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『TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING』体感レポート

山下達郎が「MUSIC/SLASH」で行った高音質ライブ配信を、本気のオーディオで聴いてみた

公開日 2020/08/19 06:30 岩井 喬
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この日のために用意された新規ミックスに感動!

さて、『拾得』でのパフォーマンスに続いては、『氣志團万博』でのステージだ。会場は氣志團の地元・千葉の袖ケ浦海浜公園。サウンド面で納得できる音が得られる中規模ホールでのライブが中心の山下達郎として、これほど大きな会場でのライブは希少であり、その出演シーンがノーカット配信されるという点でも今回の目玉となるコンテンツといえるだろう。

『拾得』ライブでも登場したキーボードの難波弘之、ベースの伊藤広規を含め、山下達郎のライブではおなじみの面々が集結したバンドも豪華だ。

近藤真彦に提供した「ハイティーン・ブギ」のセルフカバーからパフォーマンスはスタート。会場の熱気は続く「SPARKLE」「BOMBER」にかけて高まり、Kinki-Kidsに提供した「硝子の少年」のセルフカバー、竹内まりやがコーラスとして登場する「アトムの子」で頂点に達する。

2017年『氣志團万博』(千葉県・袖ケ浦海浜公園)でのパフォーマンス。イヤモニなしでステージを練り歩き、ギターを鳴らす山下達郎。 Photo by 菊地英二

『拾得』のライブとはボーカルマイクも変わっているが、山下達郎の声の落ち着き感や高域にかけてのハリの鮮やかさ、なめらかさはしっかりと感じられ、このライブストリーミングのために新たにミックスをおこなった効果を実感できる。ベースのリッチさはより高まり、ドラムのアタックや胴鳴りの深さがリズム隊の安定感をさらに下支えしている。ホーンセクションの旋律も飽和することなく、ひとつのパートまで見通しよく表現される。

「BOMBER」ではチョッパーベースの跳ね感やフェンダー・ローズの透明感も埋没することなくクリアに引き立たせ、楽器の質感、厚みも丁寧に引き出していた。「硝子の少年」や「アトムの子」のドラムは密度の高さとキレのよさを特に実感でき、タムまわしの爽快さも耳に残る。ボーカルは一貫してヌケよくスカッとした音離れのいい描写で、ただハリの細さを際立たせるのではなく、ボトムの厚みをしっかりと持たせた安定感のあるナチュラルな描写としている点も印象に残った。

『氣志團万博』はノーカットで配信。今回のために新たにミックスされたライブはまさに圧巻!

そして『氣志團万博』のパフォーマンスはアン・ルイスに提供した「恋のブギ・ウギ・トレイン」のセルフカバー、雨が降りしきる会場に感動的に響き渡る「さよなら夏の日」と続き、幕を下ろした。

時間的にこの辺りでライブストリーミングも終わりかな…と感じたが、まるでアンコールに応えるかのように、さらに驚きのパフォーマンスが始まった。

1986年のライブツアー『PERFORMANCE ‘86』より、郡山市民文化センターでの公演から、一人多重コーラスによるカバー曲「SO MUCH IN LOVE」、そして同年の中野サンプラザ公演から山下達郎がプロデュースした「プラスティック・ラブ」の2曲である。

30年以上前である映像の鮮明さにも驚いたが、多くのストリーミング鑑賞者の印象に残ったのはサウンドの純度、鮮度の高さであろう。この点も新規ミックスの効果があると考えられるが、ボーカルのクリアさ、艶あるディテールのハリ感、そして音伸びのよさは、『拾得』や『氣志團万博』のパフォーマンスから地続きのものであり、むしろ若々しい86年当時の声と遜色ない『拾得』や『氣志團万博』でのボーカルの音質のよさにも改めて驚いた。リズム隊の深くグリップよいアタック感も躍動感に溢れ、ギターサウンドの粘りやエッジの際立ちも実に現代的な響きである。

最後のクレジットによれば、今回のライブストリーミング用のミックスは山下達郎作品とも縁が深い中村辰也、マスタリングは菊地 功が担当していたとのこと。3つの違う時間、場所、機材でのライブ内容を一つの作品のごとくまとめ上げたお2人の活躍も実に素晴らしいものであった。

今回のライブストリーミングを実現させたすべての関係者に感謝!

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