【特別企画】最小限のスピーカーで最高級の音質を

“映画館を凌駕する”超ハイグレードなホームシアター。オール LINNで実現する最先端システムを体験

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土方久明
2021年12月28日
2021年晩秋のこと、僕の家にたくさんの荷物が運ばれてきた。“オールリンのホームシアターシステム”を構成するための機材。なんとその総額は1500万円にも及ぶ。そう、今回は、LINNのKLIMAX DSMとEXAKTシステムを使った、超ハイグレードなオーディオビジュアル環境を自宅に構築してみたのだ。

今回は、リンだからこそ実現できる最新鋭技術へのこだわり、またセッティングのポイントから実際の音質クオリティまで、詳細にレポートしていきたい。結論から先に言うと、「自宅に居ながらにして、映画館すら凌駕するほどのホームシアターを構築できるのか…!」と、僕はひたすらに感激してしまった。その圧倒的な音質、そしてその感動をお伝えしていこうと思う。

オーディオ周辺システムだけで総額1,500万を超える超・ハイエンドホームシアターを自宅でテスト!

■HDMI端子を搭載するリン「DSMシリーズ」を中核にシステムを構成

LINNは僕の歳とほぼ同じ1972年に産声を上げたスコットランドの総合オーディオメーカー。現在もアップグレードを繰り返す至宝のアナログプレーヤー「LP12」、そして2007年の発売以降、ネットワーク再生の世界を切り開いてきた「DSシリーズ」など、オーディオの歴史に残るさまざまな銘機を開発してきた。

最近の同社のメインストリームとなっているDSMシリーズでは、プレーヤー+アンプ機能に加え、HDMI端子を搭載していることが特徴だ。現在発売される多くの映像機器、たとえばブルーレイプレーヤー/レコーダー、ゲーム機、そしてApple TVやFire TV Stick 4Kなどのキャストデバイスは、HDMI端子を搭載している。つまり、DSMシリーズとそれらの機材をHDMIケーブルで繋げることで、これらのデバイスからの音声を超高品位に再生できる。つまりDSMシリーズは、ステレオ再生のみならず、高品位なビジュアル再生環境の構築にも活用できるというわけだ。

最新の「KLIMAX DSM/3」を含むDSMシリーズのほとんどはHDMI端子を搭載しており、オーディオビジュアルユースとしても活用できる

さらに注目したいのは、2019年に、DSMにアップグレードで追加できる「サラウンド・プロセッシング・モジュール」が登場し、サラウンドフォーマットのデコーディングが可能になったこと。これにより、Dobly True HDやDTS-HDマスターオーディオ等によるサラウンド再生も実現できるようになったのだ。

2019年に発売となった「サラウンド・プロセッシング・モジュール」。DSMシリーズに組み込むことで、多彩なマルチチャンネル出力が実現できる。(オプション価格:220,000円/税込)

■LINN独自のデジタル伝送テクノロジーで高品質を実現

一般的にサラウンド環境の構築といえば、AVアンプを連想する方は多いだろう。しかしLINNのサラウンドシステムは次世代サラウンドとも呼んでいいほどの先進的な内容を誇る。そのキーとなるHDMI関連技術は3つある。

1つ目は、「2 Stage Clock Recovery System」というテクノロジー。HDMIでは、映像のクロックを使って映像と音声が同時に伝送される。つまり優先されるのは映像信号だ。そこでDSMでは、入力された信号を初めに映像と音声に分割して、音声信号に対しては、DSM内で専用クロックによってリクロックして整える技術を搭載している。

2つ目は「Low Voltage Differential Signaling」というDSM内部での信号伝送技術。名前の通り、「Low Voltage=低電圧、Differential Signaling=差動伝送」を行うことで、機器内部でのノイズ干渉を防止するというもの。

3点目はDSMのHDMI基板に実装される、FPGAを使った高品位なサラウンド処理技術だ。サラウンドの質に直結するダウンミックスのクオリティを、FPGAを利用したLINNオリジナルのアルゴリズムで構築しているのだ。

■スピーカーまでデジタル伝送するEXAKTはサラウンドとの相性も良好

さらに、これに加えて、LINNが持つ伝家の宝刀「EXAKT(イグザクト)」を利用したサラウンドスピーカーへの伝送についても触れておきたい。EXAKTは、オーディオの伝送にブレイクスルーをもたらしたLINN独自のテクノロジーで、ヘッドユニット(この場合はDSM)からスピーカーまでをロスレスのデジタル信号(LANケーブル)で結ぶもの。そのため、一般的なスピーカーケーブルによるアナログ接続では避けられなかった信号劣化やノイズの問題が起きないようになっている。

EXAKTシステムは、ヘッドユニットからスピーカーまでをすべてデジタル伝送することで、アナログ領域での音質劣化を防ぐことができる技術となっている

さらにスピーカーに入力されたデジタル信号は、EXAKTデジタルクロスオーバーにおける高精度帯域分割及びスピーカーユニットの固有偏差補正を経ることで、スピーカー内で起こってしまう振幅及び位相歪みとは無縁の状態で処理される。その後、各帯域用に独立搭載されたDACそしてパワーアンプがドライブユニットを駆動する。

つまるところ、EXAKTサラウンドを活用することで、デジタルドメインを利用した超高精度な音声処理技術に加えて、長尺のスピーカーケーブルによるシグナルロスがなく、シンプルな機材構成が可能になる。さらに各スピーカーのタイムアライメント(スピーカーの距離補正)も取れるなど、複数のスピーカーをセットするサラウンドシステムとたいへん相性が良いのである。

実際の運用についても柔軟性が高い。DSMとEXAKTによる本システムでは、最大8chのサラウンド音声を各チャンネルにアサインできる。例として4ch(フロント2ch、サラウンド2ch)のEXAKTサラウンドシステムを実現する2つのシステム構成プランを表記したい。

プランA 手持ちの2chスピーカーを活用したい場合
(1)「サラウンド・プロセッシング・モジュール」が組み込まれたDSMヘッドユニット
(2)(現在使用中の)2chのパッシブスピーカーとアンプ
(3)サラウンドチャンネル分のEXAKTスピーカー

プランB オールEXAKTシステムで構築したい場合
(1)「サラウンド・プロセッシング・モジュール」が組み込まれたDSMヘッドユニット
(2)メインスピーカーおよびサラウンド用のEXAKTスピーカー

プランAの方式のメリットは、現在使用中のスピーカーを核として、リアスピーカーを追加するだけでサラウンドシステムが構築できること。Bの方式のメリットは、サブウーファーを除く全てのスピーカーをEXAKTスピーカーで構築することで、一からシステムを構築する場合や、音色を統一したサラウンド音質を得たい場合に選択できる。

■フロントはパッシブのステレオスピーカーを、リア側はEXAKTスピーカーで構築

それではいよいよ、実際に試聴に入ろう。今回自宅に運び込まれたのは、プランAを想定した4.0チャンネルの本格オーディオビジュアルシステムである。

センターもサブウーファーもない、4.0chの本格システムを構築!

核となるヘッドユニットには、先だって発売された「KLIMAX DSM/3」を投入。DSMのライン出力(プリアウト)から、フロントの2ch分を出力して、モノラルパワーアンプの「KLIMAX SOLO」2台に入力し、LINNの最上位パッシブスピーカー「KLIMAX 350 Passive」をフロント用として駆動する。

ヘッドユニット(ここではプレイヤー+プリ部を担う)には最新フラグシップ「KLIMAX DSM/3」を使用。パワーアンプは「KLIMAX solo」2台で駆動

サラウンド用の信号は、KLIMAX DSM/3のEXAKT LINKから出力して、LANケーブル経由で2本のEXAKTスピーカー「Series 520」を駆動した。

スピーカーにはパッシブタイプのフラグシップ「KLIMAX 350」(ペア税込5,060,000円)を組み合わせ

リアスピーカーにはEXAKTスピーカー「520」(ペア税込/1,595,000円)。LANケーブルと電源ケーブルのみで接続完了

このような4.0ch構成であれば、機材構成と接続は驚くほどシンプルだ。これこそEXAKTサラウンドの大きなアドバンテージである。このシステムでは、フロントチャンネルは新型KLIMAX DSMのメインデジタル基板を活用するため、最新のDACアーキテクチャ「Organik DAC」を利用できる。これも最大の音質的アドバンテージである。

なお、今までの説明はHDMI搭載機器からのPCM出力を前提としており、「サラウンド・プロセッシング・モジュール」の追加装着が必要だったが、OPPOのブルーレイプレーヤーやApple TV 4K端末など「マルチチャンネルPCM出力」が利用できるプレーヤーであれば、このモジュールがなくてもサラウンド再生が可能だ。しかし、「サラウンド・プロセッシング・モジュール」を利用した方が、プレーヤー側でデコーディングするより圧倒的に音質が良い。実際、すでにサラウンドシステムを構築された方の多くがこのモジュールも導入しているとのことだ。

今回はソース機器にApple TV 4K端末とパナソニックのUHD BDプレーヤー「DMP-BD90」を使い、Apple TVによるストリーミングサービスとUHD BDディスクの再生を行った。プロジェクターはJVC「DLA-V5」、スクリーンはオーエス「ピュアマット III Cinema」(120インチ/16:9)を用いる。

1つ重要な点として、接続完了後には、さらに「スペース・オプティマイゼーション」を適応させる必要がある。パソコンにインストールしたLINNの設定ソフトウェア「Konfig」を立ち上げ、使用している2種類のスピーカーを登録し、部屋のサイズ、スピーカーの位置/リスニングポイントなど合計11箇所の距離を測定。合わせて壁の構造体を設定画面に入力する。入力されたデータは、インターネット経由でLINNのサーバーに送られ、最大ピーク値や周波数の分布を算出する。

スペース・オプティマイゼーションの設定画面。部屋のサイズや壁の素材などを入力し、部屋の環境に合わせたベストな再生を実現できる

スペース・オプティマイゼーションは2013年の登場以来バージョンアップを繰り返し、2019年に登場した第2世代システムでは、設定項目の追加、サーバーサイドでの高速化かつ大容量の演算など大幅な精度向上を実現させていることに注目したい。

スピーカーと壁の正確な距離を計測

アプリケーション上に測定した数字を入力することでさらに正確なルーム補正が可能に

■画面と音声が完全に融合し、いままで感じたことのない没入感を体験

まずは僕がEXAKTサラウンドに感じた全体的な印象から話したいのだが、これこそ本文冒頭で書いた、「こんなホームシアター環境が自宅に構築できるのか!」というほどの衝撃を受けたのである。

リンのサラウンドシステムの圧倒的な臨場感に感激する土方氏

今までも自宅環境では様々なサラウンド機材を取材してきたが、情報量、全帯域の明瞭度、音のつながりなどサラウンドの音質を決める項目で、LINNのサラウンドは圧倒的な再生品質であった。4.0chなのでセンタースピーカーがない状態だが、画面中央の音の情報量が多く、画面と音声が完全に融合する。スピーカーの存在が消え、自分自身の周りを音が取り囲む。今まで感じたことのないほどの没入感があるサラウンドだった。

『アリータ:バトル・エンジェル』では、チャプター7のスタジアムでのモーターボールのシーンを視聴したが、今まで自宅では聴けなかった、圧倒的な情報量に驚いた。無数にいる観衆の声援、出場者がぶつかり合う金属の音、爆発音、全ての分解能があまりにもリアルだ。

『フォードvsフェラーリ』では、チャプター1のレースシーンを視聴した。ここでも絶対的な情報量の多い音に感銘を受ける。レースカーのオンボードシーンでは、エンジンノイズだけを取ってもここまでの情報量で聴けたのは初。タペットノイズ、シフトチェンジの音も、まさにそのもの。しかもフロントスピーカーからリアスピーカーへの前後のつながりも素晴らしくシームレスだ。部屋全体が揺れるほど強力かつリアルな低域表現も印象的で、チャプター21のテスト走行から爆発炎上のシーンでは、サブウーファーがいらないと言えるほどの迫力ある爆発音だった。この低域表現は、スペース・オプティマイゼーションの効果が如実に現れている。

次にUHD BDから『TENET(テネット)』のチャプター1を再生した。一聴してfレンジ、Dレンジともワイドレンジで、爆発音やドアを蹴破る音の迫力が違う。発砲音やガラスの破壊音など音の立ちがりが優れ、ガスマスク越しの少しこもった声質もリアルに表現している。聴感上のS/Nが高く、緊張感のあるシーンでの静寂感も高い。まさに家が映画館になった。いや、音のリアリティやサラウンド品質でいえば、映画館のクオリティを大きく超えているといっても言い過ぎではない。

また、KLIMAX DSM/3に備わるピンボタンにソース入力を割り振ることができるのは、使い勝手の面でも非常に嬉しい。今回はApple TV 4K端末はピン1に、UHD BDプレーヤーはピン2に割り振ることで、スムーズなソースの切り替えを実現することができた。

■最小限のスピーカーで最高品質のオーディオビジュアル環境を

現在のところ、Dolby AtmosやDTS-Xなどのイマーシブサラウンドには対応していないが、同方式の場合、天井にスピーカーを取り付けなくてはいけないなど、そもそも導入障壁が高い。それであれば、今回のような高品位な4ch環境の構築は大いにありだ。

LINNのEXAKTサラウンドのクオリティは、まさに圧巻。それに、一般的なサラウンド・システムのようにアナログドメインでのケーブルの引き回しを必要とせず、デジタル/ロスレス伝送が可能なEXAKTシステムの恩恵を受けられることは大きい。

もちろん、このシステムの総額は、自宅環境においそれとは導入できない価格だろう。だが、その対価を払ったユーザーは、素晴らしく圧倒的なサラウンド品質を手に入れることができるのだ。

photo by 君嶋寛慶
(提供:リンジャパン)

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