圧巻の描写はそのままに小型軽量化を実現! ZEISS「Otus ML 1.4/50」実写レビュー
今回はキヤノン「EOS R5 Mark II」に装着して撮影したが、過度にレンズヘビーな印象はなく、重量バランスは好印象だった。
ポートレートなど、ある程度決め打ち的な撮影では機材の重さはそれほどネガティブに考えなくても大丈夫だと思うが、1日中歩き回るような脚で稼ぐスナップ撮影では一眼レフ用Otus 1.4/55は体力的にツライのが正直なところ。
でもOtus ML 1.4/50ならそういう用途にも持ち出そうと思えるくらいのサイズ感に小型化されている。特に重さが300g以上軽くなっているのは大きい。
もちろん、ツァイスレンズ最上位となるOtusシリーズなので、小型軽量化されても画質を犠牲にすることは許されず、光学性能は従来の一眼レフ用Otusと同レベルをキープ。小型化はミラーレス用のショートフランジバックに最適化された光学系とすることで実現されている。
実際に使ってみても、ピントを合わせたところの像の立ち上がり方は鋭く、絞り開放でも結像部分には揺るぎないシャープネスがあってコントラストも充分に高い。
最近のレンズはどれも解像性能がよいので、「解像がスゴい!」と言ってもなかなか伝わらないのがもどかしいが、このレンズの解像性能の凄まじさは異次元で、さすがOtus!という感じ。とにかくキレキレの解像で、正直ここまで写るのかと思うほど。
こう書くと解像が高いだけと思われそうだが、ピントの立ち上がりが急峻なので立体感の演出が素晴らしくいいのも大きな特長だ。
なお一眼レフ用Otus 1.4/55は、後玉位置をセンサーから離さなければならない関係から、高画質を確保するために標準レンズとしてはやや長めの焦点距離である55mmを採用していたが、本レンズでは後玉位置をセンサーに近づけられるミラーレス用ならではの利点もあり、描写性能を下げることなく標準レンズとして王道な焦点距離50mmを実現している。
操作面ではピントピークが明確なので、マニュアルフォーカスがとっても行いやすかった。フォーカスリングは動画での使い勝手も考慮してややスローな回転角に設定されているものの、スローすぎてピントピークが見極めにくいということもなく、かなり正確なピント合わせが可能。
フォーカスリングを回すときのトルク感も重すぎず軽すぎずの絶妙なチューニングで、MFレンズならではの操作性を充分に堪能しながら撮影を行える。
鏡胴の素材はもちろん金属製で、その質感はOtusの名に恥じない「良いモノ感」に満ち満ちている。一眼レフ用Otusではラバー巻きだったフォーカスリングは、ローレット加工が施された全金属製に変更されているが、個人的には長期使用するとどうしても変質しやすいラバー素材よりも金属ローレットの方が好みなのでこの変更は嬉しい。

とっても気になる価格だが、一眼レフ用Otus 1.4/55が46万7500円だったのに対し、Otus ML 1.4/50は30万8000円(いずれもメーカー希望価格、税込)と大きく下がった。
これは安易なコストダウンが行われた訳では決してなく、コンパクト化されたことで硝材コストが下がったことと、一眼レフ用Otusの経験で得た知見により、クオリティを落とすことなく製造コストを下げるノウハウを応用したためだ。もちろん絶対的には高価なレンズではあるが、画質や鏡胴の作り込みレベルの高さを考えると納得できる値付けだと思う。
次ページシリーズ第2弾となる “85mm” の描写力も圧巻!
