公開日 2025/08/27 06:40

Bowers & Wilkins、ヘッドホンで新たな頂へ。新たな挑戦と進化へのこだわりを訊く

VGP2025SUMMER受賞:ディーアンドエムホールディングス 岡田一馬氏
聞き手 編集部:徳田ゆかり
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VGP2025SUMMER 受賞インタビュー:Bowers & Wilkins

 イギリスのハイファイオーディオのブランドBowers & Wilkins。同ブランドが展開するオーディオスピーカーとともに、ヘッドホンのプロダクトが賞賛を集めている。

ノイズキャンセリングヘッドホンPx7 S3は、アワードVGP2025 SUMMERにおいてヘッドホン大賞を受賞した。

日本の二大ブランドDENONMARANTZとともに、Bowers & Wilkinsを国内で展開するディーアンドエムホールディングスの岡田一馬氏が、同ブランドのものづくり、そしてヘッドホン事業の展開について意気込みを語った。

株式会社ディーアンドエムホールディングス
アジアパシフィック コマーシャル・オペレーションズ ヴァイスプレジデント
岡田一馬氏 

Bowers & Wilkinsがこだわる、進化を具現化する商品開発

 ―― アワードVGP2025 SUMMERにおいて、BOWERS & WILKINSのPx7 S3がヘッドホン大賞を受賞されました。誠におめでとうございます。まずは製品のプロフィールについてお伺いして参ります。

 

BOWERS & WILKINSPx7 S3

岡田 栄誉ある賞を頂戴しまして誠にありがとうございます。活気あるヘッドホン市場での製品展開の大きな追い風となります。

Px7 S3は、振り返りますと2010年発売の初代モデル、高音質とラグジュアリーなデザインで話題を博したP5に端を発します。

軽量のオンイヤー型P3、オーバーイヤータイプのP7P5のアップデートモデルであるP5 Series2、初のワイヤレス対応モデルP5 Wireless、ブランド50周年のP9 Signatureののち、2017年の初のノイズキャンセリングモデルPXを展開。

2019年のPxシリーズで枝葉を広げ、2021年の初の完全ワイヤレスPiシリーズを提案しました。そして、2023年に刷新されたPxシリーズのPx7 S2eの後継機にあたるのがPx7 S3です。

Px7 S3の最大の進化は、なんと言っても音質です。ただBowers & Wilkinsでは、どんなことが進化をもたらしたか多くを語りません。

設計者はスピーカーも含めて、何をどうしたかという手段よりも、こういう音を目指したという目的を主眼にしているのですね。

そして我々自身もPx7 S3の音を体験して、圧倒的な進化を実感しています。ノイズキャンセリングや接続性も進化し、コーデックの最新規格にも対応して、すばらしい内容になっていますね。 

―― Bowers & Wilkinsの製品を御社で試聴されるときは、どんな環境でチェックするのですか。

岡田 我々は特別なことをせず、好きなように聴きます。普段使っているスマートフォンにつないで音楽を再生するのです。

一部の方は専用のデジタルオーディオプレーヤーをお使いですが、お客様の大半はこのようにお使いになっていますから。

我々も同じような環境で体感し、訴求ポイントを発信していきます。そして他社の製品や、自社で展開するいろいろなモデルとも比較して、違いを実感しますね。

―― Bowers & Wilkinsのヘッドホンのものづくりは、どのように行われているのでしょうか。

岡田 Bowers & Wilkinsは、すべてのプロダクトにおいてオーディオパフォーマンスファーストの考え方で、デザインや構造はそれに合わせていくのです。

何か良い部品を使ったとしても、それひとつが要因になっているのでなく、それによって変わった他の多くの要素も含め、あらゆるものが相乗効果をもたらす。

さまざまな手段を試して、今市場にあるものよりもさらに良いものとするところを目指しているということですね。我々が外から見ただけではわからない、細かい改良を積み重ねています。

―― Bowers & Wilkinsではスピーカーの開発に時間がかかるとお聞きしましたが、ヘッドホンについても同様でしょうか。

岡田 ヘッドホンの開発日数はスピーカーよりは短いですが、それでも要する時間は長いと思いますね。

ただモデルチェンジのサイクルは以前23年ごとでしたが、最近は1年半から2年ごとになってきました。

いずれにしても音質は妥協しないというポリシーは変わりなく、新製品が出るたびにこれ以上のことはできないだろうと思いますが、それでも次々に進化していくのに驚かされますね。 

洗練されたデザインと質感を誇るPx7 S3。キャンバス・ホワイト、アンスラサイト・ブラック、インディゴ・ブルーの、絶妙な色合いの3パターンを展開

Bowers & Wilkinsブランドの認知向上、広がるお客様層

―― Px7 S3のお客様のご評判、手応えはいかがですか。

岡田 Bowers & Wilkinsといえばハイエンドオーディオファンにとってお馴染みのブランドですが、それ以外の方々にアプローチするのは難しかった。けれど徐々に様相が変わり、日本でもおかげ様で好評を博して、お客様層が確実に広がりました。

販路を拡げたり、ファッション系といったこれまでとは違う層に訴求する展示をしたり、デビッド・ベッカム氏をブランドアンバサダーに起用したりといった取り組みが功を奏し、ブランドの存在感が高まりました。

このカテゴリーには、認知度の高いブランドや商品がいくつもありますが、そういう商品を買われた方が、昨今ではBowers & Wilkinsの商品を次の買い替えの選択肢に入れてくださっていると見ています。

さらに認知度が高まれば、Bowers & Wilkinsもファーストチョイスの対象になってくると思います。

―― ヘッドホンを選択される時点でお客様の問題意識は高く、その世界を深く知るうちおのずとBowers & Wilkinsに出会うということですね。お客様に対して、どのような接点活動をされていますか。

岡田 影響力が高いのはオンラインです。そして新たにBowers & Wilkinsを知っていただける場として、百貨店などでもBowers & Wilkins製品を展開していますが、量販店さんの店頭の力もやはり大きいですね。

ブランドブースを構え、いつでも商品を体感できる状態に整えてしっかりと世界観をアピールします。

また販売店さん主催のヘッドホンイベントも強い影響力をもっていますが、そこに来られる方々はすでにBowers & Wilkinsを知っている状態です。

そういう中でもBowers & Wilkinsに対する評価が高まっていて、さまざまなお客様に対して伸び代があると思っています。 

岡田一馬氏(左)と、国内営業本部 営業企画室 カテゴリーマネージャーの高藤正弘氏(右)

高価格帯が成長、伸び続けるヘッドホン市場 

―― 昨今のヘッドホン市場についてお伺いします。国内はどんな状況でしょうか。

 岡田 国内では、ワイヤレスのオーバーヘッドホンが安定して成長しています。特に高価格帯が伸びていて、我々にとっても非常にいい状況ですね。

お客様も多様化していて、3万円以上の価格帯が一般的になり、5万円台でも抵抗感なく受け入れていただけます。ファッション感覚でヘッドホンを身につける若い方々も増えていますね。

海外は、私の担当するアジアですと国によって人気の価格帯は違いますが、基本的にヘッドホンのカテゴリーは世界中ほとんどの国で市場が成長しています。

そして高価格帯の市場が伸びている国では、Bowers & Wilkinsの製品が日本以上に売れていますし、さらに伸びると見ています。

―― ディーアンドエムホールディングスにとって、ヘッドホンのカテゴリーはどのような位置付けにあるのでしょうか。

岡田 当社にとって重要なカテゴリーです。成長領域として、コンポーネントとならぶ新たな柱の一つとなりつつありますし、そこに多くのリソースも割いています。

DENONブランドでもヘッドホンを展開していますが、以前にはなかなかうまく進められなかったこともあります。しかしBowers & Wilkinsによって状況が変わりました。

それだけ魅力的な商品群がありましたし、社内の体制も変化しました。そして今はDENONブランドとBowers & Wilkinsブランドは、それぞれ違った考え方で展開しています。

―― ヘッドホンを入り口としてBowers & Wilkinsが認知されたあと、コンポーネントオーディオにお客様を誘導する方策はありますか。

岡田 今はその解を求めて、ひたすら議論しているところです。ゆくゆくは若い方々にハイファイのスピーカーを知ってほしいですが、Bowers & Wilkinsに関しては、ヘッドホンからハイファイへの商品群のつながりがまだスムーズではないのかもしれません。なんらかの方策で補えればと考えます。

――先日、ハーマンインターナショナルが、御社を擁するSoundUnitedグループをMasimoから買収して傘下にするとの発表がありました。現状、どのような状態にあるのかお聞かせいただけないでしょうか。

岡田 発表があったとおりに動いてはいますが、まだそのプロセスの中途段階にあり、我々としては現時点で従来と変わらない活動を行っています。

これから先どうなるか、具体はまだわかりませんが、どういう状況にあっても我々は最善を尽くして、オーディオの展開を進めて参ります。

――今後も御社のご活動に期待して参りたいと思います。有難うございました。

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