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鴻池賢三が解説

DLPが作り出す4K映像とは? Optomaも採用、「4K UHD Technology」の原理と仕組み

公開日 2018/05/24 10:00 鴻池賢三
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ちなみに、240Hz駆動が可能なのは、DMDデバイスが画素を構成するミラーを最高約9,000回/秒と高速にスイッチング(オン/オフ)できるからだ。カラーホイールを用い、モノカラーを重畳してフルカラーに見せる単板式DLPプロジェクターの場合、単純に計算すると、10bit(1,024階調)相当の表示を行うには9,000回/秒でも足りないが、実際の映像はグラデーションが充分に滑らかで力不足は感じない。

DMDチップに搭載された極小のミラーが一枚一枚正確にスイッチングする(画像はテキサス・インスツルメンツ公式サイトより引用)

ここからは筆者の推測だが、4:2:0システムに沿った色情報の間引きなど、人間の視覚特性を逆手に取った技巧が用いられているのだろう。スペック上のネイティブにこだわるか、結果とも言える「最終的に脳で感じる画質」で判断するか、今一度ユーザーは考えてみることをおすすめしたい。

■DLPのアドバンテージとは

「4K HDR Technology」は何らかの錯視に近い技巧を用いて実現しているのは間違いないが、実際の映像を見て高精細と感じる理由は、単板式DLPならではのアドバンテージにありそうだ。

それは、画素単位で滲みが無いこと。プロジェクターは基本として赤、緑、青の3色を重ね合わせる「重畳法」によってフルカラーを表現している。単板DLP方式では、映像を作り出すDMDデバイスが1つで、光学的な経路も同一なので、赤、緑、青を精密に重ねることができる。

古くは3本のCRTと3つのレンズを持つ3管式では、「レジストレーションずれ」と呼ばれる滲みが発生して解像度の低下を招くため、調整で解消するのが大仕事だった時代がある。この点、単板DLP方式は原理的にズレの心配が無く、解像度面で非常に有利と言える。

ちなみにテレビはRGBの画素を横に並べる「並置法」で、正確ながらズレを含むシステムと言え、DLPプロジェクターはテレビより優れた一面を持つと言える。加えて、DMDデバイスは超高速で動作し残像が極めて少なく、実質的に我々が重視すべき動画解像度は、最も優れたデバイスと言っても過言ではないだろう。

なお単板DLP方式は、主に映像の白部分で、RGBが虹のように分離して見える「カラーブレーキング」という症状が起こりうる。近年では、製品を選べばほとんど知覚できないレベルに改善されているが、目の感度には個人差があるため、最終的にはユーザー各自が店舗でデモ映像を視聴するなどして確認するのが重要だ。

■DLPの品質の進化

筆者は約20年前のAV機器メーカー勤務時、DLPプロジェクターの製品化に向けて検討を行っていたが、当時はミラーが壊れて画素欠けを起こすことも珍しくなかった。ところがその後、品質が改善されたようで、10年くらい前の製品を引っ張りだして来ても、何ら問題が無い。画素欠けはおろか、輝度ムラや色ムラに強いのもDLPの特徴だ。

DMDデバイスの変遷を振り返ると、画素1つの大きさが、10.6μmから7.6μmへ、そして5.4μmと微細化も進んでおり、今後もさらなる高画素化、プロジェクターの小型化を予感させる。

また、DLPは産業用途でも幅広く利用されている技術で、その肝はフルデジタル制御の超高精度にある。最近の面白い用途としては、車のヘッドライトにDLPプロジェクション技術を利用し、降雨時に雨粒を避けて照射することで、ドライバーの視界を改善するというものだ。これだけの精度があれば、ハイビーム状態で対向車や歩行者のみ光を当てないようにしたり、自動運転時代には、標識の読み取り精度向上にもつながるといわれている。何より自動車用途で採用が検討されているということは、耐久性が高い証でもある。

4K映像においては、もちろん「ネイティブ4K」を否定するわけではないが、「シフト」を利用して高解像度を得る事は、プロジェクターの低価格化と小型化に有利であり、ユーザーに恩恵をもたらすものである。8K時代も間近に迫っている。DLPならいち早く家庭での8K再現を実現してくれるかもしれない。そんな風に思った。

(鴻池賢三)

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