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最上級のマランツサウンドがこの価格で手に入る! マランツ「SA‐12」「PM‐12」驚異の実力

2018/09/07 土方久明
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ディスクリートDACの性能を見せつけるようなものすごいサウンドだ。ワイドレンジで、チック・コリアのピアノは実体感が高く、それを支えるデイヴ・ホランドのベースは聴感上のダイナミクスが非常に大きい。音色の色艶が良く、音楽に一番大事な中域に活動感がある。「これがマランツの求める音なのか」と改めて感慨に浸り、音ではなく音楽を楽しんだ。

そしてもうひとつ感心したのは、ディスク再生時の音の良さだ。同一タイトルのSACD盤を再生したのだが、こちらも一聴してワイドレンジで、ピアノタッチに全く付帯音が感じられない。普段ファイル再生がメインの筆者からすると、ディスクプレーヤーの音はドライブの固有の音が“味”となって聴こえる印象があるが、SA‐12で聴くSACDの音は、USB DAC再生時とほぼ同一。これには大いに驚かされた。ディスクドライブメカの性能の高さを物語っている。

次に聴いたDSD 11.2MHz音源のSHANTI『UP ON THE ROOF』はさらに圧巻だ。一発録音されたヴォーカルはリアルすぎるほどの再現性で、聴感上S/Nが高く静寂感が高い。これらは、高周波ノイズを排除する「コンプリート・アイソレーション・システム」や、DAC以降のアナログステージに独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA3」を搭載したフルディスクリート構成のオーディオ回路が効いているということを示す。さらに、ピアノやベースの位置関係、いわゆる空間再現性に優れていることも印象的だ。実はSA‐12は最新世代の超低位相雑音クロックを採用したことで、SA‐10より15dBも位相雑音を改善しているという。つまりSA‐12は、新モデルとしてSA-10より進化した部分さえあるのだ。

また試聴を通じて小音量時のリアリティの高さ、ベースの明瞭さや立ち上がりの良さに感心したが、それはPM‐10の2倍以上というダンピングファクターを実現したPM‐12のアンプ部のパフォーマンスが優れていることだろう。そして何よりもマランツのプリアンプ開発において継承されてきた「入力信号の鮮度をいささかも損なうことなく、パワーアンプに送り届けること」をフィロソフィとしてプリ部の性能にこだわったそうだがそれが音に現れている。

実は現在、海外の名だたるハイエンドブランドのディスクプレーヤーが、マランツを擁するディーアンドエムホールディングス製のディスクドライブを採用し始めているようだ。つまりSA‐12は、驚異的な性能を誇るディスクリートDAC回路の搭載もあわせ、ある意味、世界のデジタルオーディオのトレンドが30万円前後の価格に凝縮された驚異のモデルと言ってもいいだろう。

SA‐12とPM‐12は前モデル14シリーズの単純な後継機ではなく、12シリーズとして作り込まれた“リ・ラインアップ”として捉えた方が良い。まさしくマランツ製Hi-Fiコンポーネント群におけるゲームチェンジャーのような存在になるだろう。それにしても驚異的なコストパフォーマンス。最上級のマランツサウンドをこの価格で楽しめるようになるとは驚き以外の何物でもない。改めてマランツの開発陣に拍手を送りたい。

デジタルオーディオのトレンドを別方向から示唆するプレーヤー
■マランツが誇る「総合的デジタルプレーヤー」としての独自性

ここ数年でのデジタル再生環境には、さまざまな変化があった。インターネット環境の進化によってこれまでにないハイレゾクオリティの音源を入手することが可能となったり、DSD11.2MHzやPCM 384kHzなどの従来の常識を超えたスペックを持つ音源が手に入るようになったりと、このあたりはポジティブな変化だったといえるだろう。その一方で、オーディオファイルにとって大きな問題となったのが、CDに代表されるディスク再生。これまでのライブラリを再生するためのドライブメカは長年大きな課題となっていたが、実は今年に入って大きな解決を見ている。

SA-12に搭載されたメカニズム、SACDM-3。高剛性なスチールシャーシとアルミダイキャストトレーの採用などによって、高いデータの読み取り性能を実現。ちなみに、USB経由で再生する場合などはメカエンジンの電源供給からシャットアウトする仕組みとなっている

ドライブメカに採用された回路も最小化。余計な電流やノイズの発生の抑制を徹底している

5月に開催された世界最大級のハイエンドオーディオ見本市「Munich HIGH END」では、新たにSACD/CDプレーヤーの開発をアナウンスするブランドも多かった。実はそれらの多くが、マランツブランドを擁するディーアンドエムホールディングスのメカニズムをベースとして採用・搭載している。その流れを踏まえると、SA-12は、現在のデジタルオーディオにおけるトレンドをストリーミングとは別方向で体現した製品とも言うことができるだろう。

他社ではなかなか真似のできない技術力、開発力によって実現したオリジナリティ。SA-12はミドルクラスながら、そんな強烈な存在感を放つモデルということができそうだ。

(土方久明)



Specification
〈SA-12〉
【オーディオ特性(SACD】●再生周波数範囲:2Hz〜100kHz●再生周波数特性:2Hz〜50Hz(−3dB)●S/N比:112dB(可聴帯域)●ダイナミックレンジ:109dB(可聴帯域)●高調波歪率:0.0008%(1kHz、可聴帯域)●ワウ・フラッター:水晶精度【オーディオ特性(CD)】●再生周波数範囲:2Hz〜20kHz●再生周波数特性:2Hz〜20kHz(±1dB)●S/N比:104dB●ダイナミックレンジ:98dB●高調波歪率:0.0015%(1kHz)●ワウ・フラッター:水晶精度【出力レベル】●アナログアンバランス出力:2.4V(10kΩ、SACD時)、2.0V(10kΩ、CD時)●ヘッドフォン出力50mW/32Ω(可変最大)【入出力端子】●出力:RCAアナログ×1、RCA同軸デジタル×1、光TOS×1、φ6.3mmステレオ標準ヘッドフォン×1●入力:RCA同軸×1、光TOS×1、USB(Aタイプ)×1、USB(Bタイプ)×1●その他:マランツリモートバス(RC-5)入出力×1【総合】●消費電力:47W●待機電力:0.3W以下●サイズ:440W×123H×419Dmm●質量:16.4kg

〈PM-12〉
【オーディオ特性】●定格出力(1kHz):200W+200W(4Ω、T.H.D. 0.1%)、100W+100W(8Ω、T.H.D. 0.05%)●全高調波歪率:0.005%(100W、8Ω、1kHz)●周波数特性:5Hz〜50kHz(±3dB、CD、1W、8Ω)●ダンピングファクター:500(8Ω、20Hz〜20kHz)●入力感度/インピーダンス:PHONO(MC)=250μV/100Ω、PHONO(MM)=2.3mV/39kΩ、CD/LINE=220mV/13kΩ、POWER AMP IN=1.1V/13kΩ●PHONO最大許容入力(1kHz):MC=8mV、MM=80mV●RIAA偏差:±0.5dB(20Hz〜20kHz●S/N比(IHF Aネットワーク、8Ω):PHONO(MC)=75dB(0.5mV入力)、PHONO(MM)=88dB(5mV入力)、CD/LINE=107dB(定格出力)●【入出力端子】●入力:RCA×5、PHONO(RCA)×1、POWER AMP IN(RCA)×1●出力:RECアウト(RCA)×1、φ6.3mmステレオ標準ヘッドフォン×1●その他:マランツリモートバス(RC-5)入出力×1、F.C.B.S.入出力×1【総合】●消費電力:130W●待機電力:0.2W●サイズ:440W×123H×453Dmm●質量:15.3kg●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス

※この記事は「NetAudio」Vol.31 から転載したものです。

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