においてはホーンセクションのアタックの素早さ、リリースのリアルな音伸びが印象的。ドラムの腰高なキレを持ち、鮮度良く立ち上がる。弾力豊かで連スポンスの良いウッドベースの音色も好ましい。ボーカルは鮮やかなウェット&クールな口元の輪郭を描き、リッチなアンビエントを見せる。

背面の様子

KOTOKOでは声の艶ノリが良く、爽快に抜けるボーカルの浮き立ちが良い。ベースは太く、ドスンと乾いた厚い押し出しとなるキックの低域が下支えとなり、鮮やかに輝くシンセサウンドやギターのリッチな倍音の厚みをバランス良く包み込む。

本機もチェリーモデルを用意

ロックのヒートではザクザクと歯切れの良いボトムの厚いギターリフが堪能でき、太く安定したリズム隊と際立ち良いボーカルとの対比が秀逸だ。

エイジアでは爽やかかつ暖色系の落ち着きあるボーカルと、素直で癖のない高域が綺麗に映えるギター、オルガンが心地よく耳にとどまる。サイズは大きく異なるが、この「RB-61 II」ではフロア型とは違うホーンの魅力をよりリーズナブルに楽しめるだろう。

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■文中におけるアルバム名表記のないジャンルごと基本試聴ソース詳細
○クラシック
・諏訪内晶子『シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲』(ユニバーサル・SHM-SACD:UCGD-9007)
○ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(ユニバーサル:UCCU-9407)
・『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』〜届かない恋、夢であるように(F.I.X.:KIGA10)
○ポップス
・YUKI『プレイボール/坂道のメロディ』(ソニー:ESCL-3897)
・KOTOKO『→unfinished→』(ワーナー:1000300210)
・中島愛『Be With You』〜TRY UNITE!、恋、好キッス!KISS!!(フライングドッグ:VTZL-38)
○ロック
・H.E.A.T『ADDRESS THE NATION』〜LIVING ON THE RUN(アヴァロン:MICP-11050)
・エイジア『XXX』〜BURY ME IN WILLOW(アヴァロン:MIZP-30002)

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