HOME > レビュー > “有線イヤホン派”のマストアイテム!スマホを高音質にするスティック型DAC 11モデル一斉試聴

小型サイズに込めた各社こだわりの技術が光る

“有線イヤホン派”のマストアイテム!スマホを高音質にするスティック型DAC 11モデル一斉試聴

公開日 2023/01/02 07:00 土方久明
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Questyle「M15」 粒立ちが明瞭で色彩の良い陽性な音



高品位な据え置き型ヘッドホンアンプも人気の中国のオーディオブランドQuestyle(クエスタイル)のスティック型DAC。筐体寸法は61.8W×27.2D×12Hmmで背面部はスケルトンになっており、内部構成やパーツが美しく配置される。

Questyle「M15」(オープン 市場実勢価格41,000円前後)

3.5mmアンバランス端子と4.4mmバランス端子を搭載する。DACチップはESS「ES9281AC」を搭載し、合計4つの電流モードアンプ “エンジン” を採用しており、駆動力と出力も強力だ。さらに独自の「TOREX 高効率電力管理」システムを搭載することで、低電力消費と低発熱も実現している。

背面はスケルトンで内部基板が見えるようになっている

3.5mmアンバランス接続で聴く「Signature STUDIO」は、音の粒立ちが明瞭で色彩の良い陽性な音。エド・シーランの口元はシャープで、低域もしっかりと出してくる。音色的な躍動感が高い。アデルのボーカルは明るく穏やかなタッチで表現する。ジョン・ウィリアムズは、しっかりとした情報量を感じるが、楽曲の抑揚への追従力が高く、まろやかな音調も合わて音楽的に楽しく聴こえる。

「HD 800S」による4.4mmバランス接続の音については、エド・シーランは一聴して高〜低音域までワイドレンジ。声を張り上げた時などのボーカルの質感表現はもう少し欲しい時もあったが、立体的な低域表現と中高域のスピード感がある音で聴き応えは良い。アデルはセンター定位するボーカルの距離感が近くはっきりとした音像を聴かせる。音の広がりとバックミュージックとのメリハリを感じる、立体的な音場が頭内定位に形成される。ジョン・ウィリアムズでは、アコースティック楽器の質感表現が若干機械的に聴こえる時もあったが、スピード感は高い。

iFi audio「GO bar」 色付けが少ない正統派のサウンド



イギリスに本拠地を構えるiFi audioは、ハイスペックな仕様と先進的な技術アプローチかつ安価なDAコンバーターやUSB/電源周りのアクセサリー類など、多くのヒット商品を輩出してきた。そんな同社が力を入れて作ったモデルが「GO bar」だ。

iFi audio「GO bar」(49,500円)

ヘッドホン出力は、3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス端子を搭載。DA変換部に16コアのXMOSマイクロコントローラーを採用し、32bit精度を実現するシーラスロジックのDACチップと組み合わせている。独自カスタマイズのデジタルフィルターにより、プリエコーやリンギングによるアーチファクトを低減し、さらに超低ジッターを実現した「GMT(Global Master Timing)高精度クロックシステム」も搭載する。加えて、低域をブーストする「XBass+」やサウンドステージをライブのような広々とした音場に変化させる「XSpace」など、iFi audioらしい音の可変機能も備わっている。ケーブルは脱着式で、レゾリューション等はLEDで表示される。

サイドにボリュームとフィルター設定ボタン、IE Matchボタンを装備

総合的な音質傾向は、色付けが少ない正統派のサウンド。抑揚への追従力やヘッドホンの駆動力も高い。「Signature STUDIO」で聴くエド・シーランは聴感上のノイズフロアが低く、エレクトリックシンセサイザーのディテールの滲みも最小限に抑えられている。音色の付加は少なめで、あくまでもソースに忠実な表現を出そうとしているのがわかる。アデルはシームレスで密度感のある中高域により、質感表現が自然でベースのリアリティも高い。

「HD 800S」で聴くエド・シーランは、ノイズフロアの低さから全帯域の透明感が強く、ボーカルの立体的な表現が印象的だ。fレンジDレンジともワイドで低域表現が誇張されておらず、低域表現が自然。アデルの口元も立体的でバックミュージックにリアルに浮かび上がる。ジョン・ウィリアムズも一聴してノイズフロアが低く、絶対的な情報量が多いのが印象的。さらにサウンドステージも広くて立体的だ。

EARMAN「COLIBRI」 壮大さや楽器の色艶も十分に表現



アジア製の製品が多いスティック型DACの世界だが、本モデルを発売するのは、アメリカのシカゴ・ウィネトカを拠点としてヨーロッパで設計製造を行うオーディオブランドEARMEN(イヤーメン)。同社といえば、フルバランス構成による品位の高い音で高評価を得ている小型のDAコンバーター「Tradutto」やDACアンプ「TR-Amp」が人気だ。

EARMEN「COLIBRI」(オープン 市場実勢価格55,000円前後)

ハチドリの名を持つCOLIBRIは、DACチップにESS社「ES9281PRO」を搭載するモデル。スティック型DACの中では珍しいバッテリー駆動を可能としているが、その目的はクリーンな電源供給を行うことにある。ヘッドホン出力は3.5mmシングルエンドおよび4.4mmバランスを搭載し、筐体はCNCマシニングによるフルアルミニウム・ブロックで作り出されており、筐体サイズは77W×36D×14Hmmでケーブルは脱着式だ。

他のスティック型DACと比べるとひとまわり大型サイズが特徴で、USB端子も充電用と音楽データ用と2系統搭載

本モデルは一聴してS/Nが高く音がリアルだ。「Signature STUDIO」で聴くエド・シーランはバスドラムの力感もあり、中高域の情報量が多くて、さらに音像定位も明瞭。ジョン・ウィリアムズのオーケストラは、フラット志向の帯域バランスにより、アコースティック楽器の質感表現も自然でサウンドステージの見通しが良い。

バランス接続となった「HD 800S」では、一聴して情報が多く、音色的な熱気も少し付加される。中高域の帯域バランスに不自然さがなく低域には力感があり、これは嬉しい。さらに全帯域の音の粒子に密度があることで、グルーヴ感や音楽性の高さも聴き取れる。エド・シーランはエレクトリックドラムが力強く聴こえ、音楽的なグルーヴも上がる。アデルのボーカルには血が通っており、さらに熱気も感じる。バランス接続の音は密度と力強さが付加されることで、ジョン・ウィリアムズなどのオーケストラとの相性が良く、若干派手に聴こえるものの、壮大さや楽器の色艶も十分に表現してくれる。

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