タンノイのシンボルといえる同軸型ユニット「デュアルコンセントリック」が誕生してはや半世紀以上。その間オートグラフを頂点とする数々の名器を世に送り出してきた。近年ではその流れを引き継ぐウエストミンスター・ロイヤルやカンタベリー、スターリングなどの「プレステージシリーズ」が、栄光と伝統のサウンドを守っているのは周知の通りだ。

アイリスシリーズはそうしたトラディショナルな路線とは異なる、タンノイの現代的アプローチによって生まれた中堅シリーズ。バリバリのワイドレンジとマルチch再生を指向している。ただし構成は通常の2ウェイであった。今回の「アイリスDCシリーズ」で注目したいのは、同軸化だ。タンノイ伝統の同軸2ウェイユニットを音の中核に据えるとともに、51kHzもの高域再生能力をもつワイドバンドトゥイーターを新たに開発、搭載したのである。

いうまでもないが独自の同軸構造をもつデュアルコンセントリックの利点は、ホーントゥイーターとウーファーの音源が1点となることによる明確な定位の再現にある。

ウーファーのカーブをトゥイーターの延長上として活用するアイデアは秀逸。あのオートグラフやGRF以来のものだが、現代においても古びるどころか、最先端のアイリスDCやディメンションシリーズに活かされているのだ。

EYRIS DC1及びDC3の端子部。スピーカー端子とアース端子を円形状に5ポイントで配置している
EYRIS DC1の端子部にスピーカーケーブルをつなぐ林氏

今回の7インチ(175mm)の新ユニットは、精密成型によるテクノ・ウエーブガイドによって、正確な球面波をつくりだしている。青っぽいコーンはマルチファイバーペーパーコーンで、これは低域補強のサブバスユニットにも用いられるものだ。16kHzから上をカバーするワイドバンドトゥイーターはネオジウム磁石にチタンダイアフラムという内容。強力である。

新シリーズはフロントトールボーイのアイリスDC3とコンパクトなDC1。そしてセンターのアイリスDCCから構成されている。いずれも同軸2ウェイとワイドバンドトゥイーターは共通で、DC3およびDCCではこれにサブバスユニットが付加されている。つまりDC3は4ウェイのリアバスレフ・トールボーイであり、アルミダイキャスト製のフットベースが付属するのも特徴だ。DC1は3ウェイのフロントバスレフ。美しいラウンドトップをもつエンクロージャーは、シカモア材の突き板仕上げだ。フロントバッフルは30mm厚。リジッドさでも文句はない。

福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。現在、日本工学院専門学校の講師を務め、音響・ホームシアターの授業を受け持つ。難しい話題をやさしく説明するテクニックには定評がある。