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【特別企画】表現力の度合いは全くもって別物

「WE-407/23」から「WE-4700」へ - 約35年越しのサエク・トーンアームの進化をディープに聴き分ける

2020/04/01 生形 三郎
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35年振りにトーンアームの世界に復帰したサエクブランド。1980年に発売されたお馴染みの銘機「WE-407/23」を最新の技術でもって進化と共に現代に甦らせた「WE-4700」は、昨年の発表と同時に大きな注目を集めている。

「WE-4700」(¥1,190,000/税抜)

その詳細は既にPHILE WEBでも度々取り上げているが、ここでは、高性能なアームの魅力を引き出す光電型カートリッジ、およびMC型カートリッジとバランス接続対応のフォノイコライザーアンプというこれまでにない組み合わせを用いて、改めてWE-4700とWE-407/23を徹底比較試聴したレポートをお届けしたい。

「WE-4700」(手前、アームベース付)と「WE-407/23」(奥)

約35年を隔てた新旧トーンアーム、その構造面での違い

「WE-4700」と「WE-407/23」、新旧2つのアームは、外観的にもほとんど相違なく作られており、ぱっと見では判別が付かないほどである。だが、結論から言って、両者の性能には雲泥の差があると申し上げたい。持っている性格の方向性こそ同じではあるが、その表現力の度合いは全くもって別物であるのだ。

精度を重視していることに変わりないが、かたや職人技によるハンドメイド、かたや現代技術を駆使した精密加工とアプローチを変えている

WE-407/23は、主に汎用パーツを組み合わせて作られ、ワッシャーを多用して組み立て精度を高める職人芸によって本体が構成されていたという。しかしながらWE-4700では、3次元CADを駆使し、振動解析も行いながら、現代の高精度な加工技術によってWE-407/23の3分の2となる60点までパーツ数を削減することに成功。開発製造を担う内野精工によって、ピンの1本に至るまで完全に内製化されるという徹底ぶりだ。また、内部配線にはPC-Triple C線材が用いられ、信号経路の精度向上も実現されている。

外観的に大きく異なるのはアームベース。WE-4700では、より肉厚で頑強なアームベースになると共に、リングを回転させることでアームの締め付けが可能となり、アームの高さ調節が極めて容易となった。

外見上は、アーム本体よりアームベースの方が違いが大きい。調節も容易となった

聴き慣れたシステムで、指先の動きから空気感まで伝わることに気付く

早速、筆者が自宅でリファレンスにしているプレーヤーとカートリッジで試聴をしてみると、両者の大きな違いに気付かされる。そもそもWE-407/23は、精巧なダブルナイフエッジ構造によって、明瞭で分離感に富んだ、粒立ちの良いサウンドが魅力のトーンアームであったが、WE-4700と比較すると、次の3点に大きな差が現れた。

まずは筆者が現在リファレンスとしているDS Audio「DS-W2」で聴き比べる

プレーヤーはラックスマン「PD-171A」

【1】空間再現性と低域再現性における情報量の大幅な拡大
【2】トラッカビリティ向上による各音域の低歪み化
【3】内部配線材による音質品位向上

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