テレビにベストマッチなブックシェルフ型スピーカーを大研究！Bowers & Wilkins/DALI/Polk Audioで比較レビュー

DALI「OPTICON 1 Mk2」〜繊細かつ柔らかなトーンで品位の良さを感じさせる〜

DALI「OPTICON 1 Mk2」は、ミドルハイクラス “OPTICONシリーズ” のコンパクトモデル。29mmソフトドーム・トゥイーターと、120mmミッド・ウーファーを搭載し、今回取材した中でも最も小型サイズだが、磁気回路の改良、ウッド・ファイバー・コーンの採用、ネットワーク回路に高品位な電解コンデンサーを使用するなど、本格的なHi-Fi仕様となっている。

クラシック音楽の再現性の高さでも定評を得ている本モデルが、テレビと組み合わせることで、どれほどの実力を発揮するのか興味深い。OPTICON 1 Mk2と組み合わせるアンプは、HDMI端子を搭載したコンパクト・プリメインアンプとしてカジュアルなユーザーからも人気のデノン「Denon Home Amp」を選択した。

「ナチュラルな広がりとリッチな音場表現で高い没入感を誇る」

映画『新幹線大爆破』は、高品位なHi-Fiスピーカーらしい繊細かつ柔らかなトーンが印象的。音量を大きめにしても音の耳触りの良さは変わらず、「質の良さ」によるメリットを大いに感じる。例えば車両がポイントを通過する際の金属的な衝突音がエネルギッシュだったり、爆発音も超低域から質感が伴ってスピード感に溢れ、それが迫力として感じられるのだ。

甲乙をつけるものではないが、スピーカー数やサブウーファーの出力など、パワーで押してくるシアターシステムとは対照的だ。大太鼓を力強くドーンと叩くような効果音も、ナチュラルな広がりによってスケール感が広大。サブウーファー付きシステムのような地響き感は得にくいが、低域の中高域との繋がりの良さ、音場の自然さが没入感を増す。

ドラマ『地面師たち』は、ステレオ再生ながら空間を満たすリッチな音場で、ワイドな広がり感、明瞭な定位も臨場感をアップ。映像が示す空間のエアボリューム感とサウンドが釣り合うのは、一般的なサウンドバーでは得難い感覚だ。定位の良さにより、セリフが分離して聴き易いもの感心。また、声にボディが感じられ、例えば豊川悦司の低く響く声が明瞭かつニュアンスも濃く印象的だ。

交渉シーンでは、マイクに近く鼓膜にダイレクトに届く直接音と、トランシーバー越しの描き分けが鮮明で、聴感だけでもストーリー展開が把握し易い。ストレスが少なく、集中力が削がれないのは何よりだ。

「低域から高域まで再現性が高く、音の分離も鮮明」

音楽ライブ『【Ado】風のゆくえ （EXPO 2025 大阪・関西万博 ）』は、ワイドレンジで低域から高域まで再現性が高く音の分離が鮮明。ボーカルも通りが良く気持ちよく聴ける。織り込まれているドラムのパンニング効果も明瞭で、左右の移動感もスムーズなど、高品位再生の恩恵を感じる。

歌い上げるサビでは抜けが甘く感じたが、これは音源にコンプレッションが施されているためだろう。こうした音源の粗が分かってしまうのは、音質が良いHi-Fiシステムの副作用と言えるかもしれない。

テレビ番組は、スタジオ収録、屋外演説、ナレーションなど、声のトーンから収録場所の雰囲気までも感じ取れる。小さい音でも言葉として聴き取りやすく、逆に大きめでも煩く感じないなど、レンジの広さによる表現力の高さは、サウンドバーと確実に異なる部分だ。

Bowers & Wilkins「707 S3」〜空間表現のリアルさが圧巻で格の違いをみせる〜

Bowers & Wilkins “700 S3シリーズ” は、フラグシップ “800 D4シリーズ” の技術の多くを継承しつつ、より手の届きやすい価格帯を実現したミドルレンジのシリーズ。その中で「707 S3」は、シリーズ最小のブックシェルフ型として省スペース設置に向きながらも、カーボン・ドーム・トゥイーターをはじめ、Continuumコーンといった、同社ならではの高音質技術が惜しみなく投入されている。

707 S3には、マランツの中核プリメインアンプアンプ「MODEL 60n」を組み合わせた。ネットワークプレーヤーとしたの多機能性を備えながら、マランツサウンドの真骨頂を楽しめるアンプとして、Hi-Fiオーディオファンに愛されているモデルだ。

「人物の体温が感じられるほどリアルな存在感」

映画『新幹線大爆破』は、全ての音が精緻に分離して音色も極めて端正。「耳触り感が違う」と直感できるものだ。流石にこのクラスのスピーカーとアンプになると、格の違いは明らかだ。例えば列車の走行音は、金属がぶつかる音、パンタグラフが架線を摺る音、ブレーキ音なども聞き分けられるほど多彩。

音数が多く、一つ一つの音にエネルギーと存在感が感じられ、空間を満たすようにリッチ。シーンの空間が活きているかのようなリアルさは圧巻で、音量を小さく絞っても充分な没入感が得られた。もちろん、耳触りが良く煩く感じないので音量を上げても楽しめる。

悲鳴のように劈くブレーキ音が緊張感を増し、爆発音も空気が膨張するかのような立体感がド迫力。音の広がりもワイドで、再生能力が高いと、ステレオ再生でも充分な包み込まれ感が得られることが確認できた。

ドラマ『地面師たち』は、音質云々の通り越し、人物の体温が感じられるほど存在感がリアル。オーディオ的にはダイナミックレンジや周波数レンジの広さが器の大きさとなり、俳優の個性やニュアンスもより豊かに感じられるようだ。豊川悦司の堂々とした振る舞い、ピエール瀧のふてぶてしさが妙演な大阪弁、小池栄子がヒステリックに張り上げる様子など、感情がより多く伝わることで作品に惹き込まれる。

「ボーカルの高域の抜けが秀逸で力強さが心にまで届く」

音楽ライブ『【Ado】風のゆくえ （EXPO 2025 大阪・関西万博 ）』は、音源の質が良いとは言えないが、この組み合わせでは高級かつ上質なサウンドとして楽しめた。ボーカルは高域の抜けが秀逸で張り感が気持ちいい。

ファルセットで音量的に痩せる部分も抜けの良さで盛り上げ、歌い上げる様子が華やか。迫りくるような力強さは、鼓膜を通り越して心にまで届くかのようだ。全体として低く安定感のあるサウンドに加え、音源の粗をカバーして鑑賞に値するサウンドで聴かせる度量の広さも魅力だ。

テレビ番組は、声が明瞭で抜けによる力強さは明らか。音量を小さくしても聴き取りやすい。ナレーションは張りがあって抑揚表現も豊か。男性のアナウンスは、声の低い部分でも曖昧になることなく、言葉としての聴き取りやすさも抜群だ。ストレスを感じないので、日常のテレビ番組など、長時間視聴でも快適だろう。

インテリアのアクセントになりながらも音質で吟味できる魅力をもつ

今回、コンパクトなブックシェルフ型スピーカーをテレビと組み合わせたが、見た目にもテレビとのバランスが良く、改めてビジュアルとして成立するように感じた。スピーカーの存在がインテリアのアクセントとなり、適度な刺激感は非マニアにとっても心地よいだろう。

設置性の面ではローボードの上に収まり、余剰スペースを活かすなら合理的とも言える。スピーカーやアンプは選択の幅も広く、音質／デザイン／予算などを吟味して最適な組み合わせを選べるのも利点だ。例えばPolk AudioのR100ならサウンドバーに近い予算で堂々した本格派のサウンドが得られてコスパ感が高い。

OPTICON 1 Mk2は、サウンド傾向がぐっとHi-Fi的になって質を伴い立体感も豊か。サウンドバーとはまた違ったアプローチで、サウンドの格上げを実感できるだろう。707 S3は贅沢過ぎる感もあるが、操作時のクリック音でさえ心地よく感じるほど明らかな高音質効果を体験できた。予算が許せば、限られたスペースを効果的にアップグレードする手段としてお勧めできる。

熟成したHi-Fiオーディオシステムによる高音質な視聴環境は、テレビと組み合わせることで、毎日をより充実したものにしてくれそうだ。

 

（提供：株式会社ディーアンドエムホールディングス）