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驚くべきスピーカー制動力

“小は大を兼ねる”プリメインアンプ。Hypex Ncoreモジュール採用、ティアック「AX-505」を聴く

公開日 2019/09/13 06:15 角田郁雄
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クラスDアンプの増幅原理も説明しておこう。まず、入力されたアナログ信号は、100kHz前後のクロックを使用するPWM変調器でパルス波(疎密波)のような波形を生成し、これをMOS-FETスイッチング素子で増幅する。この出力には、原理的に高域ノイズが重畳されるので、最終的にローパス・フィルターを介して出力される。

AX-505に搭載されたTEACカスタムのNcoreモジュール

ボードにはTEACの文字がプリントされている

なお、このHypex製モジュールには高品位なスイッチング電源も搭載され、出力段がコンパクトになることも特徴である。音質面では、ひと昔前はクラスDというと高域に微細な高域ノイズを感じるなど賛否両論であったが、現在は技術が格段に進化を遂げ、AB級アンプと区別できないほど高音質化された。しかも、重たい電源トランスや放熱器も必要とせず、電源効率も実に高い。

電源効率が高いということは、極めて俊敏な立ち上がりを実現し、高いダンピングファクター値も実現する。本機のダンピング・ファクターは370以上と、立派な性能値である。こうしたモジュールゆえに、当然のことながら消費電力も少なくできる。まさに現在のエコ時代にふさわしいアンプと言えるのである。


プリ部にも注力。XLRバランス入力を搭載

本機は、肝心なプリアンプ部にも手抜かりがない。同社が扱い慣れている、アナログ的な色濃い音質が特徴MUSESオペアンプと、高精度抵抗ラダー型ボリュームを採用する。プリ部への電源供給は、新設計の大容量トロイダルコア・トランス搭載のアナログ電源から行っている。ヘッドホンアンプには、リニアリティの高い出力を実現するCCLC方式(カップリング・コンデンサーを排除した回路)のアンプを搭載している。

プリアンプ部にも注力。ボリュームの操作感も品位が高い

UD-505やNT-505とのバランス接続も考慮され、XLRバランス入力も装備され、AWG8(外径約3.3mm、断面積約8.4mm2)のスピーカーケーブルも接続可能なバナナプラグ対応の高品位スピーカーケーブルも装備している。


B&W「802D3」を朗々とドライブ。優れた空間表現や立ち上がりの早さに驚く

試聴は、自宅のリスニングルームで行なった。再生プレーヤーには、NT-505を組み合わせ、スピーカーには、B&W「802D3」使用した。リファレンスとして普段から再生している192Hz/24bitのHoff Ensemble「Quiet Winter Night」を再生するなり感激させられたのは、AX-505が802D3を朗々とドライブしたからだ。私の重視する空間再現性も十分で、広々とした空間に奏者や歌い手をリアルに描写していく。しかも弱音の再現性が高く、弱音再生時に音量を上げても、音の透明度が維持されていることに感心させられた。

NT-505と組み合わせて試聴を行った

また、このサイズの製品とは思えないバスドラムの俊敏な立ち上がりも示す。大音量再生しても音像定位がブレず、安定しているのである。その音質は、中低域に厚みのあるピラミッド型バランスが特徴で、倍音成分の豊富なアナログ的な質感も優れたものだ。もし、何の説明もなければ、おそらくこの音はAB級アンプの音だと思ったことであろう。クラスDアンプは、確実に、A級やAB級アンプと肩を並べる音質へと昇華しているのである。

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