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【レビュー】JVCの4K対応プロジェクター実力徹底検証(1)− 今期フラグシップ「DLA-X700R」

2014/02/12 山之内 正
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JVCのプロジェクター「DLA-X700R」は、コントラスト性能を高めた新世代パネルの実力を引き出すことをテーマにJVCが技術力を結集して開発した渾身のフラグシップ機だ。最新世代のe-shift3で4K表示のクオリティを追い込み、作品本来の精細感を蘇らせるMPC技術の内容も洗練させるなど、中身の進化は著しいものがある。今回は2D映像に絞って画質をじっくり検証した。


DLA-X700R¥OPEN(予想実売価格840,000円前後)
本機のカラープロファイルはX500Rの2倍近い23種類の選択肢があり、作品ごとに異なる色や階調の特徴をきめ細かく引き出すことができる。特に3種類のフィルム特性を選べる「フィルム」の画調はキセノンランプをシミュレートした光源色とともに他機では出せない独自の価値と味わいがあり、本機を選ぶ大きな理由になりそうだ。

『オブリビオン』をフィルム1で見ると肌色の温度感にほどよい温かみが加わり、同じ場面でも映像から受ける印象がシネマとはかなり違う。劇場のスクリーンを連想させる柔らかいトーンになじんだあとでシネマモードに切り替えると、鮮鋭感と透明感の高さによって現実に引き戻されたような感覚になるが、逆にスカイタワー室内の透明な空気感やバブルシップの質感などはシネマモードの方がリアリティが高い。

『サウンド・オブ・ミュージック』はシネマ1のプロファイルで4Kらしい鮮鋭感と力強いコントラストを堪能するのがお薦めだ。この作品はフルHDプロジェクターと4Kプロジェクターの描写力の違いがわかりやすい作品の一つで、特にザルツブルク旧市街をザルツァッハ川の反対側から望む場面などは大きな違いが生まれる。マリアの表情を自然な立体感でとらえつつ、背景の街並みに自然な遠近感が生まれるのが理想なのだが、精細感を上げ過ぎると両者のバランスがくずれ、カメラの狙いが曖昧になってしまう。

本機に新たに搭載された「オート」の設定はそのバランスにまったく違和感がなく、この作品のなかでも数少ない現地撮影シーンならではのリアリティが感じられた。また、ガンマ補正を「ノーマル」から「階調重視」に切り替えることで、さらにフィルムらしいトーンが浮かび上がってくる。チャプター8は解像度とノイズのバランスが適切で、従来機種に比べて背景のノイズが目立ち過ぎず、精細感の高さが自然に伝わってきた。MPCの映像処理は世代を重ねるごとに確実な進化を遂げている。

HD収録のステージ作品としてパルマ・レッジョ劇場の『リゴレット』を見る。背景の黒の沈み込みはX500Rよりも一段と深みを増し、ハイエンドクラスのなかでもトップ水準。暗部のなかの色バランスにも偏りがなく、フラグシップ機の余裕を見せた。本機は「ステージ」モードのコントラスト感が実際の舞台に近く、映画モード以上にリアルな臨場感が伝わってくる。

4Kプロジェクターの表現力を駆使すると、BDのフルHD映像の枠を超えてマスターに迫るリアリティが生まれることがある。JVCの最上位モデルはその点で世代を重ねるごとに確実な進化を遂げ、フィルムや4Kマスターの表現領域にまた一歩近付いた。

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