マランツ「MCR60n」を聴く。小さなボディ、洗練されたデザインが奏でる進化した“一体型”の音
「M-CR612」から何が変わった?内部設計の刷新をチェック
そして内部を見ると、本機に対するマランツ開発陣の本気度がさらに伝わってくる。全基板をゼロから設計し、電源、パワーアンプ、プリアンプ、オーディオ回路を刷新。電源基板をシールドで囲い、メイン基板へのノイズ混入を抑えている。新しいカスタムコンデンサーや高音質コイル、ノイズ低減を図った部品も投入された。
シャーシは1mm厚のボトムプレートを追加した二層構造。M-CR612より質量は0.8kg増え、4.2kgとなった。この手応えは、持ち上げた瞬間にも分かる。
定格出力は65W+65W。クラスDアンプモジュールを採用し、スイッチング電源部の強化によって、M-CR612比で出力が30%も向上している。シャーシサイズをほぼ維持しながら、ここまで出力を高めたのは嬉しいポイントだ。
M-CR612と同様、A/B二組、計4チャンネル分のアンプを搭載するが、ここがマランツの一体型製品の面白いところでもある。通常のステレオ接続や、2組(4本)のスピーカーの同時接続に加え、対応スピーカーの高域と低域を別々のアンプで駆動するバイアンプ、さらにシングルワイヤリングのスピーカーに二つのアンプを並列で使用するパラレルBTLにも対応。スピーカーに合わせて、より適した駆動方法を選べるわけだ。
CDドライブには、単品ネットワークCDプレーヤー「CD 50n」と同じメカを採用する。ヘッドホンアンプにもHDAM-SA2や高スルーレートのオペアンプなどを搭載。小型だから簡略化したという言い訳が、どこにも見当たらない。
そして、サウンドチューニングを担ったのは、マランツ製品の音決めを担うサウンドマスター、尾形好宣氏だ。尾形氏がMCR60nに求めたのは、音楽ソースが持つ情報量、空間、ダイナミクスをありのままに引き出すこと。背景の静けさや透明感を重視し、CD、ネットワーク、Bluetoothなど、入力が変わっても音質の落差をできるだけ小さくする。そして、この考え方が、後の試聴で効いてくる。
一体型モデルだけに、接続は簡単だった。デンマークDALIの2ウェイ・ブックシェルフスピーカー「SONIK 3」へスピーカーケーブルを接続する。本機で採用されたフラット型スピーカー端子は指を入れやすく、ケーブルもしっかり固定しやすい。次に有線LANへ接続し、HEOSアプリで初期設定を進める。十数分ほどで準備は完了した。
皆さんの中には、一体型オーディオ機器に対して、「どこか音が薄い」「低音の踏ん張りが弱い」「背景の静けさや音場の広がりでは、単品コンポーネントにまったく歯が立たない」といった印象を持つ方もいるだろう。筆者自身、M-CR612をレビューし、その音の良さは知っていた。それでも今回は、無意識のうちに「よくできた一体型」の範囲を想像していた。
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