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【特別企画】アップグレードによる音質変化をチェック

普遍的なアナログの魅力を引き出すLINNの「LP12」。エントリー「MAJIK LP12」のスタンダード3モデルを聴く

2022/10/04 生形三郎
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MCカートリッジ「KOIL」にアップグレード。精悍なオーケストラが再現される



次に、最新のMCカートリッジ「KOIL」を搭載するセット「MAJIK LP12 MC」を試聴した。こちらはカートリッジ以外は「MAJIK LP12 MM」と全て同じ構成となる。

MCカートリッジ「KOIL」

グールドの再生では、それぞれの音階を奏でる弦のひとつひとつがより鮮明な姿で現れるとともに、一音一音が力強くありながらスッキリとした音切れである。それによって、楽器との遠近感もより明瞭な距離感が表現されている。実に秀逸な表現力だ。

仕上げは写真のローズナットのほか、ブラック・チェリー・ウォルナット・オークの5種類を用意

チック・コリア&ゲイリー・バートンも、やはり左右へと飛び交うヴィブラフォンの定位の移動がより鮮明で、なおかつ、ピアノの低弦和音は一つ一つの構成音が明瞭で芯のある表現だ。このソースは、ともすれば鋭角的なサウンドになりやすいものだが、強烈なヴィブラフォンのアタックも、厚みや密度があり尖りがなく快い。

オーケストラは、楽団の持つ勢いのあるタフな出音がよく再現されている。細部の表現も饒舌になり、音域や音量の表現幅も、いっそう拡大されている印象だ。弦楽器のボウイングの力感や、それが一糸乱れずコントロールされた、精悍なオーケストラの姿が再現される。背景の静けさもより引き締まって、緻密さや緊張感も十二分に再現されていることに感心した。

電源の強化により静けさが圧倒的に向上。主題の変奏構造が浮かび上がる



最後は、ベースボードに「TRAMPOLIN」が採用され足元もグレードアップするとともに、電源部も最新の第4世代となる電源「LINGO 4」で強化された「MAJIK LP12 SE」 を試聴した。こちらは33回転とともに45回転にも対応する。

アップグレードパーツの底板「TRAMPOLIN」。素材はアルミで、4本の脚は高さ調節も可能となっている

「TRAMPOLIN」の脚元。凸凹した形状で、サスペンション機能を備える

LINGO 4はデジタル制御のモーターシステムで、モーターのコントロール手法に大きなブレイクスルーを見出したもの。デジタルでのサイン波生成やオーディオグレードのサイン波変換用DACの内蔵、そして、省電力化によってノイズ干渉を大幅に抑制することに成功したものだという。カートリッジには、先述の「KOIL」が装備されている。

専用電源ユニット「LINGO 4」。LINN初のDCモーター駆動となっている

33回転と45回転は電源スイッチで切り替え可能

こちらのセットでは、電源及び省電力モーターやサスペンション機能を持つ脚部の恩恵か、全般的な静けさが圧倒的に向上する。グールドは奥行きがより深くなって主題の変奏構造が瞭然と浮かび上がってきた。タッチの強弱だけでなく、指が離れる際の余韻の微細の変化やその収束などが詳細に伝わる。カートリッジが持っている丹念な描写力が、さらに引き出されている印象だ。

同じように、チック・コリア&ゲイリー・バートンは、ピアノの音に厚みや深みが増すとともに、左右を駆け巡るヴィブラフォンもただ飛び交うのではなく、その移動の距離感や位置などがわかるようなディティール表現に驚かされた。鋭い印象は一切なく、むしろ穏やかな質感を感じ、まさに上質な音楽鑑賞を堪能させてくれる。脚部や電源部の恩恵がはっきりと音質に現れているのだ。

オーケストラでも、ブレスや休符の静けさなど音楽の「タメ」の表現が迫真で、楽器の質感、例えばティンパニのヘッドの質感など、細部の情報量も多い。レッド・ホット・チリ・ペッパーズも、音に落ち着きがもたらされ、冷静かつ客観的に音楽を俯瞰させる。低域表現も解像力が増し、ピッキングの様子がリアリティ高く伝わってきた。

以上のように「MAJIK LP12」 は、オーディオ再生において理想的な形で音楽を堪能させてくれるプレーヤーだということを深く体感できた。誕生当初より貫かれるアップグレーダブルな機能性やシンプルで均整の取れた美しいキャビネットとともに、多くの音楽ファン、オーディオファンを魅了する、普遍的かつ高度なポテンシャルを備えたプロダクトである。

(提供:リンジャパン)

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