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PRHDMI搭載プリメインアンプ/サウンドバー/AVアンプ+3.1.2chで音質徹底レビュー

AudioQuestのHDMIケーブル「Vodka 48 eARC Priority」は“ケーブル1本”の域を超えた音質向上が叶う

公開日 2025/07/11 06:30 大橋伸太郎
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テレビやプロジェクターにAndroid TVやGoogle TVなどのOSの搭載が進むことで、YouTubeやNetflixといったVODサービスの視聴が広く浸透した昨今。それらに加える高音質コンポーネントとして、サウンドバーを始め、プリメインアンプやAVアンプといった、「eARC/ARC対応のHDMI搭載」をトレンドとしたモデルが着実に増えてきている。そこに欠かせない存在がHDMIケーブルである。

HDMIは登場以来バージョンアップを重ね、音声面の機能として、HMDIケーブルで音声信号の行き来を可能にする「ARC(Audio Return Channel)」、さらにロスレス5.1ch/7.1chやDolby Atmos/DTS:Xといったイマーシブサウンドフォーマットも伝送できる「eARC(Enhanced Audio Return Channel)」を開発。テレビと高音質コンポーネントをHDMIケーブルで接続するだけで、フルスペックのサウンドを楽しむことができるのだ。

そうした状況に応え、高音質なオーディオケーブルブブランドの代表格であるAudioQuestから “eARC/ARCの高音質化に特化” したハイグレード・HDMIケーブル「Vodka 48 eARC Priority」が絶好のタイミングで登場した。本ケーブルの登場に筆者も期待が高まった。そこで本稿では、Vodka 48 eARC Priority の音質を徹底的にレビューしていきたい。

AudioQuest「Vodka 48 eARC Priority」 税込価格 41,800円(1.5m)/47,300円(2.0m)/55,000円(3.0m)

ミドルクラスのコストに抑えながらも、ハイグレードモデルに迫る高音質を成し得る

AudioQuestは、1980年カリフォルニアで創業したオーディオケーブルメーカー。単線/信号方向性/絶縁体ノイズ消散/素材といった設計上の一貫した手法が特徴的だ。HDMIケーブルのラインナップの広さもAudioQuestならではであり、国内では9モデルを揃えている。

Vodka 48 eARC Priorityで注目すべきは導体のコーティングで、eARC導体が10%シルバーコーティングLGC、A/V導体が0.5%シルバーコーティングLGC、グランド導体が5%シルバーコーティングLGC(eARCのみ)の構造となっている。

端子部分には音声の信号方向を示した矢印が表記されている

Vodka 48 eARC Priorityは、eARC導体に10%シルバーコーティングLGCを採用

国内で販売完了となった価格が2倍近い「Vodka 48」、3倍近い「ThunderBird 48」と同じeARC導体とすることで音質面は同社ラインナップのなかでもハイグレードクラスと位置付けられるクオリティを確保し、一方でA/V導体をスタンダードクラス「Forest 48」と同等とすることでコストダウンを図っている。つまり従来に比べ、はるかに求めやすい価格でハイグレードクラスの高音質を実現したのが本機なのだ。

AudioQuestのラインナップの中で、eARC導体とA/V導体のグレードを比較すると、Vodka 48 eARC Priorityの導体はハイグレードモデルに相当する

パッケージにはeARC導体にフォーカスした図解も載せられている

eARCがテレビとサウンドバー、AVアンプをつなぐ幹線道路となったいま、価格を抑えながら高音質を実現した本機は待望の製品といえるだろう。同社製品に共通の着実な嵌合のプラグ部、外部ノイズ遮断を徹底した堅牢な本体は頼もしいが、硬く曲げにくいので取り回しに注意が必要かもしれない。

プラグ部分にも銀コーティング採用されており、下位モデルと差別化が図られている

ジャケットは青と黒のブレード仕様となり、ケーブルも非常に硬いことが印象的だ

Carbon 48と音質比較、サウンドデザインのバランスで明確な音質差が表れる

Vodka 48 eARC Priorityの基本的な音質チェックを踏まえ、価格の近い同社の「Carbon 48」と比較しながら検証してみたい。

ひとつ下のクラスになるが、価格は約3,000円程しか差がない「Carbon 48」と音質を比較した

テレビはeARC対応のHDMI端子を備える、パナソニックの4K有機ELテレビ「TV-55Z90B」を使用。HDMIケーブルは入力2に接続し、信号が出力される方向にして繋いでいる

システムには、音質をチェックする上でリファレンスにふさわしいマランツのハイグレード・HDMI搭載プリメインアンプ「MODEL 60n」、スピーカーシステムにDALIの中核を担う “OPTICONシリーズ” からフロア型モデル「OPTICON 6 Mk2」を組み合わせて実施した。

Vodka 48 eARC Priorityの基本的な音質を確かめるべく、リファレンスしててマランツのプリメインアンプ「MODEL 60n」とDALIのフロア型スピーカー「OPTICON 6 Mk2」を組み合わせた

比較するCarbon 48はeARC導体に5%シルバーコーティングLGC、グランド導体に1.25%シルバーコーティングLGCを使用している。微細な差を予想して試聴に臨んだのだが、驚くべき結果だった。映画『ロケットマン』で早くも2機種のHDMIケーブルのキャラクター差が明瞭に感取されたのである。

Carbon 48は、コンテンツのサウンドデザインのバランス上、強調すべき部分をクローズアップして聴かせる傾向。それに対し、Vodka 48 eARC Priorityはコンテンツ本来のサウンドデザインのバランスにあくまで忠実なのである。

MODEL 60nはHi-Fiグレードのサウンドをテレビ周りで楽しめるプリメインアンプとして高い評価を得ている

MODEL 60nは、ARC対応のHDMI端子を1基搭載している

たとえば、作中主人公が盟友のバーニー・トーピンに歌って聴かせる「僕の歌は君の歌」のピアノと歌のバランスがCarbon 48は終始ステレオイメージであるのに対し、Vodka 48 eARC Priorityは、最初はやや平板に聴こえながらも、ストリングスが加わると音場がほぐれて奥行きとパースペクティブが生まれ、この曲が世界的なヒット曲になり永遠の生命が生まれることをメッセージしていることがわかる。音の作り方にこれだけの含みがあるのことがわかるのだ。

MODEL 60nとOPTICON 6 Mk2の組み合わせで、ステレオ再生の音質をチェック

映画『デューン 砂の惑星PART2』も同じ傾向だ。Vodka 48 eARC Priorityは音がほぐれて広がり感と立体感がある。伝送プロセスの品位が高く立体音場情報が損なわれないため、ステレオ再生でナチュラルにサラウンドするのだ。Carbon 48は聴きやすいが音場がやや平板。ステレオ再生ながらイマーシブサウンドを彷彿させる音場の立体感を求めるならVodka 48 eARC Priority一択だ。

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