静謐感あるデザイン、リアルな空間描写。エソテリックの最新アナログプレーヤー「T-01」速報レビュー
ESOTERIC(エソテリック)が35周年記念モデルとして、初めて登場させたフラグシップ・アナログプレーヤー「Grandioso T1」。そのエッセンスを取り入れ驚異的な静粛性、妥協のない精度、ダイナミックな高トルクを実現した「T-01」が登場した。そのサウンドの真髄に迫る。
リアルな演奏と温度感がある歌唱に感激
エソテリックのモデルには、世界的にも評価の高い独創的技術が搭載される一方、ドイツのバウハウスのアートを彷彿とさせるところがある。それは、まさにアルミの彫刻の佇まいなのである。そして、一度、音楽を再生するなり、オーディオを忘れさせ、透明感のあるリアルな響きの世界にユーザーを引き込んでゆく。
この日、私が聴いた最新のアナログプレーヤー「T-01」もそれを感じさせてくれた。
聴き慣れたヴォーカル曲、「クワイエット・ウィンター・ナイト」では、フラグシップのGrandioso T1に迫るリアルな演奏が眼前に展開し、肉声と同質に思える温度感がある歌唱に感激した。
パーカッションやトランペットなどの金属の響きにも柔らかな微細音が重畳され、生の音を聴いている印象を受けた。バスドラムの響きも雄大に大きく空間描写された。
運よく古本屋で入手したチック・コリアの『リターン・トゥ・フォーエヴァー』は、1978年の来日記念リイシュー盤である。その音の鮮度は極めて高く、レコードを聴いているというより、マイクが捉えたコンソール・アウト(ミキサー出力)の音をモニターしている感覚に陥った。音場は広く、奥が深い。エレクトリック・ピアノのリヴァーブは濃厚で、いつもなら、軽いタッチで響くドラムスも分厚く聴こえ、薄口に聴こえるシンバルも鮮烈かつ響きが中央方向へ拡大される。
その背景に曖昧に広がりがちな女性ヴォーカルも実在感を鮮明にし、ベースもタイトに表現される。レコードを聴いているというより、音楽がリアルである。
正確な回転数を維持する独自の駆動方式を採用
そのアナログプレーヤー、T-01を解説しよう。Grandioso T1よりも高さが抑えられ、プラッターが中央より右にオフセットした静謐感を漂わせるデザインが印象的。真上から見た曲線美とともに、前述のとおりバウハウスのアートを思わせるところがある。
本体キャビネットは、30mmの美しいピアノグロス・ウッドの上下を15mmのアルミ板で挟んだ、振動を低減する構造。フットは、ゴムダンパー・リングを使ったスパイクと受けを一体化した重厚なアイソレーション・フットで、高さ調整が可能である。
本機には、同社オリジナルの初期感度の高さを重視したジンバルサポート型スタティック・バランスアームが搭載され、最大2本のアーム設置が可能。アームレス・モデルも用意された。プラッターは高精度アルミ切削製で、13kgという重量で、慣性力を高めている。さらには、高精度なプラッター軸に配置したマグネットの磁力でプラッターを浮かしているが、綿密な音質評価を行い、完全に浮かさず、5.5kgの荷重をプラッター軸が受ける構造とした。
そして注目は、もちろん駆動方式である。Grandioso T1と同様に、モーターの駆動プーリーに磁石のS極とN極が交互に並ぶように18個着磁し、マグネティック・ドライバーを構成する。プラッターの下部には、192個の歯車のような形状の軟鉄製インダクション・ホイールを実装。
これらを接近配置し、マグネティック・ドライバーが回転すると、インダクション・ホイールには、誘導磁力が加わり、非接触で同期回転する仕組みである。これを「ESOTERIC MagneDrive System」という。
なお、このドライバーとホイールの比は18対162、即ち、1対9の比率であり、ドライバーが9回転するとプラッターは、1回転する。ホイールの回転制御は減速比に基づくもので、非接触(磁気結合)のアイドラー駆動と考えると分かりやすい。
また、軟鉄のホイールは、ドライバーと接近した時だけ着磁され、常時磁化されていない。この方式は、ダイレクトドライブ並みに駆動トルクが高く、ベルトの伸縮、経年劣化やプーリーの機械的精度、モーターの微細振動の影響を受けず、正確な回転数が維持できるところに優位性がある。
特筆すべきは、その駆動モーターである。構造としては、ヘビーウェイトの真鍮ベースの上にラバーダンパーで3支持されたアルミ製モーターブラケットを配置。このブラケットに強固なケースに収容された8極ブラシレスDCモーターユニットを吊り下げる構造とした。これを、「バイブレーション・アブソーバー・ケース」採用のモーターユニットという。
実に精密感のある重量級モーターユニットであり、15mmのアルミ・ボトム・シャーシに設置され、異種金属との組み合わせ効果も加わり、完全に外来振動などを排除し、安定した回転駆動を実現している。
電源部に関しては、別筐体のリニア電源を装備し、内部基板で、3相サイン波でモーターを駆動する。さらに同社の10MHzマスター・クロック・ジェネレーターを接続することも可能である。実にオーディオマインドが掻き立てられる技術を搭載しているのである。
クロックの接続で奏者の実在感が増した
私はこの日、シェフィールド・ラボのダイレクトカッティングレコードであるジェームス・ニュートン&フレンズのフュージョンも聴いた。その音は、今まで体験したことのない濃厚な響きであり、特にドラムスや打楽器、そして、キーボードに、レコードとは思えないリアルさを感じた。
さらにユリア・フィッシャーのプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲も聴いた。そこで感じたことは、音の透明度が増しただけではなく、巧みなボーイングによる響きの変化が鮮明になったことである。微細音が明らかに豊富になり、音楽の躍動を鮮明にした。
最後に、「Grandioso G1X」を使用し10MHzクロックを接続。『リターン・トゥ・フォーエヴァー』を聴き直してみた。大きく変化したことは、空間が拡大し、音の立ち上がりが自然になったことである。ますます、奏者の実在感が増し、レコーディングの本当の音を聴いている感覚に陥ってしまった。聴き慣れたレコードのダイナミックレンジが拡張された感覚でもあり、静寂な表現にも魅了された。
私は、T-01の誕生に喝采を送りたい。世界のレコード愛好家を魅了することであろう。

(提供:ティアック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.202』からの転載です

