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公開日 2010/07/16 09:58

岩井 喬が聴くファイナルオーディオデザインのBA型イヤホン“heaven”シリーズ

音楽の根底にあるものをそのまま引き出すサウンド
岩井 喬
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ヘッドホン愛好家たちを唸らせた、金属筐体採用のダイナミック型イヤホン「FI-DC1601」シリーズ。その流れを受けて鏡面仕上げのステンレス筐体に、シングルユニットのバランスド・アーマチュア・ドライバー(以下、BAドライバー)を搭載した「FI-BA-SS」の登場も記憶に新しい。こうした独創的なスタイルを貫く製品を送り出してきた「ファイナルオーディオデザイン」が、また新たなモデルを市場に投入することになった。それが「FI-BA-SS」の下位モデルとなる、金属筐体採用の普及帯BA型イヤホン「heaven」シリーズだ。

“heaven s”(左)と“heaven a”(右)

「heaven」シリーズは真鍮を筐体に用いた“heaven s”「FI-BA-SB」と、アルミを用いた“heaven a”「FI-BA-A1」から構成される。基本的な意匠は同じものとなるが、切削加工のうえ鏡面仕上げが施されたハウジングは密度感のある重みを持ち、美しい輝きを放っている。コードブッシュ部にブランド刻印がある以外、余計な情報となる文字は存在せず、シンプルな音楽再生を目指す心意気が感じられる。

技術面では「FI-BA-SS」同様に、筐体内の空気の流れを最適化するという、特許出願中の独自技術BAM(Blancing Air Movement)機構を採用。ネットワークを排除し、マルチドライバー方式で顕著な位相や時間軸のずれを解消するとともに、BA型ならではの繊細なタッチに加え、金属筐体による不要振動の抑制と立ち上がりの速さ、そしてダイナミック型ドライバーのような密度の濃いサウンドを両立。また、搭載するBAドライバーも自然な音色が得られるカスタム仕様を用いている。加えて、100を超えるサンプルから導き出されたという素材配合によるイヤーパッドは、鈍重な低音を発生させず、自然な低域再生を実現できるという。

本体後方には空気の流れを整えるBAM機構用の穴が空いている


なお、真鍮削り出しボディを採用した“heaven s”のケーブルは、オリジナルのフラット形状を採用。線間の距離を設けることで、各信号間の干渉を免れることができ、より自然で透明感あるサウンドを実現できたという。また絡みにくく取り回しにも都合が良い形状である。

“heaven s”のオリジナルフラットケーブルは線間の距離を保ったまま接続することで信号干渉を抑えるとのこと

■ストレートな音色の“heaven a”/華やかで艶やかなサウンドの“heaven s”

サウンド面についてだが、まずはアルミ削り出し筐体の“heaven a”からレポートしていこうと思う。傾向としてはストレートな音色で付帯感も少ないが、アコギなどの弦楽器で僅かに倍音の煌き感が付加されるくらいで、基本は素直なトーンを持ったサウンドといえる。楽器の芯を的確に描き、音場の分離感の良さ、透明感の高さ、音像の鮮やかさが際立つ。「ブルックナー」では澄んだ音場に広がる清涼なハーモニーが印象的。音ヌケも良く、管弦楽器の粒の細かさと、ナチュラルな音色の良さを感じる。「オスカー」ではブライトなタッチのピアノと、ハリ良く弦のたわみ感が映えるウッドベースが展開。弦にはほのかな艶やかさも伴うが、大局に影響するようなものではない。「AP」のストリングスは細やかなハーモニーを奏で、鮮やかで音伸び良い。女性ボーカルは音像定位が的確で、わずかな肉付き感がある程度で、ソリッドな口元が鮮やかに際立つ。「メニケ」ではリズム隊はタイトに展開し、低域の制動力の高さを窺わせる。エレキはミュートの粒を細やかに描き、芯の見えるディストーションである。

続いて真鍮削り出し筐体を採用した上位機の“heaven s”であるが、“heaven a”と較べ、全体的に音場が華やぎ、音像の艶やかさや低域の豊かさも感じられるようになる。解像度も高く、オーディオ的な聴きやすさのベクトルはこの“heaven s”の方が高いように思える。対しての“heaven a”はニュートラルなバランスで、モニター的な傾向にある。「ブルックナー」では管弦楽器の音伸びが豊かで、ローエンドはすっきりと抑え、滑らかな質感と、空間の雰囲気の良さが伝わるサウンドだ。「オスカー」のピアノは粒が細かく伸びやかなタッチで、音場も澄みきっている。ウッドベースの弦は爪弾きの弾力が豊かで、むちっとした質感を感じる。胴鳴りも制動良く色艶の良い余韻を聴かせてくれる。スネアブラシも軽快なキレをみせる。「AP」はストリングスのまとまり良いハーモニーやベースのハリの良さが引き立ち、アコギの弦も太くリッチなハーモニクスを響かせている。女性ボーカルは倍音のハリの良さが輪郭に現れ、スマートながら安定した肉付き感がある。艶やかさに溢れた質感である。「メニケ」ではドラムのキレの良さと、ベースのほのかな太さのあるリズム隊が安定した音場を形成。バランスよい音像のボーカルはハスキーなエッジを華やかに描き、ディストーションギターさえ艶良く表現する。

「heaven」シリーズはベースにある技術は同じものであり、音色こそ違えど、優劣のあるものではない。音源の芯をそのまま引き出し、音楽の根底にあるものをそのまま引き出すサウンドはどちらにも窺える。リスナーのサウンドの好みによって、感性にフィットするモデルを選択すれば問題ないだろう。

■試聴ソース
・ユーベル・スダーン/東京交響楽団『ブルックナー:交響曲第7番』(N&F:NF21202、略称:ブルックナー)
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユニバーサル:UCCU-9407、略称:オスカー)
・『Pure〜AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』(F.I.X.:KIGA2、略称:AP)
・デイヴ・メニケッティ『MENIKETTI』(DREAM CATCHER:CRIDE35、略称:メニケ)

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