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特別座談会:ビジュアルグランプリ「批評家賞」選出議事録 − 2011年優秀モデルはコレだ

公開日 2011/12/27 15:09 AVレビュー編集部
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●『アバター』以後のブレイクスルー
メガネの「有り」「無し」は、極めて些末な問題である

貝山 4Kやさらにその先には8Kへと向かう道筋があります。最終的にそこまで行けば、仕組み上の技巧を凝らすまでもなくごく自然に今まで以上の立体感が表現できるはずです。4Kですらまだその道筋における途中過程に過ぎませんので、立体感を補う意味で3Dとの併せ技が必要であるということでしょう。逆を言えば、3Dの側がもっと4Kという武器を積極的に使うべきだと思いますね。

 方式の違いは些末な問題かもしれませんが、テレビの場合はプロジェクターよりもメガネの問題がシビアになりますよね。そういった意味で東芝の55X3のような裸眼へのチャレンジは理解できます。ただ、それを実現するために4Kテレビとしての性能を犠牲にするようでは意味がない。4Kの性能を突き詰めたモデルと、3Dをメガネレスで手軽に鑑賞できるモデルを分けて発売して欲しかったですね。

東芝の4K2K/裸眼3D対応の55V型液晶テレビ「55X3」

折原 一つのモデルでグローバル展開する必要があったので、致し方ない部分もあったのではないでしょうか? 日本と海外では求められるものが違う筈ですし。

山之内 ドイツで開かれたIFAでは、55X3の訴求は裸眼3D一辺倒でした。日本のCEATECでのプレゼンは4Kが中心でした。

 2つのモデルを出すのが不可能であるならば、4Kに特化した製品の方を観てみたかった気がします。

貝山 そうですね。

折原 メガネの有り無しはそれほど問題になりませんよ。アクティブシャッタータイプのメガネも当初のものより軽量化が進んでいます。パナソニックの最新機種では約25g程度です。偏光タイプのものではもっと軽くなっています。3Dメガネ規格を標準化する「フルHD 3Dグラス・イニシアチブ」も動き始めましたし、クリップオンタイプのアクティブ方式もそのうち登場するかもしれません。

鴻池 メガネはない方が望ましいのかもしれませんけど、3Dテレビに対する意識を調査した結果を見ると、コンテンツが少ないことに不満を抱いているケースの方が圧倒的に多いようです。裸眼かメガネかという議論より先に、まずコンテンツの方をなんとかしなくてはいけないと思います。

鴻池賢三氏(左)、林正儀氏(右)

大橋 特にテレビの場合は、放送中心で判断されることが多いでしょうから余計にそう思うでしょうね。

貝山 現状の3D放送が中途半端すぎますから、余計に支持を失うのです。仮にサイド・バイ・サイドであっても4Kの技術ときちんと手を結べば、鑑賞に堪えうるものができる筈なのですが、現状のままでは完パケになるような優れたものは出てきようがないです。なぜ立体が必要なのか、もう一度作り手は考えてみる必要があると思います。

大橋 そうですね。

貝山 『アバター』は立体の必要性が確かにありますし、観る側にそれを伝える工夫が凝らされています。それと同じようなレベルのものがどんどん出てこないと駄目でしょうね。

大橋 3Dでの世界観を最初から念頭において製作された作品は非常に少ないですからね。ポストプロダクションの過程で3D化される作品の方が多いのですが、早くもマンネリ化が進んでいます。点数を増やすことだけを目的とするのではなく、3D表現を念頭に置いたコンテンツの作り方をもう一度考える必要があると思います。

貝山 ええ。

大橋 『アバター』の次のブレイクスルーが出てこないと、ここで止まったきりになってしまいます。背景と近景の遠近表現、被写体の運動表現だけで3D世界を成立させようとするスタイルだけでは駄目です。企画と製作、そして技術をもっと突き詰めて突破口を切り開かないといけません。

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