公開日 2017/10/24 11:00

『真・女神転生』25周年記念作に参加したゲーム作曲家たちは25年前なにを聴いていたの?

今と昔、ゲームの音楽はどう変わった?
編集部:押野 由宇
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坂本:ゲームが出来たら、音楽も勝手に出来上がっていると思っている人もいる。だからこの仕事に対して親は当然反対、どころか無関心でしたね。「息子がまた何か言ってるな」くらい(笑)。どんな方が音楽を作っているとか分からなくて、ずっともやもやしてました。

目黒:僕もMMLはやっていました。83年くらいに中学の後輩が買った、歴代のナムコのゲームの音符が載っている分厚い本を回し読みさせてもらって、MMLで打ち込んだりして。『マッピー』とか、曲だけではなくてコイン投入音が音符になっていて、それ通りに打ち込むと同じ音が鳴ってびっくりしました。『ディグダグ』なんかも、「コイン投入音出た!」って(笑)。曲はMMLで3音打てば、だいたい似たようなものになると想像出来たんですけど、SEを音階でやってるんだということには驚きました。

マッピーのゲーム画面(画像はWii U版)

柴田:音を聴いても、なかなか聴き取れないんですよね。

目黒:ゲーム音楽を意識した作品は、さっきの『マッピー』が凄く良く出来ているなと。今回のお話をいただいたときに色々調べていたら、『マッピー』はゲーム音楽の礎を作った大野木(大野木 宜幸)さんが作曲されていて、「そうなんだ、俺の耳は間違えてなかった!」と(笑)。『ラリーX』とかも大野木さんが作られたんですよね。今はゲーム音楽を作ってないとWikiに載ってました。

坂本:『マッピー』は音色も良かったですね。カリカリしていて、「どうやってるんだろう?」と思った記憶があります。重鎮の方々は、50歳過ぎとか60歳くらい。ゲーム音楽家って、まだ定年を迎えた人がいないんですよね。なので、僕らどうなるんだろうというのは不安。定年後、どうしたらいいのか?

目黒:60歳を迎えたら、2次雇用みたいなものを考えないと。

小塚:うーん、その頃は定年が70歳くらいになっていそうですけど。

坂本:寿命が伸びてますからね。あと40年何をすればいいんだろう、漠然と不安がありますね。

―― まだ先人の年齢もそこまで到達していないということは、短い年月の間に凄く発展を遂げている、ということでもあるんですよね。

坂本:3音しか鳴らせなかったものが、今はなんでも鳴らせます。5.1サラウンドになって、VRが出てきて、その都度課題を叩きつけられています。

―― 柴田さんはゲーム音楽を意識したタイトルなどはありますか?

柴田:ゲーム音楽って、一番繰り返し聴くんですよね。うちは兄弟がいて、姉は洋楽好きで、兄はロックが好き。クラシックを聴くのも自然という家系だったので、当時はレコードで色んなものを聴いていたんですけど、ゲーム音楽はわざわざ盤を用意して聴きにいかなくても、勝手に覚えているというか。

―― プレイしている間リピートされるから、頭に残りますよね。

柴田:クリアできないと悔しくて、熱中してずっとやっているものですから、全部耳に入ってくるんですよ。やっぱり当時流行ったのは『スーパーマリオ』だったり、坂本さんが仰っていた『ドラクエ』だったり、何回もやっていて完全に暗譜しちゃって、それがもうゲーム音楽として体に刷り込まれていきましたね。

ゲーム音楽は一番繰り返し聴くから、自然と覚えられると体験を語る柴田氏

坂本:ゲームの途中で、そのままご飯食べたり。コントローラーを握っていないときも、相当聴きますよね。

柴田:一番ゲームを遊んでいた時代の作品は耳に残るというか、ハードの制約もあって、リズムとベースの部分とメロディは凄くシンプルで分かりやすい音楽に仕上がったと思うんです。当時の音楽は“歌える”感じのメロディでしたね。

―― シンプルだからこそ覚えやすい。

柴田:そのなかでも工夫していて、『スーパーマリオ』だとラテンの要素が入っていたり、『スペランカー』なんかよく聴くとファンクなんですよね。「こういうことがやりたいんだろうな」というのが、物凄く伝わってきます。

―― 年齢的に遊んだハードも変わってくるであろう、小塚さんは?

小塚:僕がスーパーファミコンを買った時は、こういう人は多かったと思いますけど『スーパーマリオワールド』と『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』の2本を一緒に買ったんです。最初は『ゼルダ』も音楽が良いとハッキリ意識してはいなかったですが、プレイしてゾワゾワくる感覚を無意識に感じていて。当時はポップスだったり普通に流行ったものを聴いたりしていたのですが、インストの音楽がそうやって“刺さって”きたのはそのときが初めてだったと思います。

―― 確かに、ゲーム音楽で初めてインストを意識した、という人も多いと思います。

小塚:その頃は例えばストリングスの音なども短いサンプルで流しているので、空気感はまったくない状態で直に来る感じがあったんですが、だからこそメロディが分かりやすく入ってきていたのかな、と最近思いますね。

―― お話をおうかがいするなかで、ハードの進化によって、音楽の作り方も進化、もしくは変化したのか、といった部分が気になったのですが、いかがでしょうか?

目黒:僕は入社した頃は内蔵音源だったので、もっと内蔵音源を駆使して、ゲームのプレイに対してインタラクティブに曲が変わっていく、そういう方向性がもっと進化していくのかと思っていたし、そういうことを色々トライしていた時期もあったんです。でも割とそうではなく、ストリングスをガンガン何本も鳴らせてとか、クロスフェードで曲を変えてとか、僕が15年や20年くらい前に思っていたのとはまた違う進化をしているのかな、と思いましたね。

―― よりハードに寄り添った進化になったんでしょうか。インタラクティブな方向性とは、例えばどういった?

目黒:人の文字を読むスピードでボタン送りのタイミングも違うので、イベントシーンの後半の盛り上がりに到達するまでの時間も人によって変わります。本当はそこに曲の盛り上がった部分を当てたいので、Aメロを2小節ごとにフラグを置いてループさせて、シナリオが盛り上がるタイミングで小節終わりのフラグを待って、Bメロに数パターンの飛び先を用意したり、そういった細かいところを頑張って、『真・女神転生III-NOCTURNE』のときなんかは良い感じに出来たんです。でも、凄い苦労をした割には、費用対効果と言うか、余りに割に合わなかった(笑)。ですので、もしそういう方向で世の中が進化していったら、僕はちょっと厳しかったです。

―― 他の皆さんも頷いていらっしゃいますね。

坂本:やはりゲームなので、インタクティブな表現をしようと発想するんですよ。そう考えたときにBGMだけではなくて、効果音とか色んな物を連携してやっていく必要がある。ファミコンとかは3音しか出ないので、メロディとベースを残して、真ん中の和音をやっているところで効果音を出して曲が止まらないようにするといった工夫がありました。けれど、いまは色んなことが出来てしまうぶん、常にそこで作家として作曲をしている自分との戦いになります。曲として良いものを残したいけれど、ゲームをやっている人の没入感を高めたいときに、曲を破壊するようなこともしなければいけないのです。そこをどう自分のなかで折り合いをつけていくか、多分皆さんが悩まれているんじゃないのかなと思います。

―― ゲームの音楽を作る皆さんに共通する悩みということですね。

坂本:僕のポリシーはゲームのなかに乗せても面白く遊べるし、曲だけ取り出しても聴ける良い曲だというのを、20年間ずっとやっています。ゲームはゲームを遊ぶ人用のものだからBGMは一歩ひいて、ということは一度も考えたことがないですね。だから、余計折り合いをつけるのが大変でした。

―― 逆に生まれたメロディが凄く良いから、それに合わせてゲームの方を調整してもらう、といったことは無いのでしょうか?

坂本:そこまでは主張しないですね。そのあたりは、ゲームをディレクションする人が決めることです。

柴田:あるスマホゲームで、うちの作家が作ってくれた凄く良い曲があったんですが、その曲はサビが特に良いんです。でも、サビの部分は盛り上がってしまってシーンに合わないからカットすると言われて。入れてしまうとユーザーが違和感を持つので、どんなにそこが良くても、苦渋の決断をしなければいけないというのはありますよね。

小塚:ゲームをプレイしていてやかましく感じてしまうと、凄い良い曲なのに、良い曲とは認識してもらえないですよね。

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