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USoundのMEMSドライバーを活用

MEMSドライバーがイヤホンに「健康管理機能」をもたらす!? 最新提案をチェック!

公開日 2025/12/02 06:30 佐々木喜洋
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Usound社のGeneral ManagerのFabio Santagata氏(左)とSales ManagerのIsabella Dominick氏(右)にMEMSドライバーの最新動向を聞いた

TWSの新機能、健康測定機能に注目

最近はTWS(True Wireless Stereo=完全ワイヤレスイヤホン)市場も飽和し、付加機能の競争になっている。その中でも注目されている機能の一つは血圧や呼吸数を測るような健康測定機能である。

TWSは装着時間が長く、ジョギングなど健康状態が気になるシーンで使うことも多い。その点で機能としての親和性は高いとは言え、もともとTWSは音楽を聴くためのものであり、そうした健康機能を可能にするためには別に追加ハードウェアのセンサーが必要となる。そのため必然的に大型化し、高価格化してしまう。

しかしそれが追加のハードウェア不要で、ファームウェアのアップデートだけで済むとしたらどうだろうか?

MEMSドライバーならばそれが可能だ。

ソフトウェアのアップデートのみで対応可能

先日、MEMSドライバーの供給元の一つであるUSound社の代理店からTWSに関する新しいニュースがあるという話を聞き、取材に赴いた。

TWSにおけるMEMSスピーカー技術の利用はxMEMS社の「Cowell」採用モデルが先行していたが、先日USound社もMEMSスピーカーとダイナミックドライバーの一体型である「Greip」ユニットが中国QCY「MeloBuds N70」に採用されたことで市場に本格参入を果たした。

USound社のMEMSユニットが搭載されている完全ワイヤレスイヤホン QCY「MeloBuds N70」

今回の内容を聞くと健康関連ということなので、当初は流行りの健康測定センサーをMEMS技術で実現したのだろうと考えていた。

ところが来日したUSound社の担当者が説明するところによれば、なんと健康測定機能をいっさいのハードウェア変更なしで内部ソフトソフトウェアを書き換えるだけで実現できるというのだ。これは前述した「Greip」を用いたTWSならば可能だという。

具体的にはMEMSドライバーから発した音をANC用のマイクで拾い、それをAuriSenseと呼ばれる生体モニタリングのアルゴリズムで測定するというものだ。これにより騒音下で、かつ運動中にも測定が可能となる。しかも音楽再生中にも可能で、音質低下はないという。

Fabio氏によるUsound社MEMSスピーカーの説明

また、このアルゴリズムを応用して、装着検知センサーにも応用ができる。通常の装着センサーは手に持つことで誤作動を起こしてしまいがちだが、AuriSenseでは生体モニタリングと合わせることで耳に装着している時のみ装着していると判定することが可能だ。これは耳の音響インピーダンスを測定しているということだ。

これはMEMSスピーカーが40kHz以上の高い周波数を楽に出すことができ、超音波領域を用いることで可能となるという。音の波は高い周波数ほど直進性と密度が高く、精度が上がるからだと考えられる。

Isabella氏がデモで測定しているところ

精度の高い装着検知と心拍数の測定

実際に筆者が試してみたところ、音楽の再生のありなしに関わらず最高で99.6%の一致度を得た。つまりほとんどFDA承認の測定器具と同じくらいということだ。

次に装着の判定も試してみた。こちらはまだそれなりの確からしさという感じであったが、耳に挿入した時だけの装着検知ができることは確認できた。なお、この機能は片耳装着にも対応している。

測定機材、手前に測定バンドと測定イヤホンが置いてある

FDA公認の心拍数測定バンド

現在は心拍数と装着検知だけだが、将来的には血圧、血中酸素濃度、脈拍の波形、呼吸パターンの異常検知、自律神経の監視、血管機能の監視、心臓活動の監視、そしてストレスの監視なども可能となるということだ。

筆者の測定結果、左下に合致率が表示されている

手持ちのイヤホンがファームウェアのアップデートだけで自分の健康管理が可能になるのはちょっと信じがたいが、筆者が試しに購入したばかりの手持ちの「MeloBuds N70」でもOTAアップデートだけで可能だという。ただしQCYの戦略があるので実現はN70でOTAアップデートで可能となるのか、新モデルとしてN75などになるのかは分からないということだ。

おそらく来年には実用化が可能となると思うが、期待の新技術と言えるだろう。

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