HOME > レビュー > “有線イヤホン派”のマストアイテム!スマホを高音質にするスティック型DAC 11モデル一斉試聴

小型サイズに込めた各社こだわりの技術が光る

“有線イヤホン派”のマストアイテム!スマホを高音質にするスティック型DAC 11モデル一斉試聴

公開日 2023/01/02 07:00 土方久明
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ASTELL&KERN「AK HC2」 キレの良い立ち上がりとソースに忠実な表現



Campfire AudioやEmpire Earsといった人気IEMブランドとのコラボするなど、積極的な展開を見せる人気のASTELL&KERNは、最近はスティック型DACの評価も上々だ。AK HC2は、2021年春に発売された前モデル「PEE51」からフィードバックされたユーザーの評価や要望を元に機能とスペックを補完したモデル。

ASTELL&KERN「AK HC2」(オープン 直販価格29,980円)

筐体サイズは60W×22.8D×12.1Hmmで重量は29g。ヘッドホン端子は4.4mmバランス出力専用でケーブルは固定式。先端形状はUSB Type-Cを採用し、Lightning変換アダプターが付属する。ボディはアルミ製で、斜めに入ったラインとケーブル先端にはさり気なくASTELL&KERNのロゴがあしらわれ、同社製品らしさが現れているのはファンには嬉しいところだろう。

ケーブル一体型で取り外しはできない。また、出力は4.4mmバランス出力のみ。USB-CとLightningを変換するアダプタが付属する

DAC回路部には、独自のリアオーディオ出力構造を採用し、ノイズの影響を抑えていたり、超小型の抵抗やテーラード超小型タンタルコンデンサーを搭載することも特徴である。ヘッドホンアンプ部は4Vrmsの高出力化、高S/N、低歪み化を達成している。Android端末で音量調整のユーザビリティを上げる専用アプリ「AK HC」も利用できる。

4.4mm出力専用ということで「HD 800S」で試聴した。一聴して情報量が多く、エド・シーランのエレクトリックバスドラムの重量感がしっかり表現できていてうれしかったが、加えて音の立ち上がりと立ち下がり表現も優れていてキレがよい。帯域バランスは高音域と低域はごくわずかにブーストしているが、音色はソースに忠実なストレートな表現。

アデルはイントロのピアノの時点で情報量が多く、細かいタッチの質感もリアルで、さらにボーカルの立体感もあり印象が良かった。ジョン・ウィリアムズは高音域から低音域まで全領域で分解能が高い。高域は若干の硬質さも残るが、聴感上のfレンジDレンジも広く、コントラバスはしっかりしたディテールを出しながらリアリティを失っていないことも印象的だった。

水月雨「MOONRIVER2」 ノイズフロアが低く透明感がある



独自のオープンタイプ・イントラコンカ型イヤホンの存在やビルドクオリティの高さが、コアなポータブルファンから高く評価される水月雨(MoonDrop/ムーンドロップ)のスティック型DAC。

水月雨「MOONRIVER2」(オープン 市場実勢価格30,000円前後)

「MOONRIVER2」の筐体は、航空機グレードのアルミニウム合金をCNC精密機械加工して成形されており、独創的かつメカ好きな男子(女子)に人気の出そうな独自デザインが興味深い。脱着式の透明な付属ケーブルにもこだわりがあり、銀メッキコア、並列配置、低インピーダンスが徹底された「ポストモダニストスチームパンク」の美学に沿って制作されたという。

DACチップはシーラスロジック社「CS43198」を2基搭載、ヘッドホン端子は3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス出力に対応している、カタログ上のS/Nは131dBと高く、数値上とはいえ高感度イヤホン使用時の期待値は高い。

背面の基板デザインは「ポストモダニストスチームパンク」風?

全体的な音の印象としてはクセのない音調と音色をベースに中高域のディテールが若干シャープに感じた。ウルトラゾーン「Signature STUDIO」で聴くエド・シーランは、一聴してノイズフロアが低く透明感があり、エレクトリックバスドラムも立体的である。アデルは高〜中音域の質感がソースに対してアキュレート。ボーカルの口元の動きもシャープに聴かせてくれる。

インピーダンス300Ωのヘッドホン対応を謳うモデルということで、「HD 800S」での聴取も楽しみにしていたが、たしかに駆動力は中々のものだった。シングルエンド接続でも聴こえたクセのないフラットな帯域バランスをベースとして全帯域のディテールの滲みも少ない。アデルのボーカルは距離感こそ若干遠くなるものの口元の動きはリアルで、ベースの重量感の表現も良質だ。ジョン・ウィリアムズは、幅広いサウンドステージとクセのない音。長時間でも安心して聴けるサウンド傾向で印象が良かった。

Cayin「RU6」 密度の濃いオンリーワンの音楽性



Cayinは1993年に創立のオーディオブランド。据え置き型の真空管アンプ「HA-1A MK2」や、KORG社のNutube真空管にロームのフラグシップDACチップを搭載したDAP「N8ii」など、独創的なオーディオ製品がコアなファンを魅了する。

Cayin「RU6」(32,890円)

RU6はそんなCayinらしいモデル。DACチップを使わない独自の「ディスクリート24-Bit R-2Rラダー型抵抗ネットワーク」を搭載して話題となっている。24bitのデコードを実現するためにチャンネルで48個、ステレオで合計96個の抵抗器が搭載される。DA変換はサンプリング周波数にネイティブな処理を行うNOS(ノン・オーバーサンプリング)モードとアップサンプリングを行うOS(オーバーサンプリング)モードという2つのモード利用できる。ハイゲインモード/ローゲインモードの切り替えも可能で、サンプリングレートやOS/NOSモードのステータス表示部も備わる。

NOSモードを中心に試聴したが、一言で表すならしっかりとした個性を持つ音だ。音楽再生に大切な中音域が充実しており、その上で低域に力感がある。聴感上、極端にワイドレンジな音ではないが、どのジャンルの楽曲を聴いても、コクと勢いを感じる面白味のある音を享受できる。

本体に小型ディスプレイがあり、ゲインの設定やフォーマットの確認もできる

3.5mmシングルエンドで聴くエド・シーランは、密度の濃いオンリーワンの音楽性で楽しめた。ボーカルの声質が柔らかく、エレクトリックバスドラムなどの低域はしっかりとした重量感で表現してくる。アデルのボーカルは血の通った表現。ピアノの左手側の和音も明瞭で、サウンドステージは中央部にエネルギーがあり、立体的なしっかりとしたステージを構成する。

「HD 800S」ではジョン・ウィリアムズを再生したが、一聴して密度が濃く低重心な音。コントラバスやグランカッサなど低音楽器に重量感がある。ステージは無理に広げていない自然な印象で、長時間の試聴でも飽きず、音楽に身を任せられる。

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