オーディオにおけるDACって何?

今こそ知っておきたい「DAC」の基礎知識(前編) ー その役割や関連用語を解説

山之内 正

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2017年09月19日
【Q3】なぜ今、オーディオコンポーネントとしてのDACが増えているのでしょうか。

ホームオーディオ向けのコンポーネントとして独立したDACが登場したのは1980年代半ばのことで約30年の歴史があります。当時のDACは、トランスポートと組み合わせてセパレート型CDプレーヤーを構成するデジタルプロセッサーという位置付けでした。ディスク再生はトランスポートに任せ、アナログ信号に変換する部分をDACとして独立させることによって、一体型以上に性能を高めることを狙ったのです。メカドライブを内蔵するCDプレーヤーに比べて、専用設計のDACは音質を追い込みやすいというのが、単体DACの支持が広がった第一の理由で、その点は現在でも変わりません。

音楽ファイルがオーディオのメインソースのひとつになって以降、USB-DACはオーディオ再生における代表的なコンポーネントのひとつになった

他のコンポーネントから独立させることによって最新技術を導入しやすくなるメリットもあります。特にD/A変換の技術革新はスピードが速く、アンプやトランスポートよりも短期間で技術が進化します。専用設計なら開発のペースを短くして最新技術を採り入れやすくなるのです。さらにプレーヤーやアンプに内蔵する場合に比べて、独自設計を活かした本質的な音質改善を実現しやすいという理由も無視できません。

3つめの理由は、音源の多様化です。アナログ音源は激減し、メディアの種類を問わず、いまや大半の音源がデジタル化されています。信号伝送もアナログからデジタルに切り替わり、以前はオーディオ機器に縁のなかったインターフェースも広く使われるようになりました。パソコンのUSB伝送やネットワークプレーヤーのイーサネット(LAN)はその代表的な例と言えるでしょう。

特にUSB入力をメインとした「USB-DAC」は、パソコンで音楽を再生するスタイルが広まるにつれて、この数年で主要なオーディオコンポーネントのひとつとして普及しました。

音源が多様化して再生機器が増えると、形式の異なる複数のインターフェースを装備する必要があり、サンプリング周波数や量子化ビット数の拡張にも対応しなければなりません。単体のDACならそうした対応がしやすく、柔軟な設計ができるメリットがあります。

デジタル音源の多様化といっても、たんに音源の種類が増えただけではありません。マスターの音質を劣化なく再現するハイレゾ音源が急速に浸透し、音質改善が一気に進んだのです。CDを超えるサウンドを家庭で楽しめるようになったのはこの10年ほどのことで、単体DACの性能と機能が向上し、選択肢が増えた時期と重なります。ハイレゾ音源の普及と単体DACの需要拡大は同期しているのです。


【Q4】DACにおいてデジタルフィルターとはどんな役割をしているのでしょうか。

フィルターの用途は非常に幅が広く、オーディオ機器では目的に応じてさまざまなフィルターを活用しています。特にデジタルフィルターは演算能力を駆使して、デジタル信号に対してさまざまなフィルター処理を行うことができます。

その性能を活かした例の一つが、DACチップ内または外部でオーバーサンプリングやアップサンプリングなどを受け持つ「デジタルフィルター」です。デジタル信号には量子化ノイズと呼ばれる変換誤差が含まれるため、アナログに変換する際はそれらのノイズが音質に影響を与えないようにフィルターを適用しなければなりません。特に、現在の主流である1ビット型DACの場合、ΔΣ変調と呼ばれる処理を行う前にデジタル信号のサンプリング周波数を8倍などにオーバーサンプリングすることによって、最終的な音質の改善を図ることが一般的です。

デジタルフィルターはアナログでは実現できないような急峻な減衰特性を実現できるメリットがありますが、減衰特性をシャープに設計すると、原波形には存在しないリンギング(プリエコー/ポストエコー)が発生し、音質が変化するという副作用が発生します。そのため、あえて遮断特性を緩やかにしてリンギングの発生を抑え、自然な音に近付ける工夫を凝らしたDACも存在します。そうしたDACを活用すると、複数のフィルター特性のなかからユーザーが好みのフィルターを選択できるように設計することができ、音源に合わせて音調をコントロールするなどの機能が利用できます。


マルチビットDACと1ビットDACのちがいは?

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