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特別座談会:ビジュアルグランプリ「批評家賞」選出議事録 − 2011年優秀モデルはコレだ

2011/12/27 AVレビュー編集部
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●ハイフレームレート化を要望する
元が1秒24コマでは現実世界の完全再現は不可能


山之内 稚拙な3Dコンテンツが多いからより解像度を増やす平面表現に向かうべき、という議論もあるかもしれません。ですが、どちらが良いかという視点は全くナンセンスです。

そもそも、映像表現のリアリティ追求における肝心な要素はまだまだ数多くあります。ダイナミックレンジも足りない。色再現も足りない。現実世界と比較するとディスプレイ応答性は圧倒的に不足しています。

手段として3Dなり4Kを用いれば全て解決するものかというと、そんなに単純なものではありません。今見ているもののリアリティを映像上で完全再現することを目的とした場合、到達点としては現状では20%程度に過ぎません。感覚的な人間の認知能力と映像とのギャップをどう埋めていくか、ここに研究と技術を費やすべきだという意見が業界内にありますが、全く同意します。

折原 なるほど。

山之内 私たちが今観ている3D映像は、一瞬一瞬で凄いと思うところがあっても、トータルでの映像表現領域には到達していません。画質評価の対象としてはある特定の場面はなるかもしれませんが、映像作品として最後まで観られるものは本当に数が少ない。

大橋 『アバター』以外では『ガフールの冒険』ぐらいしかないですね。あえて挙げれば、『塔の上のラプンツェル』、『アリス・イン・ワンダーランド』。日本映画は実写、アニメ、どれも失望しました。

山之内 次のステップに行くためには、もう少し時間をかけてきちんと研究する必要がありますね。

貝山 おっしゃる通りです。

山之内 私たちが自然界で体験しているコントラストと、AV機器のコントラストとでは桁が遙かに違います。4K製品が登場して、映像表現が一つの到達点に到着したかのように言われるケースも最近は多いですが、あくまで一つのステップに過ぎません。

−− はい。

山之内 将来に渡って進化する余地が非常に大きいという意味では、逆に楽しみではありますが。

岩井 そうですね。

山之内 機器を作る立場の方にお願いしたいのは、決して後ろに戻ってはいけないということです。方式の選択にこだわり過ぎたり、物理的な負担を軽くすることだけを目的として、肝心の映像がスペックダウンするようなことがあってはならないと思います。

写真手前より林正儀氏、鴻池賢三氏、岩井喬氏、折原一也氏

村瀬 3Dであれ、4Kであれ、例えば動画解像度という面を考えると、改善の余地が非常に大きいのは事実ですよ。静止画であればともかく、情報量が圧倒的に多い動画は映像自体のコマ数を増やす方向でもっと検討すべきです。フイルム時代の映画を元にした24コマという決まり事をハイフレームレート化するべきだと思いますね。48コマあるいは60コマ、そして120コマに引き上げることで、画質が確実に一歩前進するはずです。

貝山 3Dカメラの進歩にも期待したいですね。調整に莫大な時間がかかるのでロケーションではなくセット撮影したがる傾向が現在の撮影現場にあるようです。しかし、セット撮影が中心になれば表現の幅が狭まってしまいます。そういう意味で、パナビジョンが最近開発を進めているという新しい3Dカメラに私は興味があります。

 それは楽しみですね。

村瀬 映画人の方々は、24コマの3Dでは足りないということに既に気が付いているようです。48や60は最低ラインで、120コマ分のフレームが撮れてディスプレイで再現できるようになれば理想的です。もはやフイルムの時代ではなく電子で撮るわけですから、もっと思い切ったハード進化があってしかるべきだと考えます。

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