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同時代を歩んだ評論家がテクニクスを改めて解説

<IFA>4年の中断、ハンデではなくプラスへ ー テクニクス復活への大きな期待

2014/09/05 山之内 正
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時代を象徴する重要製品が多数揃っていたテクニクス

創立50年といえばオーディオの世界ではかなりの老舗だ。1965年に誕生した「Technics(テクニクス)」ブランド復活のニュース(関連ニュース)を聞いてまず感慨深く思い出したのは、その歴史の長さ。なんと来年で誕生から50年を迎えるのだという。


テクニクスのブースでも、これまでの歴史的銘機とともにその歩みを紹介している
筆者もそうだが、小学生の頃からオーディオと音楽の虜になっていたファンにとって、テクニクスはまさに同時代のブランドと言っていい。しかも、ただ懐かしいだけではなく、身近だがとても重要な存在という記憶がある。

なぜそう思うかというと、多くのブランドがひしめくなか、テクニクスはその個性が異彩を放つと同時に、真面目な設計を貫くことで高い基本性能をそなえ、しかも壊れにくいという印象が強かったからだ。

多くの場面でリファレンスとして活躍してきたのはそのあたりに理由があるのだろう。あり得ないほど強大なトルクを持つターンテーブル「SP-10シリーズ」は放送局を中心にプロの現場で絶大な信頼感を得ていたし、FM放送のエアチェックにはオープンリールデッキ「RS-1500U」が欠かせない存在だった。

アンプでは、バッテリー駆動を採用したプリアンプ「SU-C7000」、巨大なアナログメーターが目を引くパワーアンプ「SE-A7000」など、比較的新しい製品のなかにも存在感のある製品がたくさんあった。そして、これらの製品の音はいずれも記憶のなかにしっかり刻み込まれている。音に強いクセがなく、自然なバランスの良さが際立っていた。

テクニクスのスピーカーは個人的に使う機会はなかったが、リニアフェイズ再生を狙った独自構造が異彩を放つ「SB-7000」や、平面ユニットを採用した「SB-RX50」など、それぞれの時代を象徴する重要な製品が揃っていたことは強く記憶に残っている。

私たちの耳を育て、「音」の判断基準に。

これらの機器の記憶を懐かしさだけで語れない重要な理由がもう一つある。それは私たちが音楽と接するときの感性に重要な関わりのある話だ。

放送局仕様のSP-10シリーズをはじめとして、小中学校の音楽室や家庭のリスニングルームで活躍していたオーディオ機器の音は、普段何気なく聴いている間にひとつのスタンダードとなり、当時の音楽ファンの感性を育てるうえで大きな役割を演じていた。つまり、知らず知らずのうちにその音が基準になり、「音」そして「音楽」の価値判断を左右するほどの影響を与えていたのである。

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