10万円以下・Dolby Atmos対応のサウンドバーを一斉比較! “いい音”のリビングで新生活を迎えよう
ソニー「BRAVIA Theatre Bar 6(HT-B600)」
ソニーはサウンドバーに力を入れており、記事執筆時点で7モデルをラインナップしている。HT-B600は、サブウーファー付きモデルの中ではエントリークラスに属する1台だ。
スピーカー構成は、フロント左右およびセンターに46mm×54mm径の楕円形ユニットをそれぞれ1基、天面にも同ユニットを2基搭載。サブウーファーは165mm径を1基備える。これにより最大3.1.2chの音声処理に対応する。
立体音響フォーマットはDolby Atmosに加え、Blu-rayなどで採用例の多いDTS:Xにも対応。操作はスマホ用アプリ「BRAVIA Connect」も利用できる。
別体サブウーファーで低音◎、上下方向の表現も良好で映画にお勧め
パンチングメタルを採用した筐体はメカニカルな高級感があるし、音質はサブウーファーの効果もあり、高音から低音までレンジは広くメリハリも強いが、ややメタリックで人工的な質感が全体に付加されている印象。
ドラマ『グラスハート』では、男女ともにセリフのディテールは明瞭だが、わずかに付帯音が感じられる。室内シーンではエアコン音などの小レベルのリアリティが若干不足しており、声質も人工的に聞こえる部分があった。
一方、劇中音楽の表現力は高く、別体サブウーファーの効果により低音の迫力は優れている。また、本機は音場表現を大きく拡張する「サウンドフィールド」機能を搭載する。
オフ時はフロント中心のダイレクトな音だが、オンにすると左右方向に加え、完全な後方とまではいかないものの後ろ側まで音場が広がり、その変化は顕著だ。またトップスピーカーの効果で天井方向の表現も良好だった。
Bluetooth接続によるステレオ再生は、ややドンシャリ傾向の帯域バランス。空間オーディオの表現は優秀だ。イントロの回転する音の表現は秀逸で、迫力あるエレクトリックドラムは印象的。
Bose「Bose Smart Soundbar」
Boseのサウンドバーは総合的な音質の評価が高く評価され人気アイテムとなっている。現在3モデルをラインナップするうち、本機はミドルクラスに位置している。
デザインについては過度な装飾のないスタンダードな仕様で、詳しいユニット構成は公開されておらず、サブウーファーユニットの搭載も不明。筐体上部に音を放出する開口部があるので、フロントスピーカーの音を上部へ反射させるギミック、もしくは天井に向けたスピーカーが取り付けられている可能性はある。
音色と音場の両面で“上手い音作り”。音の広がりと迫力に優れる映画再生
しかし、上述したように音質は大変練り上げられている。音が出た瞬間、音色とステージの両面で「上手い音作りだなー」と感じた。バーチャルサウンドモードなどのギミックは搭載していないが、センターを中心に立体的かつディテールに長けたサウンドステージが構築されており、その広がりは左右の壁まで跨って展開されている。
人工知能を活用した「AIダイアログモード」を有効化させて、ドラマ『グラスハート』を試聴したが、小レベルの音の明瞭度が高く、セリフも自然かつ明瞭な表現。2人の女性の声の質感の描き分けも良く、声質に不自然さがない、料理をするシーンで包丁を置いた場面があるのだが、その音さえリアルで感心した。
映画は音全体の広がりと迫力を両立しており、ステージの基軸はフロントに持ちながら、微妙なさじ加減でサイドまで音が回り込む。
Bluetoothによるステレオ再生では、バックミュージックとボーカルともエッジ感はないが芯のあるディテールで聞かせてくれる。ただ、空間オーディオの再現性については、特に360度ぐるぐる回る場面では、リアまで音が回り込むものの、シームレスな移動感は不足していた。部屋の試聴環境との相性もあるため、別の機会にも試してみたい。
harman kardon「Enchant 900」
筐体デザインはスタンダード。LEDディスプレイによる文字表示機能も備える。スピーカー構成は55mm×75mm径の楕円形ユニットが4基、25mm径のトゥイーターが3基、さらに70mm径ユニットが2基。操作や設定は本体およびリモコンに加えアプリも利用可能だ。
テストトーンによるキャリブレーション機能も搭載する。キャリブレーションを行なって試聴したが、今回の中でも特に音の良さに感銘を受けた1台だ。
音の良さは随一! 左右と後ろ方向の音の再現度も高い
ドラマ『グラスハート』は、ここまでの試聴の中でも最上の音いってよいレベル。フロントには明瞭なセリフが定石、声のにじみはほぼ皆無で、質感の描き分けに長け、役者のわずかな年齢差さえも表現できている。
屋外の鳥のさえずりは左右から後方まで広がり、画面のカメラワークに音場が追従してくる。まるで劇中に入り込んだかのような臨場感が体験できた。
映画『ウォー・マシーン』では、歪みの少ない中高音域によりセリフの質感が良く、サラウンド表現も真後ろまでとはいかないものの、左右後方まで滑らかに回り込む。低音も単なる迫力だけでなく質感に優れ、このクラスの音であれば長時間の視聴にも十分対応できる。一昔前のサウンドバーでは体験できない基本性能の高い音だ。
Bluetoothによるステレオ再生で聴いたHANAにも感心した。標準状態でも低音の調整が不要なほど帯域バランスが整っており、センターと左右スピーカーのつながりも良好で、中高音域の分離も優れている。
低音は迫力とスピードを両立し、まさにピュアオーディオ的な再現力。LE SSERAFIMのDolby Atmosでは、自宅のリアルスピーカーを使ったリファレンスシステムを思わせる質感で、後方から前方への音像移動もかなりの次元で表現されている。
PHILIPS「TAB8750」
ヨーロッパを代表するメーカー初となるサウンドバーで、かなり力が入っている。特にスピーカー構成がすごい。本体に加えて、サブウーファーと、この価格帯では唯一、別体式のリアスピーカーが左右2個分付属する。
また、前後のスピーカーの音量バランスも変えることができ、視聴者を中心にウェルバランスの音量を決めることもできる。
スピーカー構成については非公表だが、天板部には天井に向けて音を出す開口部が設けられているし、上述した通りサブウーファーとリア用の左右スピーカーが搭載し、7.1.4chのデコードが可能だ。
別体サブウーファー/リアスピーカーの効果絶大。後ろ方向の音像もしっかりと
オーバーオールの音は、高音域の透明感が高く、ドラマ『グラスハート』ではセリフの明瞭度も高い。また、別体サブウーファーがあるため映画『ウォー・マシーン』では、爆発音などの迫力も十分で、低音もしっかり天板部からの音が天井に反射しており、雷の音も上方からしっかり聞こえてくるのが印象的だった。
そして、リアスピーカーの絶対的な性能は弱いものの効果は高く、リア側の音もしっかりとした音像で表現できている。
HANAの音は、若干の質感不足を感じるものの、ボーカルとシンセサイザーの音が明瞭でエレクトリックバスドラムの迫力もある。LE SSERAFIMについては、しっかり360度音が回る、メインスピーカーと、サブウーファーの音のつながりについてはもう少しスムースに進めたいけど、価格を考えれば全く問題ない。

Marshall「Heston 60」
ギターアンプで有名な英国のMarshallだが、近年はヘッドホンやBluetoothスピーカーを展開しており、街中でも同ブランドのヘッドホンを装着した人を見かけることが多い。そんなブランドがサウンドバーを発売したということで、かねてから興味を引かれていた。
まずはデザインから話さなくてはいけない。金属的な質感のボタンや赤いLEDなど、外観はまさにギターアンプを思わせる。スピーカー構成は、32.5mm径のフルレンジユニットが合計5基、76mm径のウーファーが2基。リモコンは付属しないが、操作アプリは利用可能(メニューは英語表記)。5バンドのイコライザー機能や音場補正機能も備える。
デザインも音質もオンリーワン。中音域と広がりに優れるエンタメ性の高い音
そして、音質は期待を裏切らない。ギターアンプを思わせるデザインから連想される、実にリッチな音で(もちろん歪みはない)、ドラマ『グラスハート』ではセリフの音色が良く、中音域の密度も高い。
音の広がりもあり、エンタメ性の高いサウンドだ。ワンボディで比較的コンパクトな筐体のため、映画『ウォー・マシーン』のように迫力が求められる作品では、絶対的な低音の量感はやや物足りないが、それ以上に音場の広がりが派手で楽しめる。
HANAのエレクトリックシンセサイザーはバランス良く鳴り、音楽的に楽しく聴ける。映画ではやや不足を感じた低音も、本楽曲では立体的に表現され、キックドラムのスピード感も十分だ。
意外だったのはLE SSERAFIMのDolby Atmos表現で、フロント重視かと思いきや、しっかりとリア側にも回り込む。視聴者を取り囲むシンセサイザーの回転表現だけで見ればharman kardonに匹敵するレベルだ。
何より、このデザインだけでも本モデルは魅力的だと感じる。音楽性の高さも含め、オンリーワンの個性を持つサウンドバーである。
いずれも十分な音質。音質傾向を参考に好みのモデルを選んでみては
いかがだったろうか。今回は10万円以下という比較的安価なモデルを中心に試した。
現在のサウンドバーは、ほぼ全てのモデルでDRC(ダイナミックレンジコントロール)を含むDSPを積極的に利用しており、筐体の音響設計の進化も含め、音質や音場の再生能力は一昔前では考えられないほど向上している。だから、音の明瞭度や分解能、低音域の迫力など、テレビ純正スピーカーとは比べ物にならないほどの音質アップができる。
また、今回はDolby Atmos対応モデルに限定。Dolby Atmosの再現能力は、いかに限られた筐体の中で三次元音場を構築するかが課題となっており、物理的な対応チャンネル数以上に「音の出し方」で完成度が大きく左右される。そして、その再現力は、価格に比例していなかった点も興味深い。
今回印象に残ったのは、まずJBLのコストパフォーマンスの高さだ。安価ながらセンタースピーカーを搭載することで、サウンドバーの音質評価の基本となるセリフの明瞭度が高く、アトモスの再現性も価格以上に感じた。
ヤマハのモニター調サウンドや、デノンの音楽性の高さ、そしてBoseの総合的な音作りの巧みさにも感心した。さらに、リアスピーカーが付属するPHILIPSにも驚いた。そして、今回音質的に最も感銘を受けたのはharman kardonで、高価なピュアオーディオスピーカーのような素晴らしい音楽表現に感心した次第だ。
現在のサウンドバーは売れ筋商品であり、メーカー側のコストスケールメリットの恩恵を受けているため、お買い得感が高い。エントリーモデルであっても、限られたコストの中で物量と技術が投入されており、いずれも音質的に十分な性能を持っていた。本レビューの音質傾向を参考に、安心して購入し、新生活を満喫していただければ幸いだ。
■取材・執筆:土方久明
■編集担当:岡本 雄
