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【特別企画】プリ/ヘッドホンアンプを内蔵

CHORD「Hugo TT 2」レビュー。唯一無二の“滑らかな音の質感”を聴かせてくれる多機能DAC

公開日 2019/09/02 06:15 生形三郎
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勿論、強力な駆動力を誇るヘッドホンアンプ部も健在だ。3.5mmが1系統、6.3mmが2系統、合計3系統のアウトプットは全て独立され、8〜600Ωまでのヘッドホンを最大3機同時に接続しても音質に影響しない出力部を持っている。

筐体はこれまで通り、アルミブロックの削り出しによる上下分割式筐体を採用。小型で極めて高剛性な筐体によって、据え置き時に受ける振動影響のコントロールが追求されている。また、同社製品に共通する、ユニークかつ近未来的な、所有欲を掻き立てる魅力的なそのルックスも当然引き継がれてる。


密度のある質感ときめ細やかで滑らかな表情を湛えた音

早速その音質をチェックしてみる。テストには、プリアンプにアキュフェーズ「C-3850」を、パワーアンプに「M-6200」を用い、スピーカーにはB&W「803 D3」を使用した。

その出音は、CHORDのDACに共通する、密度のあるジューシーな質感と、きめ細やかで滑らかな表情を備えたものだ。ヴォーカルは、歌声に血が通うような体温の宿った、温もりと張りを持った音で描き出される。同時に、ヴォーカルや楽器音像の輪郭には明瞭なエッジがもたらされており、歌声や旋律が浮き立つような縁取りで音楽が展開するのだ。滑らかさに加えて、独特の粒子感を持ったザクザクとした食感と、ジューシーな歯応えが両立するというのだろうか。音の存在感、特に中域帯の存在感が太く、それらの塩梅が絶妙なのだ。

スピーカーにB&W「803 D3」を組み合わせ、本機の音質をチェックした

ヴォーカルは厚みある歌声で前に迫り出し、ピアノやギターのタッチもふくよかなボトムを持ちながらも、明瞭な張り出しを持っている。ベースやバスドラムなど、低音の美味しい帯域も、厚みを持ってしっかりと出てくる様が心地よい。単に、滑らかとか円やかで耳当たりがいいとか、逆にハイファイとか原音忠実度が高いとか、どれか一面的な特徴を示すというよりも、それらが巧みに織り重なって総体的な音の旨みを作り出しているのである。

立ち上がりと余韻の表現が素早く、音楽が淀みなく流れる

加えてその音色感と共に最も重要な要素として上げられるのが、実にスムーズな時間軸表現だろう。音の一つ一つにおける、立ち上がりや余韻の表現が、素早いのである。つまり、音楽が淀みなく流れていく印象と言えばよいのだろうか。先述のように、独特かつ訴求力、そして説得力がある音色の質感を備えていながら、描き出される音のエネルギーの推移は、実にスッキリとスムーズで連続性に富んでいる。


これはまさに、同社のお家芸でもある、高性能FPGAによる大幅なオーバーサンプリングによる恩恵なのだと推察する。「デジタルデータの仕組み上、使用を避けて通れないローパスフィルターの使用を、可聴帯域の遥か外側にまで不要とすることで、すべての音の立ち上がりから立ち下がり(トランジェント)の波形を一切滲みなく再現することを追求する」という、同社のDACが持つサウンドの真骨頂がここに現れているのだろう。この滑らかな音の質感こそが、CHORDのDACが多くの人々を心酔させる絶対的な魅力なのではないだろうか。

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