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レコチョク/NTTぷららの担当者にインタビュー

「レコチョクBest」「ひかりTVミュージック」はなぜ100万曲/980円/320kbpsなのか?

公開日 2013/03/07 15:28 折原一也
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■聴き放題/980円という価格はいかに決定されたのか

「ひかりTVミュージック」の価格設定は月額980円。同時に開始されるレコチョク社の「レコチョクBest」も同額の980円と、いずれも1,000円以下という価格設定も特徴だ。

「レコチョクの価格設定は、海外サービスを意識しています。海外ではもっと安いのに日本ではこんなに高いのだろう、というのが買い控えの理由になっていましたし、高いなら無料サービスで済まそう、というお客様もかなりいらっしゃいました。音楽リスナーの実態調査を見ても、無料メディアがあるから音楽にお金を払わないのではなく、音楽の値段が相対的、心理的に「高い」という意識があることが窺えます。海外では安く買えるという不平等感、不公平感もあるはずです。そのような理由で多くのリスナーが魅力的な音楽から離れてしまうことは避けたいと思い、今回の価格を実現させました」(レコチョク社・鬼頭氏)


サービスの価格決定から、音楽の新しい消費形態の模索へと話題は発展した
なお、「ひかりTVミュージック」と「レコチョクBest」は個別に価格設定を行ったのだという。「ひかりTVミュージック」についても、独自の調査や競合サービスの動向、ターゲット層の傾向などを検討した結果、月額980円という価格にたどり着いたのだという。

邦楽を多数揃えての100万曲以上を配信するサービスは日本初であり、リスナーの期待感は大きい。一方、レコチョクは1曲単位のダウンロード販売も行っている。競合は考えられないのだろうか。

「レコチョクで年間12,000円以上の楽曲を購入されているリスナーは、それほど多くないのです。実際に利用されている方は、特定のアーティストの新曲だけ買う、しかも毎回というわけではない、という場合が多いようです。そいう意味で、定額聴き放題と個別楽曲のダウンロードでは利用するリスナーが違うと考えています。

一方で、レコチョクは従来のサービスでは、新譜中心に楽曲を買っていただくモデルなので、リスナーがそのアーティストを深く知るというのはなかなか難しかったのです。利用者もF1層(20〜34歳の女性のこと)が多く、限られた予算の中で、今月何を買おうかなとなると考えて購入していただいています。

例えば、JUJUさんの新曲を買っていただいたリスナーがいるとします。その方がダウンロードによる配信だけで過去の作品にまで遡っていくのはなかなかハードルの高い行為でしょう。もしそのとき、手軽に過去の作品を聴く方法が用意されていれば、JUJUさんの魅力をさらに知って熱狂的なファンになることもできたでしょう。

そういう道筋を『レコチョクBest』で用意したかったのです。過去の楽曲もリーズナブルに楽しめるサービスを提供することで、音楽をもっと深く楽しんでいただければと思っています」(レコチョク社・鬼頭氏)

「プレイリスト」を共有していくことが新しいヒットの形をつくれるのではと語る(株)NTTぷららの林氏

インタビューの席上で話題に上がったのは、例えばテレビの音楽番組のように日常的に音楽と接するための定番メディアがなくなりつつあることだ。「歌番組がなくなってしまった代わりに、同じプレイリストをみんなで共有することで、違ったヒットの形もつくれるのではないか」(NTTぷらら・林氏)と、「ひかりTVミュージック」や「レコチョクBest」ならではの音楽の楽しみ方の広がりも期待されている。

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