オーディオテクニカ「AT-VM700xシリーズ」最速レビュー! 9年ぶりに生まれ変わったVM型カートリッジの実力は?
あらゆるニーズに応える4種のラインナップ。描き出す音の違いに注目
試聴は自宅システムで行なった。ターンテーブルはテクニクス「SP10R」、トーンアームはオーディオテクニカ「AT150」だ。フォノイコライザーアンプはアキュフェーズ「C-47」をMMポジションに設定。ヘッドシェルはオーディオテクニカ「AT-LT10」で揃えた。針圧は2gで統一。
試聴曲は、サマラ・ジョイのアルバム『ポートレイト』から<ラヴバードの蘇生>。ヒラリー・ハーンの『パリス』から<ショーソン:詩曲>の2曲。
「AT-VM740xML」はマイクロリニア・スタイラス。フラットな帯域バランスでクセがない。ヴォーカルは瑞々しさを宿しつつ、芯のある音。エネルギーバランスの重心も低く、発声が安定して聴こえる。
クラシックではコントラバスのボウイングが力強く、管と弦のハーモニーがリッチに響く。独奏ヴァイオリンの旋律には、骨格の確かさを感じる。
「AT-VM745xML」は、「AT-VM740xML」と同じマイクロリニア・スタイラスだが、ボロン・カンチレバーの組み合わせによるのだろう、トランジェントの良さが感じられる。加えて情報量が高まったことで、デリケートな情緒感がより明瞭に引き出されている印象だ。また、S/Nのアップにより、音像フォルムの隈取りがさらに克明になった。リズムセクションが繰り出すビートも躍動的だ。
ヴァイオリンは一段と細やかで、表情がより繊細かつ精巧。オーケストラのダイナミックレンジもさらに広く感じる。
「AT-VM750xSH」はシバタ針の採用。このタイプのスタイラスは70年代に設計されたものだが、その高域の抜けの良さや分解能の高さから近年見直されており、他社での再用例も多い。音場の広がりは、特に奥行き方向に広々としている印象で、<詩曲>の調べが美しく、旋律の緩急さ、ハーモニーのカラフルさがいい。サマラ・ジョイでは声の質感がよりしなやかで伸びやか。シンバルの音が煌びやかに響き、4管編成のブラスセクションの音像定位が揺るぎない。
特殊ラインコンタクト針の「AT-VM760xSL」は、これはもう圧倒的な情報量である。オーケストラの再現は精巧かつ重厚。見通しのよい音場感に、ヴァイオリンは一段と細やかで旋律のダイナミクスが際立つ。コントラバスも一層力強い。声のトーンは穏やかで、表情が多彩。色艶も申し分ない。語尾のニュアンスや発声のイントネーション、ビブラートも実に鮮明だ。
世界規模のレコード復権で、今アナログオーディオは再び活況を呈し始めている。昔聴いたレコードをまた引っ張り出してみようというシニアファンのみならず、新しいレコード愛好家も増えてきた。そうした中で、以前聴いていた時よりももっといい音で聴きたい、あるいは友達に負けない音を出したいというニーズに、「AT-VM700x」シリーズはバッチリ応えてくれることだろう。
■「AT-VM500x/600x」シリーズのレビューはこちらから
(提供:オーディオテクニカ)

