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連続レポート<後編>

マランツ「SA-12」のオリジナルDACを自分好みに追い込める、“24通りの音質カスタマイズ”を検証

公開日 2018/12/12 06:45 山之内正
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マランツ試聴室にて、サウンドマネージャーの尾形氏と共に各種設定の音質を確認する山之内氏


オルガン伴奏の合唱はジャズに比べると最適な設定を追い込むのが難しかったが、迷った末にこちらも3rd-1を選ぶことにした。どちらもデフォルトの設定と同じで意外性がないのだが、声とオルガンの間の遠近感や空間の広がりなど、この音源で一番こだわるべきポイントに注目すると、4次よりも3次が優れていて、さらに声質の異なる複数の合唱団員の音が混ざり合う雰囲気はレゾネーターをオンにした方がリアルに聴き取ることができたので、最終的には3rd-1に落ち着いたという次第だ。

<ディザー>

最後にディザーの効果を確認する。これはオフも含めて3つの選択肢があり、デフォルトは1に設定されている。ジャズヴォーカルは声のなめらかな質感と各楽器の粒立ち感がバランス良く両立し、他のポジションよりも明らかに相性が良い。オフにした方がS/Nが向上するという点はたしかに理解できるのだが、デジタルフィルターを切り替えたときの声の音色の変化と重ね合わせると、ここでなめらかさを引き出したいという結論になった。

オルガン伴奏の合唱はオフのポジションを選んだが、こちらも予想とは違っていた。1に設定した方が奥行きは深まるものの、声の微妙な表情を活かしつつ、包み込むような余韻の広がりに浸るにはオフにした方が良い結果が得られる。ディザー2の設定は、声の音色と空間表現のバランスが両立しにくい面があり、この音源との相性はあまり良くないように思う。


好みの音質を追求する上でぜひ活用したい機能だ

順を追って設定を変えていくと、それぞれ項目ごとの音の変化の内容がなんとなく把握できるようになり、相互の関連についてもある程度の予想ができるようになった。今回は2種類の音源に絞って聴き比べたが、両者に共通するのは声が主役という点。音色の変化がわかりやすく、音像定位の位置も設定によって僅かだが変化する。聴き慣れているソースは個人差があるので絶対にお薦めというわけではないが、少なくとも1曲は声を含むソースを加えておくと違いがわかりやすいと思う。

一般的にカスタマイズ機能の使いこなしは難しいと言われ、結局は出荷時の設定に戻してしまうという例も多いと聞く。今回もノイズシェイパーの設定についてはデフォルトと同じ選択になったので、推奨ポジションにはそれなりの意味があると言って良いだろう。

一方、別の設定を選ぶことで好みの音に近付くこともあり、最適な設定が音源によって変わるという事実も確認することができた。マランツの設計陣が24通りもの選択肢をあえて開放することにした背景には、それなりの理由があったのである。

(山之内 正)

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