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次世代のオーディオを表す、完成度の高さを実現

現代スピーカーの理想像を示す、巧みな音楽性と美しい意匠。FOCAL「Kanta N°1」を聴く

2019/04/10 土方久明
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ロックはどうだろうか?ビルボードのロックチャートで上位のイマジン・ドラゴンズ、アルバム:Origins から「Natural」(44.1kHz/24bit)を再生した。イントロのコーラスの音色が色彩感豊かで、そこにセンターボーカルが等身大にビシっと定位する。やはり空間表現力は高い。そして、次の瞬間ガツっと演奏が盛り上がるのだが、全帯域のスピードが早く、色彩が豊かで明るい音だ。

クラシックは、ワイルドな風貌でインパクト絶大な男性ヴァイオリニスト、ネマニャ・ラドヴィチの「バイカ」を再生。ヴァイオリン協奏曲ということで、ソリストのヴァイオリンとオーケストラの再生能力に注意して試聴した。クラシックでは、音が明るくて全体的に陽性のサウンド傾向。ヴァイオリンの音色が良く、オーケストラとの描き分けも秀逸だ。サウンドステージは広大で、天井高も広く、音が出てから消えるまでの空気感も秀逸に表現する。



Kanta N°1の仕上がりは、オーディオの次の時代へ向かう先を明示するような完成度の高いものだ。スピーカー本体、スタンドとも360度どの角度から見ても美しく、現代のインテリアに求められる要素を高次元に実現している。

これがデザイン関係のメディアであれば「このデザインだけでも買い」なんて書かれるのかもしれないが、Kanta N°1の素晴らしさは、当然ここだけでは収まらない。老舗メーカーの作品らしく本スピーカーはとにかく音が魅力的だ。どんなジャンルの楽曲を聴いても、聞き手を巧みに引き込む音楽性があり、作り手の感性の高さを実感させる。

繰り返しになるが、いまオーディオは変革期にある。ソース音源がCDからデジタル楽曲ファイルスやストリーミングになりつつあり、それらを良い音で快適に聞ける要素が求められている。また、ライフスタイルが多様化したことで、ユーザーはセンスの良いオーディオ製品を必然的に求めてくる。

それを象徴するように、ここ1年で日本に入ったオーディオ製品のデザインレベルは間違いなく上がっている。そんな中で、信頼性の高いオーディオメーカーのフォーカルが、このような見た目もサウンドも完成度の高いスピーカーを世に送り出してきたことは、ユーザー時代も含め長い間オーディオに関わってきたひとりとして嬉しい。

シリーズ名の「KANTA」は、「歌う」「楽器を演奏する」などの“カンターレ(Cantare)”をモチーフに、CとKを入れ変えたものとアナウンスされているが、まさにその名に恥じないクオリティである。アーティストが朗々と歌う素晴らしい音に、筆者は仕事を忘れて聞き入ってしまった。世の中にあるブックシェルフスピーカーの中でも、導入後の満足感がかなり高い1台であろう。

(土方久明)

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