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【特別企画】CDプレーヤー「vivid」とプリメイン「vita」

心ゆくまで楽しみたくなる音と佇まい。Auraの30周年モデル「Premium Black Edition」を聴く

公開日 2018/12/29 06:00 土方久明
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ジャズでは、マイルス・デイヴィスが1958年にプレスティッジ・レコードから発売した『リラクシン』を聴く。マイルスのミュート・トランペットの音は、立ち上がり表現に優れ、倍音の伸びがスムーズだ。そして、抜けのよいサウンド音でありながら、中域にもしっかりと厚みがある。ジョン・コルトレーンのサックスは、理想的な色艶でもって聴かせてくれる。アンプの高い駆動力を確認できるのはポール・チェンバースのベースで、深く沈みこみながら正確に制動されている。

CD再生は予想以上の音で筆者を驚かせてくれたが、それではハイレゾはどうだろうか? 先述したとおり、vita Premium Black EditionはUSB入力からのPCM/DSD再生にも対応する。そこで、Mac用再生プレーヤーソフト「Audirvana Plus」をインストールしたMacbookProと、vita Premium Black EditionをUSBで接続。高音質レーベル2xHDからリリースされているキャノンボール・アダレイ『Cannonball Adderley Quintet』(DSF 5.6MHz/1bit)を再生してみた。

試聴の様子。ヌケのよいサウンド音でありながら、中域にもちゃんと厚みがある

CDドライブはディスクトレイタイプ

本楽曲はブートレグに近い立ち位置の音源なのだが、マスターテープからダイレクトにトランスファーされた鮮度の高い音質を持つジャズアルバムである。vita Premium Black Editionは、DSDにダイレクトにトランスファーされたらしい卓越した情報量を引き出した上で、しっかりとジャズらしいグルーブ感を再現する。ノリと温度感が最高で、とにかく気持ちよく聴ける。

「こんな音でクラシックやジャズを心行くまま聴けたら、どんなに幸せだろう」。試聴中に書いた筆者のメモにはそう記してあった。

さらにvita Premium Black EditionはMC/MM入力対応のフォノイコライザーを備えているということで、ラックスマンの新型アナログプレーヤー「PD-151」に、フェーズメーションのカートリッジ「PP-2000」を組み合わせ、女性ジャズボーカルの定番タイトル、ダイアナ・クラール「ターン・アップ・ザ・クワイエット」に針を下ろしてみた。

結論から先に話すと、この組み合わせは相性が良く、聞こえてくる再生音は、筆者の期待を大きく上回るものだった。オーディオ的な音質について表現するならば、全帯域がシームレスに繋がり、かつ中域を中心に温かみのある質感も備えている。表現力が実に豊かだ。ボーカルは色彩が豊かで明るい音調で、歌手とピアノの位置関係が上手に表現されている。さらにシームレスで密度感のある中低域により、ベースやピアノの音楽な情緒を引き出してくれることも特徴だ。アナログ再生のアドバンテージともいえる音楽性とオーディオ的な再生能力がうまくバランスしている印象を持った。


オーディオファイルが最も大切にしたいのは“音”


音楽を良い音で良い空間で聴くという、オーディオの基本をシンプルな構成で実現している
今後、ライフスタイルへの意識はますます高まり、音楽性とデザインが高い次元で同居したオーディオ製品への欲求はさらに強くなっていくはずだ。事実、巷のライフスタイル誌で時折掲載される特集を見れば、生活に溶け込む佇まいを備えたオーディオ製品がフィーチャーされるようになってきている。とはいえ、私たちオーディオファイルが最も大切にしたいものが“音”であることには何ら変わりない。

vita Premium Black Editionとvivid Premium Black Editionは、音楽性が高く、優秀なオーディオ機器の規範と言いたくなるような聴き手に訴えかけてくる音と、自宅のオーディオルームのラックに納めたところを何度も空想してしまう美しいデザインを両立している。30年も前からデザインと音質を追求してきた名門の強みは、今後改めて注目されるはずだ。音楽を良い音で良い空間で聴くという、オーディオの基本をシンプルな構成で実現していることの重要性を、筆者は改めて実感させられた。

両機はそれぞれ単体で使用してもその類稀なる音楽性を発揮するし、また今回使用したような音楽性の高いスピーカーと組み合わせれば、極上の音楽体験を実現してくれる。音質とデザインは高度に両立できることを具体的に明示してくれたという点でも、この2機種には賞賛の言葉を贈りたくなる。

(土方久明)

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