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“到達点”のその先に実現した進化とは?

Hi-Fi領域の音質を手中にしたミドル級AVアンプ。デノン「AVR-X2500H」レビュー

2018/07/04 岩井喬
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『エクスペンダブルズ2』では、ここでもエラックのJETトゥイーターをよく鳴らして、セリフの発音も歯切れいい。ボトムを引き締めた鮮やかな描写も印象的。ジュークBOXから流れるBGMが空間に浮遊する表現など、上方向への定位も自然だ。

やはり分離が良く、音場も全体的にクリアで見通しが深い。銃声は密度を持たせつつも切れがよく、弾筋も余韻を持たせない鋭さを持つ。SEもタイトで、低域方向の締まりの良さに好感が持てる。

デノンの開発試聴室に設置されたAVR-X2500H

ここでDTS Virtual:Xを有効にすると、移動音がよりスムーズに動くようになるが、SEなどのアタック音は若干甘くなる。BGMについても輪郭を少し弱め、ふんわりと漂うようなマイルドな響きだ。ただし方向性や定位感は的確で、セリフの際立ちなどシャープに感じられる要素も多い。全体的に密度が高く、“物体が移動している”という実在感は得やすい。

気になる上方向への音の広がりについては、ダイレクトデコードよりは一回り大きな空間を感じられる。今回の環境下では、個人的にはダイレクトデコードのクリアかつ鮮やかな音像傾向の方が作品の指向性とも合致するのではないかと感じたが、このあたりはソフトや環境に合わせて使い分けるといいだろう。



AVR-X2500Hは、前モデルから順当に進化を遂げており、S/Nに優れた空間表現とゆとりある低域の再現性において、その優位性を実感できるであろう。そして低インピーダンスのスピーカーを用いたマルチチャンネル環境であっても制動性の良い、高解像度なサウンドを届けてくれた。

特に2ch再生のクオリティ向上は年々ピュアオーディオクラスの品質に近づいており、以前よりハイレゾ音源の面白さ、奥深さも感じやすくなっている。だからこそ、マルチチャンネル環境でのリアリティの追求がしやすくなっていると考えるが、この点が上位モデルにも通じる聴かせ方のうまさ、安定感にも繋がっている。イマーシブオーディオからハイレゾ、レコードまでを音楽性豊かに楽しみたいというリスナーには検討を勧めたいAVアンプである。

(岩井喬)



<試聴音源>
■クラシック
飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』より「第一楽章」(96kHz/24bit)

■ジャズ
オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』より「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』より「届かない恋」(2.8MHz・DSD)

■ロック
デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』より「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)

■ポップス
シカゴ『17』より「ワンス・イン・ア・ライフタイム」(192kHz/24bit)
Suara「キミガタメ」(11.2MHzレコーディング音源を5.6MHzに変換)



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