ソニーのロングセラースピーカー刷新!「CSM2シリーズ」のポイントを開発陣に訊いた【レビューあり】
ソニーより、久しぶりの本格パッシブ・スピーカー「CSM2シリーズ」が発表された。今年6月にアメリカで先行発表され、日本でも9月以降順次発売を予定している。そのサウンドを、ソニーの開発室にていち早く体験する機会を得た。

今回日本市場への投入が発表されたのは、フロア型スピーカーの「SS-CS3M2」(42,000円/ペア・以下税抜・1台での販売)、ブックシェルフ型スピーカーの「SS-CS5M2」(28,000円/ペア)、センタースピーカーの「SS-CS8M2」(16,000円/1台)の3モデル。また将来的にはドルビーアトモス対応のイネーブルドスピーカー「SS-CSEM2」の販売も予告されている。
イネーブルドスピーカーの価格は未発表だが、ドルビーアトモス対応のサラウンドシステムがおおよそ「10万円程度」でが構築できる、ということになりそうだ。まずはこの手頃な価格感が嬉しい。
前機種となる「CSシリーズ」が発表されたのは2014年。時代は“ハイレゾフィーバー”といった様相で、ハイレゾウォークマン「Aシリーズ」が発表されたほか、テレビCMや電車の広告にも「ハイレゾ」の文字が踊った。
日本オーディオ協会はハイレゾロゴマークを策定し、ハイレゾの普及を大きく後押しした。moraがハイレゾのダウンロード販売をスタートさせたのもこの時期である。
そんな時代に開発された「CSシリーズ」もまた、やはり「ハイレゾ音源再生」を大きく意識したものだった。ソフトドームトゥイーターに加え、超高域を担当するスーパートゥイーターを搭載、高域の再生周波数は50kHzまで伸ばされている。
このシリーズは国内のみならずグローバルでロングセラーとなり、10年以上販売を続けてきた。しかし、そこから11年が経過し、やはり市場の要望も変わってきた。それに応えて誕生したのが今回の「M2」モデルとなる。
今回の製品コンセプトは「CINEMA IS COMING HOME」と掲げられており、「映画館のような体験」に重きを置かれた音作りがなされているという。
その背景には、テレビの大型化に加え、Netflixなどの映像配信サービスが広がったことで、「自宅でもいい音で映像コンテンツを楽しみたい」という需要が大きく広がってきたことがある。
ソニーはこれまでサウンドバー製品にも力を入れてきたが、大画面になると「サウンドバーでは物足りない」という声も上がってきたのだという。
そういった市場の声に応えるべく、AVアンプと組み合わせることができる本格パッシブスピーカーをシリーズとしてラインナップすることにしたそうだ。
CSM2シリーズの外観は前モデルに非常に近く、ユニット等も基本的には共通。ブックシェルフ型について言えば、3ウェイ・3ドライバー構成。前モデルと同じポリエステル繊維によるソフトドーム・トゥイーターと小型スーパートゥイーターに、ウーファーはソニー独自のセルラーコーン振動板となっている。
前モデルからの進化点について、音響設計担当の楠氏は「キャビネットの木材の密度を高め、剛性感をより高めたこと」があると説明。
そのことで「声をより明瞭に聴かせることに加えて、音源がスピーカーに張り付かず、より前に出てくるようになりました」と音質面での進化を解説する。
さらに、コンデンサーの絶縁材なども変更、渦電流を低減するための高品位なネットワークパーツなども新たに採用しているという。
もう一つ、開発にあたって重視した点が「長期の音質安定と信頼性」。前モデルが10年を超えてロングセラーとなったことを受け、ダンパー材を変更したほか、トゥイーターに活用される磁性流体も新素材に変更。世界中どこの国でも、長く安定した性能を実現できるパーツを選定しているという。
また環境に配慮した製品開発にも力を入れており、リサイクルプラスチックを利用したグリルを採用するなど、環境負荷低減につながる取り組みも強化している。
耳馴染が良く、サラウンドでのつながり感も良好
実際にソニーの開発室にて音を体験させてもらった。ステレオ再生は、同社のAVアンプ「STR-AN1000」に、サードパーティ製のmconnectアプリを使用してQobuzを再生した。
サマラ・ジョイの「Can't Get Out Of This Mood」は彼女のヴォーカルがセンターにピタッと定まりつつ、バックミュージシャンの演奏が彼女の声をしっかり支えるさまがよく見えてくる。クールでありながら熱量たっぷりなサウンドは耳に楽しい。
次に、映画「スパイダーマン:スパイダーバース」と「ヴェノム」を、5.1.2chシステムで再生。サブウーファーは前シリーズから「SA-CS9」を組み合わせた。
英語のアクセントが明瞭で聴き取りやすいことに加え、特に「ヴェノム」では音の迫力が恐怖心を否応なく掻き立ててくる。スピーカー間の音の繋がりも自然さも印象的で、バイクの疾走も臨場感たっぷりに描き出してくる。
超高域への再生スペックが追求された「ハイレゾフィーバー」の時代を超え、より耳馴染みの良く、長く聴いても疲れにくい音へ。久しぶりに登場した国産スピーカーシリーズ、期待できる仕上がりとなっていそうだ。































