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<CEATEC>ソニー、スマートウォッチ「wena」など支援・スピンアウト事業を紹介/NHK技研は曲げ伸ばし自在「ディフォーマブルディスプレー」披露
最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC 2026(シーテック)」が幕張メッセで開幕した。本稿では、ソニーグループが投資先やソニー発のスピンアウト企業などを集めた展示と、NHK技研/NHK財団による「ディフォーマブルディスプレー」の展示を紹介する。
ソニー、投資から事業化までを支援する「Sony Innovation Fund」
ソニーブースでは、「WHERE IDEAS GROW THROUGH CO-CREATION」をテーマに、Sony Innovation Fundの仕組みに加え、実際の投資先やスピンアウト企業の取り組みを紹介。ソニーがどのような分野に投資し、スタートアップの技術と自社の事業や技術をどう組み合わせているのかを示していた。
Sony Innovation Fundは2016年にスタートし、2026年で10周年を迎えた。単なる金融投資ではなく、投資先とソニーの各事業部門をつなぎ、技術開発や事業開発、協業へ結び付けることを重視している。現在はソニーベンチャーズが運営を担う。
活動プロセスは「Discover」「Invest / Incubate」「Connect」「Grow into Business」の4段階に整理。スタートアップやアイデアを発掘し、投資・育成を行ったうえで、ソニーが持つ技術や事業、IP、ネットワークなどと結び付け、最終的に事業化や社会実装へつなげるという流れだ。
現在の重点投資領域は、DeepTech、ClimateTech、EnterpriseTech、Fintech/DLT、Entertainment、LBE(Location-Based Entertainment)の6分野。これまでに約3万9000社をスクリーニングし、1万3000社以上にインタビューを実施。投資実績は約220社で、このうち約170社が現在もポートフォリオ企業として活動し、累計29社がイグジットに至ったという。
また、投資先の約40%でソニーグループとの具体的な協業を進めており、共同プロジェクトや顧客・提供者としての関係構築、知見の共有などを通じて、投資先の価値向上を支援している。
ソニーから独立した「wena」、新生「wena X」を展示
ソニー発の事業が独立企業へ移行した事例として、スマートウォッチ「wena」が展示されていた。wenaは2016年にソニーから一般販売を開始し、第3世代まで製品を展開。その後2025年に、約10年間にわたって事業を率いてきた開発チームが独立し、「augment AI株式会社」を設立した。ソニーグループからwenaの商標や特許を継承し、独立後初の製品として「wena X」を開発している。
wena Xでは、腕時計スタイルとスマートバンドスタイルをワンタッチで切り替えられる2way構造を採用。独自の超省電力OS「wena OS」を搭載し、NFC決済やジェスチャー操作にも対応する。
従来のwena 3では白黒だったディスプレイをフルカラー化するとともに、本体を小型化。80mAhの小型カーブバッテリーと独自OSの省電力性により、約1週間のバッテリー駆動時間を実現したという。対応する時計バンド幅は16 - 24mmで、一般的な腕時計と組み合わせるほか、時計部分を外してスマートバンド単体として使うこともできる。
ヘルスケア機能も強化。ACCELStarsとの資本業務提携を通じて睡眠・運動関連機能を拡充し、130種類以上のエクササイズに対応する。Google ヘルスコネクトやAppleのヘルスケア関連機能との連携も掲げる。取得したデータを国内で保管し、自社で管理する点も特徴としている。また、音声入力とAIを組み合わせ、話しかけた内容に対するChatGPTなどからの回答をディスプレイに表示するといった利用方法も説明された。
wena Xはクラウドファンディングで約6.4億円に達したと説明。開発・量産に向けては総額17億円のシードラウンドを実施し、ソニーをはじめ、製造・販売・技術面で連携する事業会社や投資家が参画している。一般販売は来年度以降を想定。家電量販店に加え、時計店などへの展開も検討しているという。
自動運転のTIER IV。ソニー製センサーの広ダイナミックレンジを活用
投資・協業事例として、自動運転関連企業のTIER IV(ティアフォー)も出展。ソニーの車載向けイメージセンサー技術との連携について説明していた。
自動運転用カメラでは、暗所から明所まで白飛びや黒つぶれを抑えて撮影できる広いダイナミックレンジが重要になる。また、LED信号機の撮影も課題のひとつだ。LEDは人間の目には連続して点灯しているように見えても、カメラの撮影タイミングによっては点滅して映ることがあり、LEDフリッカーの抑制性能も求められるという。
TIER IVでは、こうした撮像デバイスを組み込んだ自動運転向けカメラに加え、LiDARで取得した3次元点群とカメラ映像を重ね合わせる「フュージョン」用キットも展開。車両による自車位置や周囲環境の認識精度向上を図っている。
事業は「モビリティソリューション」「デベロップメントソリューション」「ハードウェア」の3領域に分かれ、自治体などへ自動運転車両を提供し、運行まで支援するケースもあるという。自動車メーカーに対しては、車種ごとのサイズや形状、死角などを考慮した自動運転化の開発支援や、オープンソースをベースとした自動運転ソフトウェアのライセンス提供も行っている。
5 - 10Wで65TOPS。AI半導体スタートアップ「LENZO」
AI・半導体分野では、日本発のスタートアップ「LENZO」を紹介。AI推論処理における消費電力やコストの増大を課題と捉え、独自の「TokenProcessor」を採用した低消費電力AIアクセラレータ「Aシリーズ」を開発している。ソニーのセンサーなどとの連携可能性についても検討しているという。
Aシリーズは、「エッジ・フィジカルAI向け再構成可能データフロー型アクセラレータ」と位置付けられるAI処理向け半導体。INT8で65TOPSのAI演算性能を5 - 10Wという低消費電力で実現し、PCIe Gen3インターフェース、最大64GBのLPDDR4メモリ、Debian系Linux環境を採用する。
独自の「TokenProcessor」では、AI処理の流れを状況に応じて動的に最適化し、処理に不要なデータ移動やメモリアクセス、演算時の無駄を抑えることで効率を高める。VLMやLLMをはじめとするTransformer系AIモデルにも対応し、ロボティクスや産業用画像認識、自律システム、車載・ADAS、ドローンなど、消費電力や放熱に制約のある機器上でのAI推論を想定している。
社内評価では、代表的な処理においてBasic Kernel Processingで最大657倍、k-NN Searchで最大498倍、U-Net Processingで最大150倍、Graph Neural Networksで最大144倍の処理効率を示したとしている。
オンラインだけではない「場所のエンタメ」にも投資
そのほか、Sony Innovation Fundでは、ゲームや音楽、映画などに加えて、LBE(ロケーション・ベース・エンターテインメント)にも注力している。オンラインサービスだけでなく、実際の場所で提供する体験の価値も今後高まると見ており、企業への投資に加え、ソニーの映像・センシング技術などを組み合わせた新たな体験空間の創出も模索しているという。
NHK技研は伸縮・折り畳み可能なマイクロLEDディスプレイを展示
NHK技研/NHK財団のブースでは、「ディフォーマブルディスプレー」を紹介。伸ばしたり、曲げたり、折り畳んだりしても映像表示を継続できることを目指したディスプレイ技術だ。
柔軟なゴム基板上に電子回路や発光素子を配置し、RGBマイクロLEDによってフルカラー表示を行う。ゴム基板を変形させても配線が追従するよう、常温で液体の状態を保つ液体金属を伸縮配線として活用している。
ブースでは、ドーム状に盛り上げたり、腕に巻き付けたり、衣服の胸部に取り付けたりした試作例を紹介。2つ折りや4つ折りにしても表示を継続でき、約50%、例えば10cmから15cm程度まで伸長可能だと説明していた。
伸縮配線にはガリウム合金を使用。ニッケルなどの金属粒子を混合して粘度を調整し、ゴム基板上に任意の回路パターンを印刷できるようにしている。
既存の試作機では、約8,000回の曲げ伸ばしを行った後も断線せず、LEDの駆動を維持できたとされる。NHK技研では以前から研究を継続しており、画素密度や伸縮率の向上、大型化を進めているとのことだった。
想定する用途は、ドーム型や折り畳み型などの自由形状ディスプレイ、衣服に取り付けるウェアラブルディスプレイ、スポーツ・フィットネスウェア、自動車の曲面ディスプレイ、ファッション、ロボティクスなど幅広い。
さらに、ゴム基板と伸縮配線を使う技術は、表示装置以外への応用も考えられるという。LEDの代わりにセンサーを搭載し、例えば圧力センサー付きのグローブ型デバイスなどに活用することも可能性のひとつとして挙げられた。
長期的には、「いつでもどこでも没入感・臨場感のあるコンテンツを楽しめる」表示デバイスの実現を目指して研究を進めている。一方、大面積化すると配線本数が増え、配線設計や取り回しも複雑になるため、さらなる高画素密度化と大面積化が今後の課題とのこと。
現時点では研究試作段階で、具体的な商品化時期は未定。CEATECなどで技術を公開しながら、製品化や応用に関心を持つ企業・パートナーを探しているという。比較的小面積で成立するセンサーグローブのような用途については、大型ディスプレイよりも早期に実用化できる可能性も示唆していた。

























