クリプトン、独自スピーカー第3弾「KX-3P」を発売 − ピアノ仕上げの上位機種

（株）クリプトンは、同社独自開発のスピーカー“Vigore”「KX-3」シリーズの新モデルとして、ピアノ塗装を施し、音質を高めた2ウェイ密閉型スピーカー「KX-3P」を10月上旬に発売する。価格は346,500円（ペア・税込）。

同社は2005年に「KX-3」（関連ニュース）、2006年に「KX-3M」と製品を1年おきに発表してきた。今回の「KX-3P」はこれら2モデルの上級機として発売し、KX-3とKX-3Mは販売を継続する。

開発を担当したのは、これまでと同様、日本ビクターで数々の名機を手がけたエンジニア、渡邉勝氏。クリプトンでは、ここ1年ほど、KX-3を業務用モニターとして展開することをねらい、様々なスタジオに搬入してテストを重ねてきた。民生用には販売を行わないが、その成果をまとめた「KX-3PRO」という製品が、実際に数件のスタジオに納入されたのだという。今回のKX-3Pは、KX-3PRO開発で培ったノウハウを活かしながら、民生向けに外観をリッチに仕上げ、音についても「正確だけど音楽がしっかりと楽しめるようチューニングした」（渡邉氏）。同社ではこの開発経緯をふまえ、KX-3Pを“ミュージックモニター”というキャッチコピーで訴求していく。

KX-3とKX-3Pの相違点は大きく2つ。1つは前述の通りピアノ仕上げを行ったことだ。先日、ピアノメーカーのベーゼンドルファーが独自のスピーカーを発表したことが話題となったが、これにも刺激を受けたという。「世間にはピアノ仕上げ“風”のスピーカーは数多いが、KX-3Pでは、本当のピアノ塗装を行っている会社に依頼し、ピアノと全く同じ工程を重ねて丹念に塗装を行っている。いわば本物のピアノ仕上げだ」（渡邉氏）。

エンクロージャーの材質は針葉樹系の高密度18mm厚パーチクルボードで、これにピアノ塗装を施している。「ちょっともったいないようだが、バーズアイメイプルの上にピアノ塗装を行っている」（同）のだという。当然のことながらコストは高く付き、「ふつうにやったらペアで50万円程度になる。これでは受け入れられないので、相当な努力をして、価格を35万円以下に抑えた」（同）。なお、ピアノ塗装を美しく保つため、スピーカーを拭くためのクロスも付属する。

KX-3から進化したもう一つのポイントは、位相の管理を厳格に行うため、ウーファーとトゥイーターのインピーダンスを揃えたこと。KX-3とKX-3Mでは、トゥイーターのインピーダンスは6Ω、ウーファーは4Ωだったが、KX-3Pではトゥイーターを6Ωとした。磁気回路はウーファーと同様、アルニコマグネット壺型内磁方式を採用し、ボイスコイルにはMEXCEL 無酸素銅エッジワイズワイヤーを使用している。

トゥイーターのインピーダンス変更に伴い、ネットワークにも手を入れた。ネットワーク素子には、直径1.2mmの空芯コイル、ケース入りピッチ材で振動を抑えた低損失のメタライズドフィルムコンデンサーなど、低損失かつ歪みを抑えたパーツを採用。ウーファーとトゥイーターへの内部配線材には、モニター製のOFC線を採用している。なお、クロスオーバー周波数も変更され、KX-3では3.5kHzだったところを、KX-3Pでは2.5kHzとしている。

そのほか、ウーファーや内部吸音材などはKX-3と同様。ウーファー部のボイスコイルには、トゥイーターと同様、「MEXCEL無酸素銅（OFC）エッジワイズワイヤー」のロングトラベルボイスコイルを採用し、線積率を高め大きな駆動力と大振幅時の磁気回路外れに対応した、歪みの少ないウーファーに仕上げた。ウーファーのコーン紙には独クルトミューラーのものを採用する。

また内部吸音材には、KX-3から引き続き、ウール100%の低密度フェルトと、同社の吸音材「ミスティックホワイト」をハイブリッド使用している。

なお、細かな変更点として、サランネットも新規開発。トゥイーターの高域特性を損なわないよう工夫しているという。

渡邉氏は今回のKX-3P発売について、「第3弾の製品と言うことで、3度目の正直を期待している。本格的なスピーカーメーカーとしての基盤を作りたい」とコメント。本機に対する並々ならぬ意欲が伺えた。

【問い合わせ先】
（株）クリプトン
コンポーネント＆アクセサリー部
TEL/03-3353-5017

（Phile-web編集部）