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【特別企画】フラグシップの実力を検証

サエク“STRATOSPHERE”「DIG-1/BNC-1」を試す − PC-TripleC/EX採用の最高峰デジタルケーブル

2018/09/04 山之内 正
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ダニエル・ロザコヴィッチの最新アルバムからは、奏者の息遣いや録音会場の空気感など、楽器の音以外の情報まで精妙に再現する雰囲気が伝わってきた。特に無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番では弓の速さや勢いなど、実際に楽器から出てくる音と関連する弓の動きや余韻の広がりが目に見えるような臨場感があり、ヴァイオリニストとの物理的な距離が近くなったと思える変化が生まれた。

前半の協奏曲はオーケストラとヴァイオリンが重なるフレーズでも独奏の旋律が軽やかに浮かび上がり、その後にステージの上で両者が柔らかく溶け合う感触を味わうことができる。比較用に用意した同軸ケーブルではそうした両者の関係をここまで立体的に引き出すのは難しく、ヴァイオリンの最高音域の音色が硬くなることがあるが、DIG-1の独奏ヴァイオリンは音色に潤いがあり、鋭い高音にもささくれ感がなく、まっすぐに音が伸びていく。

付帯音が少ないというDIG-1の長所はヴォーカルとベースのデュオ、ムジカ・ヌーダの曲でも明らかだ。フォーカスがきれいに合ったヴォーカルは高い音域まで音色がくもったり硬くなることがなく、ベースの強いピチカートと重なっても発音が緩まず、密度の高い音がどんどん前に出てくる。ベースはどの音域にも余分な音がまとわりつかず、リズムの切れが鋭い。


クロック導入の効果をより引き出してくれるBNC-1

次にエソテリックのマスタークロックジェネレーター「G-01X」を用意し、K-01XにBNC-1で接続してディスク再生を行った。

「BNC-1」

G-01Xは周波数精度がきわめて高いルビジウム発振器を内蔵し、K-01Xなど複数のデジタルオーディオ機器(最大8台)に多様な周波数のクロック信号を供給して再生音の純度を高める役割を果たす。対応機器の多い10MHzの正弦波クロック信号に加えて、44.1kHz/48kHzの各周波数系列の1、2、4倍及び最大512倍のクロック信号も供給できるため、組み合わせる機器ごとに最適なクロック信号を選ぶなど、選択肢はかなり広い。K-01Xとの組み合わせでも10MHzに加えて176.4kHzや192kHzなど信号の基本サンプリング周波数の4倍に相当するクロック信号も供給可能だ。

マルティン・フレストの新録音からメシアン『世の終わりのための四重奏曲』をK-01XとG-01Xの組み合わせで再生すると、K-01X単独で再生したときよりも音が消えたあとの静寂が一段階深みを増し、思わず息を潜めたくなるほどの緊張感に包まれる。まさに「空気がピンと張り詰めた」という表現が当てはまる独特の空気感、無音よりも静かに感じるほどだ。クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ4人の奏者の間のフレーズと呼吸の受け渡しも精妙そのもので、どの楽章からも特別な集中度の高さが感じられた。

K-01Xsにマスタークロックジェネレーター「G-01X」を組み合わせて、BNC-1のクオリティを確認

クロック精度が上がると空間再現が向上し、楽器同士の遠近感やホールトーンの広がりが改善する効果を経験することが多い。G-01XからBNC-1を介してクロックを供給するアドバンテージもそこにあり、ショスタコーヴィチの交響曲のサウンドステージの広さと3次元空間の広大なパースペクティブはまさに未体験の領域と呼ぶにふさわしい。比較用に用意したBNCケーブルでも奥行きは深まるが、左右と高さ方向への展開という点ではBNC-1の方が余裕があるように感じた。



デジタルケーブルによる音の変化はかなり微妙な領域にとどまると思いがちだが、電源やセッティングなどさまざまな要素を十分に追い込んだシステムで聴き比べると、意外なほど大きな変化が生まれることが少なくない。STRATOSPHEREシリーズはすでにラインケーブルの卓越した性能で高い評価を得ているが、さらに一段階上の再生音を目指すのであれば、同シリーズのデジタルケーブルにもぜひ目を向けてみたい。吟味を尽くしたシステムほど、期待を上回る成果が得られるはずだ。

(山之内正)


特別企画 協力:サエクコマース

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