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愛知の映画館「シネマワールド ららぽーと安城」に日本初導入

日本初の「360°極上音響」を体験。「JBLプレミアムシアター」はIMAXやドルビーと何が違う?

公開日 2025/07/03 12:01 編集部:小野佳希
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JBLの最高峰スピーカーのみで構成され、「360°極上音響」を謳う「JBL Premium Theater(プレミアムシアター)」が、愛知県安城市の映画館「シネマワールド ららぽーと安城」にて展開されている。同システムの特徴について関係者に話を訊くとともに、編集部記者が実際に体験してきた。

JBLプレミアムシアターが展開されているシネマワールドららぽーと安城を取材。同劇場を運営するコロナワールドららぽーと安城店 総支配人の春馬庄蔵氏(左)とシネマ事業部次長の松野淳敦氏(右)

日本初(世界初?)のシステムを導入した映画館が愛知・安城に

JBLプレミアムシアターでは、JBLの業務用ブランドである “JBL PRO” の最上位スピーカーのみでスピーカーを構成。さらに、世界各国の映画館や設備、ミュージシャンのライブツアー向けにサウンドシステムの設計やミキシングを手掛けてきた経験を持つサウンド・エンジニアで、JBLのシネマソリューションプロダクトマネージャーを務めるサニール・カランジカル氏も監修に加わっている。

JBLプレミアムシアターが日本国内の映画館に導入されるのはシネマワールドららぽーと安城が初めて、かつ、現在のところ唯一のケースだ。

「実は『JBLプレミアムシアター』と銘打つのは今回が初めて。海外から直輸入されるような形で日本でもJBLのシステムを導入した劇場に『スカルプト サウンドシステム』と名付けて展開していたりもしたのですが、一般の方々にはなかなか伝わりづらかったかなと…。そこで、ちゃんとJBLが監修したものをやろうということで、この名称での展開をスタートさせました」(JBLブランドを展開するハーマンインターナショナルの濱田直樹氏)

ハーマンインターナショナル Lifestyle Audio - Consumer マーケティング部 シニアマネージャーの濱田氏

「そういった背景なので、もしかすると日本初どころか世界初と言えるのかもしれないのですが、本当に世界初なのか確認しきれなかったので念のため “日本初” で銘打っています。“世界初” を謳おうか迷いましたが(笑)」(シネマワールドの運営会社・コロナワールドの松野淳氏)

コロナワールドららぽーと安城 松野氏

また、上述のとおり、JBLプレミアムシアターではJBL PROの最上位スピーカーを採用しているだけでなく、JBLのトップエンジニアの監修も入っている。「そういった監修が入るのは大きなスタジアムをつくるなどといった場合が多く、スクリーンひとつで監修が入るのはかなり珍しいケース」(ハーマンインターナショナル 濱田氏)だという。

JBLの最上位スピーカーを35基使用。サブウーファーだけでも8基

同システムが導入されているのは、同劇場の5番スクリーン。「スクリーンサイズではIMAXシアターのほうが大きいのですが、座席数でいうとJBLプレミアムシアターが最も多く(282席)、シネマワールドららぽーと安城のメインスクリーンになります」(松野氏)とのこと。なお、構成や機種はそれぞれ異なるものの、それ以外のスクリーンもすべてJBLのスピーカーが導入されている。

JBLプレミアムシアターの大きな特徴が、音の定位の正確さと音場の広さ。シネマワールドの松野氏は「ベースマネジメントというシステムを用いることで、どこの席に座っても最良の音を体験していただけます。これをもって我々は『360°極上音響』だと謳っていまして、端のほうの座席でも満足感は半端じゃないですよ」と自信を見せる。

JBLプレミアムシアターには、合計27基のスピーカーを設置。スクリーン裏に4ウェイ・大型シネマスピーカー「JBL5742」を3台(L/R/センターチャンネル)と、18インチウーファーをダブルで搭載するサブウーファー「JBL 5628」を4台置き、サラウンドスピーカーには「JBL9350」4台と「JBL9320」12台を使用。さらに、18インチシングルウーファーのサブウーファー「JBL ASB6118」4台といった構成だ。

スクリーン裏に設置された18インチダブルユニット搭載のサブウーファー「JBL 5628」。普段は見られないが今回は特別に見せてもらった

ちなみに、補助サブウーファーをサラウンドスピーカーより上に吊るという設置手法もユニークで興味深い。こうしたスピーカー群を、こちらもハーマンインターナショナルが取り扱うブランドであるCrownのアンプ7台(「DCi4 1250N」5台/「DCi8 300N」「DCi4 300N」各1台ずつ)で駆動している。

最上部にある、正方形に近い形の物体がサブウーファー。サラウンドスピーカーよりも高い位置に設置されている

サブウーファーだけで最大8台を使用するというと重低音の凄さが一番にイメージされがちだが、重低音をことさらに強調するというよりは「心地よい音が特徴」(松野氏)だとのこと。「IMAXは重低音を含めた力強い音響が特徴かなと思いますが、それに対してJBLプレミアムシアターは心地よく聴こえる音響だなというのが個人的な印象です」という。

JBL PROの最上位モデルを導入

実際に体験した編集部記者も同じ印象を受けた。音の定位も正確で、「どこで、どんな音が鳴っているのか」という劇中の細かな音をちゃんと認識できる。ネタバレを避けるため大雑把な言い方になってしまうが、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では特に水中のシーンなどに、その音の魅力を堪能できた。

どんな作品にも対応可能。チケット代も追加料金ナシ

なお、JBLプレミアムシアターは、ドルビーアトモスのようなオブジェクトベースの音を採用した作品向けのシステムではなく、いわゆる立体音響へ対応するためのものではない。「360°極上音響」というアピールは「劇場のどこでも極上の音響を体験できる」という意味だ。

立体音響用システムでないということは、一般的なスクリーン用の作品があればいいということ。つまり、どんな作品でもJBLプレミアムシアターの音響で上映できるという利点があるわけだ。また、3D上映や4DX上映、IMAX上映のような追加料金もシネマワールドでは設定されていない。

映写室も見学させてもらうことができた

観客からの反応も上々だとのことで、「推し活をされているアイドルファンの方からはコンサートのライブビューイングをJBLプレミアムシアターでやってほしいというリクエストをいただいたりもしますね。お客様の反応を知りたくて、私もXでいろいろ検索していたりもします(笑)」と松野氏は語る。

松野氏はまた、「正式オープン前にテスト映像として、とある音楽モノの映画での歌唱シーンを観たのですが、それが本当に素晴らしかったんです。音楽モノはJBLプレミアムシアターとの相性が特にいいと感じています」とコメント。「ジェット戦闘機が飛び回るシーンがあるようなハリウッド大作なんかも相性がよさそうな気がしていまして、そういった昔の作品のJBLプレミアムシアターでのリバイバル上映というのも面白いかもしれないなと思っています」と語る。

シネマワールド社内でもJBLプレミアムシアターは好評だとのことで、導入スクリーンの拡大に向けて松野氏も意欲を見せる。日本各地に11ヶ所の映画館を展開する同社での導入が進めば、さらに他社の劇場に広がることもあるかもしれない。今後の動向にも注目だ。

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