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名作イヤホンをワイヤレスで復刻、フィリップス「SHE9700BT」は一聴の価値あり

2021/12/01 海上 忍
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昨今のイヤホン市場はワイヤレスがトレンドだが、往年の銘機に根強い人気があるのも確か。では流行りに乗って人気モデルをワイヤレス化すればいい、という簡単な話ではなく、そこには越えなければならない多くのハードルがある。愛されるモデルだからこそ難しい、そんな復刻に挑んだのがPHILIPS(フィリップス)「SHE9700BT」だ。その開発秘話とサウンドをお伝えしたい。

「SHE9700BT」

簡単ではない銘機の“復刻”にあえて取り組んだチャレンジングなモデル

「復刻版」といえば過去のプロダクトを再現した製品を指す言葉であり、書籍やジーンズなどの衣類を例としてあげることができるが、エレクトロニクス製品の場合事情は複雑だ。コンデンサーやICなどの部品類は数年で生産終了になることが常、旧製品とまったく同じものを揃えるのは難しい。いきおい外観や製品全体のテイストを再現することに主眼を置くようになり、そうなるともはや復刻版とはいえない。

オーディオ機器のように官能評価が身上のデバイスの場合、技術的に進歩したからといって “昔の味” を復元できるとは限らない、というより困難を極めると言うべきだろう。見た目こそ往年の名機を彷彿とさせるかもしれないが、中身は別モノ、出てくる音も似て非なるものと考えるのが自然だ。

このようによく考えると難しいオーディオ機器の復刻だが、果敢にチャレンジした猛者がいる。その名はPHILIPS、対象はカナル型イヤホン「SHE9700」。現在PHILIPSブランドを取り扱うTP Visionが企画・開発し、「SHE9700BT」というワイヤレス/Bluetoothイヤホンとして蘇らせた。

パッケージの意匠からして、「SHE9700」当時のものを取り入れるというこだわりが見て取れる

SHE9700BTを語る前に、ルーツのSHE9700についてかんたんに解説しておこう。SHE9700は2007年発売(日本での正式発売は2009年)の有線/カナル型イヤホンで、8.6mm径ダイナミックドライバーを搭載。人間工学に基づき音が正確に鼓膜へ届くよう設計された「角度付きアコースティックパイプ」、エアベントで低域の量感を高める「ターボバス孔」などの特徴により、3千円という価格帯ながら低域と中高域のバランスに優れたサウンドを実現、一躍人気となったいまや語り草のモデルだ。

その完成度の高さは、ケーブル周りを改良した「SHE9710」、若干デザインを変更した「SHE9720」、ハイレゾ対応をうたった「SHE9730」というシリーズモデルの存在からも窺える。ターボバス孔やハウジングデザインなど基本設計はほぼ共通、8.6mmというドライバー径にも変更はなく(SHE9730ではダイアフラム素材が変更されている)、変える必要がなかったから変えなかったことがわかる。

だからこそ、SHE9700をBluetoothで再現することの難しさがわかる。音声伝達経路がワイヤードからワイヤレスに変わることが、どれほど音質に影響を与えるか。根本の技術が入れ替わるのだから、常識で考えれば別モノになるはずだ。さらにはハイコストパフォーマンスという要素をどうするか。価格レンジが大きく変わってしまえば、それはもうSHE9700の復刻とはいえない。

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