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先進技術を積極的に取り入れた準旗艦モデル

デノン「AVC-X6500H」レビュー。フラグシップに肉薄するスケール感豊かなAVアンプ

公開日 2018/10/12 06:00 大橋 伸太郎
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映像の立体感を鮮明かつのびのびとした音響で表現。フラグシップ譲りの密度感も備える

映画ソフトはどうか。『グレイテスト・ショーマン』は歌と演奏のコントラストも際立ち、量感豊かな演奏の中に歌がすっくと立つ。音場表現に関しても、効果音の空間内の立体的なパン、イマーシブらしい立体表現が前作に比較して精度を増しており、映像と見事に一致して爽快。デジタル部の追い込みが進んだことが分かる。のびのびとスケール雄大に鳴らすアンプ、という点でX8500Hに大接近したといっていい。

X6500Hの筐体内部

『リメンバー・ミー』チャプター24の野外コンサートシーンは、音場にスケール感があり、高さ、広さとも豊かで、その中のオブジェクトの移動表現にキレがある。歌手の歌声の全体の響きからの分離、実在感も優れ音場に呑込まれないのだ。背後や側方に回るオブジェクトの存在感も鮮明で小気味よい。

ミゲルとママ・ココのデュエットシーンは、このアンプの明るい音色だがしっとりと落ち着いたハイファイ表現力を映像ソフトで実感させる好例だ。ラストのミゲルの歌は、ボーイソプラノの倍音が豊かに乗った明るく温かい音色を、詰まらず伸びやかに聴かせる。サイズの制約を感じさせない伸びやかな表現力の手応えだ。

『プライベート・ライアン』はイマーシブサウンドを得て蘇った。瓦礫を踏み潰して行くタイガー戦車の、複雑なキャタピラ音の表現にX6500Hの細かい分解能がうかがえる。戦場の轟々たるノイズを逐一情報として音場に出し切り、甘さや曖昧さがない。デコード部の解析と音場処理の進歩も如実に分かる。

X6500Hの背面部

頭上を飛び去って行く対地攻撃機P51のスピード感も豊か。移動方向にあいまいさがなく、轟音が確かな量感を伴って頭上高く鮮明に飛び去って行く。続くシーンでも飛んで行く方向の違いは鮮明で表現にあいまいさがない。エンジンの熱い機関音ももやもや混濁せず、解像感に富む。

総じてモノリスコンストラクション導入初期に見られた硬さが、X6400Hでしなやかさに変わり、今回のX6500HでX8500Hの密度感、粘っこさが加わったといえよう。

セパレーションや定位は上位モデルにも引けを取らない兄弟機種「AVR-X4500H」

今回、X6500Hと同時に発表されたミドルクラス機「AVR-X4500H」(以下、X4500H)もデノン視聴室で聴くことができた。本機搭載DACは「AK4458VN」×2でX6500Hと共通。X4500HとX6500Hは近似性が強く、11chのパワーアンプが必要ない場合、有力な選択肢だ。

AVR-X4500H

X6500HはX8500H同様のモノリスコンストラクションを入れているが、X4500Hは構成上やや異なっている。ちなみに今回の強化ポイントであるアンダーシャーシは、X6500Hの1.2mm厚ダブルレイヤーに対し、X4500Hでは1.0mm厚となる。

AVR-X4500Hの試聴はステレオ再生から。情家みえの「エトレーヌ」はX6500H同様に低音楽器の解像力の伸長が伺われる。量感があるだけでなくよく弾む。その他の楽器の音の立ち上がりも早く、切れと鮮度、声の生々しさが爽快。豊かな膨らみとふくよかな肉声感も魅力だ。ピアノの立ち上がりも鋭くなまらない。

ノイズフロアは低く、聴覚上の妨害要素がないため音場の澄明度が高い。くっきりした楽器の輪郭も小気味よい。ただし、X6500HさらにX8500Hと比較してしまうと、やや帯域が物足りないかもしれない。ローエンドがどこか手前で留まる印象がある。

テオドール・クルレンツィスの振る「悲愴」は楽器セクションのセパレーションが鮮明。旋律を担う楽器の押出しがよく定位が極めて鮮明。ピュアオーディオアンプに引けを取らない描写力だ。

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