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小型サイズに込めた各社こだわりの技術が光る

“有線イヤホン派”のマストアイテム!スマホを高音質にするスティック型DAC 11モデル一斉試聴

公開日 2023/01/02 07:00 土方久明
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FiiO「KA2」 フラットを基軸として、適度な音の艶を付与



FiiOは中国の広州に本社を置く、世界最大級のポータブルオーディオ機器メーカー。「KA2」は今回試した中では最安価(実売価格)のモデル。筐体寸法は40W×15D×12Hmmで、重量は約12.3g。素材は金属製で、レゾリューションやフォーマットはLEDインジケーターランプの色で判断できる。

FiiO「KA2」(オープン 市場実勢価格 KA2 Lightning 11,550円前後・KA2 Type-C 9,900円前後/以下税込)

シーラスロジックのアンプ統合型DACチップ「CS43131」をデュアル構成で搭載し、ヘッドホン端子は4.4mmのバランスタイプのみでケーブルは固定式。USB Type-C端子対応とLightning端子対応の2モデルをラインナップする。Android端末に使用できるアプリ「FiiO Controlアプリ」が用意されており、音色や音調を可変できるフィルターやゲインのHigh/Low切替え、チャンネルバランス調整が設定できる。

ケーブルは一体型となっており取り外しはできない。LightningとUSB-Cタイプと別々にラインナップしている。また出力端子は4.4mmバランスのみ

4.4mmバランス出力専用かつ推奨インピーダンスが16〜300Ωということで、価格的にはアンバランスだが、「HD 800S」と組み合わせる。まずは総合的な音の印象から。帯域バランスはフラットを基軸として、適度な音の艶が付与されている。極端に派手な音にしていないところは好印象。中高域は厳密に聴けば据え置き型機と比べてフォーカスが甘いところもあるが、ヘッドホンアンプ部の駆動力は数値以上に感じ音量も稼げた。低域表現は完全にグリップしているとはいえないが大きく破綻することもない。

エド・シーランはウォームで色艶が良い音で、強力なエレクリックドラムの表現も頑張っている。アデルはイントロのピアノの色艶が良く、ベースの重量感や低域のレンジの広さもなかなか。ジョン・ウィリアムズは、絶対的な情報量こそ上の価格帯のモデルに譲るものの、高域から低域までのfレンジやダイナミックレンジも広く、価格を考えるとかなりコストパフォーマンスが高い印象を持った。

SHANLING 「UA3」 バランス接続では全帯域のディテール表現がリアルに



SHANLING(シャンリン)は1988年に設立された中国の老舗オーディオメーカー。筐体寸法は60W×25D×13Hmmで重量は20.5g。ケーブルは交換式を採用し、本体にはボリュームコントロールボタンが搭載されている。レゾリューションやフォーマットはLEDインジケーターランプの色で判断するタイプ。

SHANLING「UA3」(オープン 直販価格15,620円)

AKMの最新DACチップ 「AK4493SEQ」を搭載し高精度なクロックと組み合わせている。ヘッドホンアンプ部のオペアンプはRicore社の「RT6863」 を2基搭載し、高品質なLDOレギュレータを採用した回路設計により低ノイズ化を実現した。3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス出力に対応している。Androidアプリ「Eddict player」は、デジタルフィルターや本体のボタン設定をカスタマイズできる。

「UA3」にはUSB-CケーブルとC→Aへの変換コネクタが付属。Lightningケーブルは別売で対応

「Signature STUDIO」を使用した3.5mm接続の音だが、総合的に音色に色艶があり、躍動的な音調を持つ。一言で言うなら楽しい音だ。エド・シーランは柔らかいフォーカスで聴き心地の良い音。エレクトリックシンセサイザーの音にもう少しエッジが立って聴こえればベストだが、その分長時間の試聴には向いている印象。アデルは声質に色気も感じボーカル表現が情緒的に聴こえる。低域はしっかりと重量感を表現するタイプで、弾力的なエレクトリックバスドラも印象的。ジョン・ウィリアムズは抑揚表現への追従力も良く、打楽器のアタック感も感じるなど、迫力ある楽曲の旨味を引き出す相性の良さを感じた。

なお個人的には、バランス接続の音の良さが印象的だった。聴感上のS/Nも良く、全帯域のディテールが表現もリアルになる。エド・シーランはソースに対してより忠実な表現となり、ボーカルの距離感が近くなり明瞭な音場を構築する。ベースは最低域のレンジこそ伸びていないものの立体的。アデルのピアノもディテールが明瞭になり、ベースの骨格もしっかりしてくる。楽器とボーカルの描き分けなどステージ構成の再現性も向上した。ジョン・ウィリアムズは、絶対的な音のにじみが減少するので楽器の数が増えたように聴こえるのが嬉しい。サウンドステージも立体的だ。

iBasso Audio「DC06」  シャープな中高域と立体的な低域が魅力



iBasso Audioは、古くからハイレゾ対応のDAPなどをラインナップしていた中国の人気メーカー。「DC06」 の本体寸法は50W×23Dmmで重量は23g、ヘッドホン端子は3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス出力に対応している。ケーブルは脱着式を採用している。

iBasso audio「DC6」(オープン 直販価格15,950円)

レゾリューションやフォーマットなどは、LEDインジケーターランプの色で判断する方式。ESS Technology社の新世代DACチップ「ES9219C」を2基搭載する「Dual DAC アーキテクチャ」により、高出力と低ノイズフロアを両立している。デジタル系回路にはNDK社製フェムトクロック水晶発振器を採用し、さらにアンプセクション用に独立した電源供給を行う回路を搭載したことで、ヘッドホンアンプの駆動力も高めており、バランス出力の利用時には320mW(32Ω負荷時)を達成している。Android端末で音量調整のユーザビリティを上げる専用アプリ「UAC2.0ボリュームコントローラー」も用意されている。

台形で、指で持ちやすい少し反ったデザインが特徴。3.5mmと4.4mmの両方の出力を持つ

3.5mシングルエンド接続の音はウルトラゾーン「Signature STUDIO」で確認した。全体の音の印象として一聴してノイズフロアが低く、高〜中音域は若干シャープな音調で、低域も立体的に仕上げている。

エド・シーランはバスドラムを始めとしてエレクトリックシンセサイザーの音の立ち上がりが良く、ボーカルの滲みも少ない。アデルのピアノは若干硬質だが、その分センター定位するボーカルの音像はシャープだ。47秒付近から聴こえるベースは最低域のレンジこそ無理に伸ばしていないものの、リアルな質感を持つ。高〜中音域の質感がシャープな分、ジョン・ウィリアムズでは、金管楽器などの質感が若干機械的にも感じるが、解像感は高い。レンジは欲張らずスピード感のある低域表現も魅力。

4.4mmバランス接続における「HD 800S」の音は、まず聴感上の解像感が高い。音のディテールも明瞭で、高域から低域までの各帯域の分解能と低域の立体感も良好。アデルは分解能が上がり、ボーカルのにじみも減少しており、スムーズでバランスの良い音に聴こえる。ジョン・ウィリアムズはサウンドステージの見通しが上がり、バランス接続の音の良さが印象的だった。

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