真面目に検証してみた

耳の快感「ASMR」、イヤホンとヘッドホンはどっちが気持ちいい?

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編集部:押野 由宇
2020年03月14日
バイノーラル/ASMR作品が聞きたい。それも、音が脳をダイレクトに揺さぶるくらい最高の環境で聞きたい。

そのためにはイヤホンを使うべきか、それともヘッドホンを使うべきか。それが問題だ。

バイノーラル音源が世に出回ってから、多くの賢人が議論してきたこの問いを、真面目に検証していきたい。


公開処刑、ダメ絶対

バイノーラル音源とは、人の頭のかたちをしたダミーヘッドマイクなどを用いることで、人の聞こえ方を再現できるという「バイノーラル録音」を用いた音源のこと。マイクの周りを歩きながら声を出して録音すれば、聞く人の頭の周りを声がぐるぐる動く音源になるという寸法だ。ボイスドラマに用いられることも増えており、そうした作品は臨場感がとても高い。

両耳の部分がマイクになったダミーヘッドマイク

ASMRは、人が視覚や聴覚から得る脳が心地よい、ゾワゾワするといった感覚のことで、YouTubeなどに多数のASMR動画が投稿されている。普通のマイクで収録されているものもあるが、「髪を切られている音」など、バイノーラル録音されているものも多い。

まずイヤホンかヘッドホンか、という選択の前に、周りを気にせずに堪能したい、という点で音漏れは許されない。イヤホンでいうならアップル「AirPods」のようなものや、ヘッドホンでいう開放型(オープンエアー型)は、公開処刑の可能性を秘めているから選択肢から排除する。

つまり、耳の奥まで突き刺して鼓膜近くで音を鳴らすカナル型イヤホン、もしくは大きなドライバーで低音などもリアルに再現してくれそうな密閉型ヘッドホン。このどちらかだ。

カナル型イヤホン(例:final「E500」)

密閉型ヘッドホン(例:ソニー「MDR-M1ST」)

また、バイノーラルイヤホンやサラウンドヘッドホンのように、立体音響サウンドを聞かせることを前提とした製品もあるが、バイノーラル作品やASMRなどでダミーヘッドマイクを使った音源は、たいてい2ch(ステレオ)再生でもっともよく聞こえるように調整されている。ここは素直にノーマルタイプのイヤホン、ヘッドホンを選びたい。

そして、本記事は製品の値段を考慮に入れていない。高級モデルに再現性が優れたモデルが多いのは事実だが、数千円からの低価格帯モデルにも高品質なものはたくさんあるし、それで十分に楽しめる。お財布の許す範囲で買えるイヤホンかヘッドホンを選び、それに満足できなくなったら、さらなる高みを目指していこう。

音から考える

早速、音の面ではイヤホンかヘッドホンのどちらが向いているのかを試していく。試聴音源には『猫カフェ店員と過ごす、な〜んにもしない時間』を選んだ。CV.門脇舞以による甘く、優しい脳溶けボイスを聞きながらゆるふわな時間が過ごせるだけでなく、耳かきまでしてもらえるというASMR要素も付与されているヤバさ、それにも関わらずなぜか無料で提供されているという神の気まぐれのような作品だ。

『猫カフェ店員と過ごす、な〜んにもしない時間』

そのほか、同じくDLsiteで0円提供されている『メイドと暮らそ♪くるみちゃんと一緒』(CV.阿澄佳奈)や『幼馴染とドキドキ押し入れナイト!?in修学旅行』(CV.加藤英美里)、そして「えっちなイヤホン」の存在を確かめた際にも使用したバイノーラル百合ドラマ『ユウヤケホタル』などを用いて総合的に判断していきたい。

『ユウヤケホタル』

まずはボイスから。早速だが、これは正直難しい。「声を聞きたい」という要望ならイヤホンの方が上だろう。音がとにかくハッキリして、一語一句が明瞭だ。細部まで聞き込むことができるし、ダミーヘッドマイクの周りを声が移動する様子などもバッチリ分かる。

対してヘッドホンは、まるで何も着けていないかのように、普通に空間から音が聞こえてくるようで、音漏れしていないか不安になるほどだ。漏れていないことを確認した上で集中しだすと、現実的な距離感で声が聞こえてくることに気づく。つまり、リアルさにおいてイヤホンより上を行く印象だ。どこを重視するかにもよるが、吐息などを直接的に感じたいならイヤホン、より実物の存在感を感じ取りたいならヘッドホン、という戦いになった。

SEについてだが、これはヘッドホンの方が良い。イヤホンでは「遠くで鳴っている音」が “耳元” より近い “耳中” で再生される、その不自然さが没入の妨げとなってしまった。聞こえすぎてしまうのだ。もう少しぼんやりと聞こえた方が、全体的な調和が取れる。

そして、マイクをゴリゴリこすったり、咀嚼音などを聞かせるASMRについては、特有の “ゾワゾワ感” がヘッドホンだと多少マイルドになる。とはいえイヤホンはイヤホンで、氷を首筋にピトリとつけられる感覚に似ていて、ゾワッとしすぎる感じもする。初心者はヘッドホン、より刺激を求めるならイヤホンを使うのがいいように思う。

だが「耳かきされる」など、耳の中で音が鳴ることが自然なシーンでは、これはもうイヤホンしかない。耳元でワシャワシャされるイメージのヘッドホンと、音だけでも耳かきされているという疑似体験が可能なイヤホンでは、リアルさがダンチだ。ASMR分野においては、トータルでイヤホンが上と言っていいだろう。

ちなみに作品別で分けると、先述の耳かきがある『猫カフェ店員』と2人の声の聞き分けも楽しみたい『ユウヤケホタル』はイヤホン、ドライヤーで頭を乾かしてもらえる『メイドと暮らそ♪くるみちゃんと一緒』と狭い密室空間でのつかず離れずを堪能したい『幼馴染とドキドキ押し入れナイト!?in修学旅行』はヘッドホンが向いているように感じた。

使い勝手から考える

別の問題として、作品を聞くときのポジショニングがある。常に居住まいを正して聞くわけではなく、ダラダラ寝転びながら聞きたいときもある。そうなると、ヘッドホンはきつい。ヘッドバンドの位置をズラせば着けることはできるが、最適な着け方ではないため長時間だとストレスがたまる。この点ではイヤホンに軍配が上がるだろう。

また、有線接続かワイヤレス接続かについて。最近のワイヤレスモデルはほとんど遅延を感じさせないが、映像とリンクしていない作品であればさらに気にする必要がなくなるので、ワイヤレスモデルの方が良い。胸が高鳴って荒ぶった時にケーブルが引っかかって現実に戻る、といったケースも回避できる。

その他の機能としては、ノイズキャンセリングがついていれば嬉しい。雑音を切り捨て、ただただ没頭できる。ただし、周りの音が聞こえなさすぎて親カットインに気づけない、といったハイリスクハイリターンな側面もある。一人暮らしや鍵付きの部屋に住んでいるならオススメだ。

バイノーラル/ASMR聞くならどっち?

ここまでの検証からイヤホン、ヘッドホンにはともにメリット・デメリットがあることが分かった。

その上で、攻守に優れた「イヤホン」、それも「ワイヤレスイヤホン」がバイノーラル作品を聞くのに適している、と提唱したい。

まだバイノーラルもASMRも未体験という方がいたら、一度イヤホンで聞いてみてほしい。なお、その際にはニヤニヤしてヤバいやつ認定されないよう、周りにはご注意を。

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