公開日 2017/07/05 10:30

日本に「音声操作」は根付くか? 多くの音声認識デバイスを開発、Cerevo 岩佐氏に聞く未来像

<山本敦のAV進化論 第137回>
Cerevo(セレボ)は日本のハードウェアスタートアップとして数々の画期的な製品を生み出している。今年も音声認識技術を搭載する「Lumigent(ルミジェント)」と「1/8 タチコマ」という2つのユニークを発売予定だ。そんなCerevoの代表取締役CEOである岩佐琢磨氏に、同社が開発するスマート家電に搭載される音声インターフェースの特徴を聞いた。

Cerevoの代表取締役CEO、岩佐琢磨氏

「技術ありき」でアイデアを生み出し開発に取り組む

Cerevoでは「グローバルニッチであること」をモノづくりの基本姿勢に掲げ、様々な家電機器とスマホやインターネットをつなぐ可能性を形にしてきた。スマホと連携しスノボの滑走テクニックを可視化する「XON SNOW-1」やIoTロードバイク「XON ORBITREC」もガジェットファンを刺激してきた代表例だ。

「XON SNOW-1」

「各製品の販売ボリュームが100個ずつだとしても、100ヶ国で売ることができたら10,000台。そういうアイテムを100種類作れば1,000,000台の売上になります」。岩佐氏はこれまで様々な場面で持論を説いてきた。話題の技術に鋭くアンテナを張りめぐらせ、自社の製品に素早く柔軟に取り込んでユニークな製品を発表。筆者はその開発スピードの速さと安定感に驚かされてきた。

同社はひとつの製品にかける開発期間を平均10ヶ月、長いものでも1年前後に定めているという。岩佐氏は「少し荒削りだとしても商品をマーケットに出し、お客様の反応にしっかりと耳を傾けながら次のバージョンを出していくスピード感が大事」と強調する。ユーザーコミュニティとの関係を密にしていくことで正確なニーズを捉え、人々が“欲しい”製品にたどり着けるのだという。

だが筆者はこれまで、Cerevo製品がけっして荒削りとは感じなかった。むしろほかのスタートアップが開発した製品に比べ、作り込みの精度が高く安定しているように思う。「もともと大手メーカーに在籍し、開発や品質管理の合格基準をよく知っているスタッフが多くいるからかもしれません」と岩佐氏は答える。日本の大手メーカーでは、モノづくりの合格点を「120点」まで高く定め、開発途中段階から出荷直前の品質チェックまで細かくチェックする。

「大手以外の国内メーカーも100点満点をゴールに定めていると思いますが、実際はそのハードルですら相当高いものです。従業員100名規模のスタートアップが同じことをやろうとすれば、商品が出せなくなってしまったり、商品の価格に跳ね返ってしまう。メーカーでのモノづくりの経験があり、実際の合格基準が75-80点ぐらいにあると知っていることは、とても大事だと考えます。そのボーダーラインが見えていればスタートアップとして攻めの姿勢が取れるからです」(岩佐氏)。

Cerevoでは「技術ありき」の構えから商品のアイデアを起こしており、面白そうな技術が世に現れたり、その技術を実装可能にするチップの価格変動にいつも目を光らせている。岩佐氏によれば、Cerevoが考えるモノづくりのスタンスはパティシエに似ているという。「流行の食材、仕入れ値の変化を鋭く察知しながら、うまく組み合わせて美味しいスイーツに調理していく手腕が見せどころ」とう点が共通しているのだとか。

次ページCerevoが展開する音声認識技術を搭載した製品

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