【新旧フラグシップ対決】聴き比べてわかった、ビクター「WOOD master」真の実力。「完璧以上に期待へ応える」新旗艦機、堂々誕生!
新開発「ハイブリッドウッドドライバー」とは?
ウッド振動板はこれまで、ドーム部に極めて薄く加工したカバ材を用いた「ウッドドーム振動板」、さらに薄く加工したカバ材とカーボンコーティング樹脂材を組み合わせた「ウッドドームカーボン振動板」と進化してきた。カバ材の加工技術や樹脂材とのコンビネーションがその進化の歴史だったわけだ。
であるが本機に搭載の「HYBRID WOOD Driver」の新たなウッド振動板は全く新たなアプローチを採用。パルプにアフリカンローズウッドの細かな木片を配合して成型した振動板だというのだ。
パルプにせよ木片にせよ、木材そのものではないが木材由来のものではある。なるほどそうきたか。

パルプすなわち紙については、スピーカーの歴史の当初から振動板素材の定番であり、その適正は疑うべくもない。気になるのはローズウッド細片の方だ。パルプに麻や竹などを混合して特性を向上させる試みは過去にも多々あったが、ローズウッド細片はどのような効果をもたらすのか。
その鍵は、木片の大きさを特定の細かさに揃えたりはせず、あえて大小を適度にバラつかせていることにあるという。
すると振動板には大小の細片が混在し、部分部分を見れば特性がばらつく。しかしそのバラつきは振動板全体としては平均化され、単に全体が均質な振動板と比べても癖の少ない振動板になっているというのだ。
従来のウッド振動板との比較でも諸特性は向上。その力を引き出すべくドライバー前後の音響空間も最適化されているとのことだ。
使い勝手にも隙なし。音質も名門音楽スタジオが全面協力
音質機能も充実。ここはこの数年でのビクター完全ワイヤレスの進化の反映、または本機での新たな提案となる要素だ。
名門レコーディングスタジオ、ビクタースタジオのエンジニアたちがそれぞれ作成した「プロフェッショナル」サウンドモード、スタジオのエンジニアルームのような空間性を再現する「空間オーディオ」、ユーザー各自の耳の中の音響を測定しそれに合わせた最適化を行う「パーソナライズサウンド」が用意されている。高音質コーデックについては今回はLDACに対応。
HA-FW1000Tから引き続き搭載の「K2テクノロジー」にも注目したい。非ハイレゾのストリーミングやコーデックに対して、イヤホン側で高域成分を復元してくれる機能だ。
モバイル回線での低ビットレートストリーミングや高音質コーデックに非対応なiPhoneとの組み合わせで力を発揮してくれる。こちらは発売後のファームウェアップデートでの対応とのことなので楽しみに待っておこう。
この数年での進化の反映としては、アプリ機能、特にカスタマイズ自由度の高さも挙げておきたい。最大5回タップまでの操作に様々な機能や操作無効を割り当て可能だ。
例えば前述の「プロフェッショナル」を含めた多数のサウンドモードも、一通り試してお気に入りのモードを見定めたなら、そのモードだけをタップで呼び出せるように設定できる。いちいち順々に切り替えて目当てのモードまで進む煩わしさをなくせるわけだ。実際の利用シーンで便利な、実用的な設定が用意されている。
新デザインと新イヤーピースで装着感も向上
そしてこれまた全く新しいデザインと、それによる装着感の大幅向上も見逃せない。
先代HA-FW1000Tは大柄なイヤーバッズ型。長めのノズルでイヤーピースを耳に深めに挿入することなどで装着安定性は確保されていたが、装着感や見栄えは正直イマイチだった。
対して本機はステムを下に伸ばした新フォルムを採用。イヤーピースの挿入を浅めにして快適さを高めた上で、そのステムが耳の下側の窪みにフィットして支えになることで、装着安定性も高められている。

装着感向上には新開発イヤーピース「スパイラルドットPro SF」も貢献。耳の穴の形に近いとされる楕円形状を採用し、傘の背の低さと合わせ、耳に与える違和感をより低減したモデルだ。
楕円形イヤーピースの弱点である、イヤホン本体への正しい取り付け向きのわかりにくさと、チップの楕円と個人個人の耳の楕円の向きが微妙に合わない恐れへの対策も抜かりない。
ノズル側とチップ側に凹凸を刻んで取り付け向きをガイド。その凹凸の噛み合いに遊びを残しておくことで、ユーザー各自が自分の耳に合わせて向きを微調整できる余地も残してある。

もちろん単純にルックスもよい。カラバリはギターモチーフのサンバーストブラウンとピアノモチーフのピアノブラック。ステム部の真鍮色はどちらの色に対してもよいアクセントになっている。円形ケースの仕上げは革風のテクスチャーだが、こちらのモチーフも楽器ケースとのことだ。
