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『TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING』体感レポート

山下達郎が「MUSIC/SLASH」で行った高音質ライブ配信を、本気のオーディオで聴いてみた

公開日 2020/08/19 06:30 岩井 喬
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いよいよライブストリーミング開始! まずは『拾得』ライブから

さて、これら各機材のセッティングも終わり、準備万端。20時の配信開始を待っていたが、実際のライブのように開演に際しての注意アナウンス、開演ベルも再現される芸の細かさに、生ライブのような高揚感が沸き起こってきた。

2018年3月京都の老舗ライヴハウス、拾得(じっとく)でのライブより。Photo by 田志野

いよいよ配信がスタート。まずは『拾得』でのアコースティックライブからである。ステージには山下達郎、キーボードの難波弘之、ベースの伊藤広規が登場。1曲目は「ターナーの汽罐車」だ。

山下達郎自らが奏でるアコギはローエンドから太くどっしりと安定し、爽やかに浮き立つボーカルをバランスよく支えている。声の質感そのものもハリよく鮮やかなタッチでまとめられ、圧縮音源特有の高域の荒々しさやボトムの薄さが感じられない! ベースのゆったりとした伸びのよさ、エレキピアノ「フェンダー・ローズ」の澄んだアタックと厚みのあるリリースもいい。

そしてライブは「あまく危険な香り」「砂の女」「希望という名の光」と続き、カバー曲である「SINCE I FEEL FOR YOU」「WHAT’S GOING ON」まで一気に駆け抜ける。ボーカルは一貫して分離よく透明感のある描写で、リヴァーブの伸びには豊かな階調感もある。ギターの弦のアタックも倍音の煌めきをナチュラルに捉えていて、想像以上に素晴らしいサウンドに驚かされた。

ちなみに、ここまでのクオリティチェックは基本的に、映像はFMV LIFEBOOK AH-X/D3とHDMI接続した55X9400、サウンドはUSB接続したNu1と試聴室に鎮座するアキュフェーズとB&Wの組み合わせをリファレンス環境としておこなったものだ。高品位な音声で配信されているから、自然とグレードの高いオーディオシステムが欲しくなってしまう。

ライブ中、機材を切り替えながら画質と音質のチェックをしたが、FMV LIFEBOOK AH-X/D3単体の場合は動画の動きも安定し、発色のよさ、暗部のコントラスト感も有機ELらしいメリハリの効いた表現を楽しめるし画質は申し分ない。内蔵スピーカーもボーカルやギターの粒立ちを鮮やかに引き立ててくれる。これでも十分だが、音質については、低域の存在感はPCサイズの域を出ない。リズムのアタックや密度感は感じられるものの、なんらかの外部スピーカーを追加したくなる。

続いてAmazon Fire TV Stick 4Kと55X9400の組み合わせは、映像面においては配信素材ながら粗さを抑えた落ち着きのいいトーンでまとめられており、発色も自然でアットホーム。ライブ会場の温かみが強調されるような印象だった。しかし大きく引き伸ばされる分、圧縮によるバンディングノイズや輪郭表現の甘さも目立ってくる。

音質面については55X9400内蔵のパワフルなアンプ&スピーカー構成により、リッチでズシンとした低域の押し出しのよさが印象的だ。ボーカルは爽やかな質感である一方、浮き上がり感は控えめで、低域表現のバランスの方が勝るような感触だった。

そしてFMV LIFEBOOK AH-X/D3を軸に、映像はHDMI接続した55X9400、音声はUSB接続したNu1から試聴室のシステムへ繋ぐリファレンス環境だが、映像はFMV LIFEBOOK AH-X/D3に表示されているものがそのまま55X9400に映し出される形になる。

PCブラウザ経由で視聴する場合は全画面表示が出来ない仕様のため、没入感はFire TV Stickなどの方が高いが、一方で引き延ばしによる細部のじりつきが気にならないメリットも

ブラウザ経由で視聴するMUSIC/SLASHの仕様上、全画面表示ができず、PC上の表示も映り込んでしまうので、大画面になるメリットはあるものの、没入感はAmazon Fire TV Stick 4Kの方が高い。一方、全画面にならないからこそ、圧縮系のノイズ感が引き延ばされず、細部のじりつきが気にならないメリットもある。

とはいえ、音質面は用意した環境の中では文句なく最高で、配信素材であることを全く感じさせないほどダイナミックで、細部の見通しもいい、クリアなサウンドが楽しめた。ちなみにNu1に搭載されたNutube HDFCは3段階の切り替えが可能で、Nutube HDFCを使用しない状態でも落ち着いたバランスのいい音色であったが、音場としてはやや平坦な印象を受けた。

Nutube HDFCを1段階入れると各音像の輪郭がはっきりするようになり、全体的にスッキリとして透明度が向上。3段階までいくと輪郭がかなり強調され、硬質で押し出しも強く脚色が増す。2段階目はほどよい輪郭強調と分離感が出て、ステージの前後感も見やすくなる。もし今後、MUSIC/SLASHを試聴される方には、ぜひオススメしたい使いこなしだ。

「Nu1」のNutube倍音検出帰還回路「Nutube HDFC」をオンにすることで、輪郭のハッキリした透明感高いサウンドを楽しめた

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