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【特別企画】VGPアワード審査員3名が徹底検証

新4K衛星放送チューナー内蔵 液晶ビエラ「GX850」を全方位チェック!

公開日 2019/03/29 10:00 鴻池賢三/大橋伸太郎/岩井 喬
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明るく力強い、新4K衛星放送の映像美

液晶ビエラ初となる新4K衛星放送チューナー内蔵テレビ、「GX850」シリーズで注目したいのは、受信機としての進展ばかりでない。Dolby Vision/HDR10+の両規格に他社に先駆けて対応(18年モデルの4Kビエラは、HDR10+に対応するソフトウェアアップデートを実施済み)、さらに液晶方式の着実な進歩を反映した画質面で現在大注目のテレビが本機である。

パネルはIPS方式、またパナソニック独自の高画質技術「ヘキサクロマドライブ」を採用。3次元カラーマネジメント回路で色表現の精度を高める。最も注目したいのが「AI HDRリマスター」で、地上デジタル放送などのSDR映像を、HDR並の高コントラスト映像に変換する新機軸だ。HDRに関して他にも注目すべき機能が採用されている。バックライトを部分ごとに制御するローカルディミングに加え、エリアをより細分化した映像信号処理を行い、きめ細かくコントラストを制御する「Wエリア制御」を採用。明暗部の表現力に期待が高まる。

音元出版の視聴室でパナソニック「GX850」の「画質」をチェックする大橋伸太郎氏

それではまず、注目のBS4K放送の画質を、「リビング」および「スタンダード」モードで確認していこう。視聴には55インチとなる「TH-55GX850」を使用している。

「GX850」に用意されている画質モード。BS 4K放送は「スタンダード」および「リビング」で、UHD BDの映画ソフトは「シネマ」および「シネマプロ」で視聴をおこなった

一見して、明るく力強いハイコントラストな映像だ。映像のダイナミックレンジに富み、京都祇園の舞妓の生活を追ったNHK BS4Kのオンエアは、花街祇園の昼と夜の情景の対照にテレビドキュメントらしい疑似体験性がある。舞妓の艶やかな黒髪に思わず目を奪われる。

次に注目機能「AI HDRリマスター」を試してみた。パナソニック「DMR-SUZ2060」で昨年末に録画した紅白歌合戦から松任谷由実の「ひこうき雲」を観る。まさに真性のHDRのようで、NHKホールに組まれた教会を模したセットに柔らかく自然な光ときらめき感が満ち、レクイエム的な演出意図が分かりやすい。ぎらつきと不要な色付きがなく穏やかな透明感のある映像は、これから4K放送を楽しもうというユーザーの恩恵になるだろう。

Dolby Visionで観るUHD BDは鮮烈!

さて、ここからはパナソニック「DP-UB9000」との組み合わせで、UHD BDを見てみよう。

UHD BDの視聴は、パナソニックの再生機「DP-UB9000」と組み合わせておこなった

昨年屈指の優秀盤『マトリックス トリロジー』で「GX850」は本領発揮、S/Nが高くフィルムグレインがきめ細かく落ち着いて現れる解像感と豊かな階調表現に感嘆。俳優のクローズアップの立体感、リアルで自然な存在感に息を飲む。同社のUltra HDブルーレイプレーヤー「DP-UB9000」の送り込む凄まじい情報量とあいまって、巨大戦闘メカの鋼鉄の肌のにび色のぎらつく輝き、脂と炎の匂いが視聴室に充満する。2K SDR時代に想像を絶するパワフルな映像がここにある。

同じくUHD BDの『4K 夜景 HDR』では、「DP-UB9000」から入力の「4Kピュアダイレクト」(4:4:4信号の正確な色再現を行う機能)をオンにして鑑賞した。抜けやすい小面積の微妙な色表現で正確さを発揮、きりりと引き締まって胸のすくような冴えた夜景を堪能させてくれた。GX850は、暗部の表現力にも優れている。

『マリアンヌ』は、冒頭のモロッコのマリオン・コティヤールの瞳の輝き、メイクアップの繊細な表現、映像に自然な奥行きが現れ俳優の浮き上がるような立体感に目が奪われる。黒の引き込みをあえて過剰に行なわず、上下のレターボックスの黒帯は紫っぽい色にうっすら浮くが、スクリーン内側の映像視聴には大きくは気にならない範囲である。

「HDR明るさ設定」は、「ダイナミックメタデータクリエーション」「HDR明るさオート オンオフ」と調整範囲が多岐に渡る。これがとても使い勝手がいい。輸入盤のUHD BDソフト『ボヘミアン・ラプソディ』を再生してみると、クライマックスのライブエイドのステージシーンは「シネマプロ」のデフォルト設定のままでは、光の輝きがやや物足りなく感じられた。そこで「HDR明るさ補正(0~15)」の調整で主演ラミ・マレックの肉体にみるみる恩寵の光が宿り、撮影監督の演出意図が的確に顕現した。本作は、煩悶に苛まれ続け、最期は大衆を楽しませることに殉じる聖人の映画。フレディーの体を輝かせるウェンブリーの空の光を天国の光と感じさせなければいけない。画質調整によって、好みに追い込めるのはうれしい仕様だ。

ちなみに「GX850」の内蔵スピーカーは、Dolby Atmosに対応している。実は「GX850」で楽しむ『ボヘミアン・ラプソディ」の演奏シーンの再現性は素晴らしいのだが、サウンド面についてのレビューは別稿の岩井喬氏のレビューも参考にしてほしい。

さて、もうひとつ映像面での注目すべきトピックは、Dolby VisionおよびHDR10+に、他社に先駆けて両対応したことだ。Dolby Vision対応ソフトを見るためには一定の手順がある。まず再生機側の「DP-UB9000」の「初期設定」から「Dolby Vision設定」を「入」にしたうえで、「GX850」のメニュー「機器設定」内「HDMI HDR設定」の「HDRダイナミック設定」に入り、HDR10+/Dolby Vision(オンオフ)を選択する必要がある。(デフォルト設定はオン)


「HDRダイナミック設定」の「Dolby Vision」を「オン」の状態でDolby Vision対応ソフトを再生すると、テレビ画面右上にDolby Visionのロゴが現れる
Dolby Vision「オン」で見たUHD BDの海洋アドベンチャー映画『THE MEG』の高画質ぶりは、今回最大の収穫だった。まばゆい明るさで隅々まで解像感が行き渡る。同じ最大輝度4000nitsでもHDR10での視聴とはまるで別物の映像体験である。明暗コンビネーションが躍進して細部にまで光が行き届き輝き、俳優のクローズアップでは照明の生み出すグラデーションが生々しく息づく。コントラストの拡大と階調の充実がいかに映像を緻密化するかの好例だ。特筆すべきは色彩の発色の鮮やかさで、PQで見ていた時と別物のふきこぼれんばかりの艶やかさ。本作は一種の映像によるアトラクションで内容は至って単純なのだが、「GX850」の映像の有無を言わさぬパワーに能書きを忘れて没入してしまう。

「GX850」は、打てば響く鋭いレスポンスを持つ、エッジを行くテレビとしての顔も持つ。液晶方式の進歩が着実に反映され、優れたソフトを入力すると隠していた爪、つまりフォーカス感のよさ、精細感、色彩バランスの巧みさが現れ、パナソニックが本機に込めた「攻めのアプローチ」が見えてくる。いま、必見のフルスペック4Kテレビといえる。
(大橋伸太郎)


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