HOME > レビュー > これがワイヤレス+ノイキャンヘッドホンの新たな基準! パナソニック「RP-HD600N」を聴く

[特別企画]全ての要素で期待を超える完成度

これがワイヤレス+ノイキャンヘッドホンの新たな基準! パナソニック「RP-HD600N」を聴く

公開日 2018/03/30 11:10 折原一也
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

もう一つ、想像以上に便利に使えるのが外音を取り込む「ボイススルー」だ。音楽を流した状態で右のイヤーカップを包むようにタッチすると、音楽のボリュームがグッと絞られ、同時に外音がクリアに取り込まれる。

例えば電車や空港のアナウンスを聞きたい時、あるいは飛行機の機内でキャビンアテンダントと会話する時などに便利だ。また、細かな便利機能として、NCボタンを2回押しするとボイススルー状態に固定することもできるので、コンビニで買い物をする時のように、ちょっとした会話をしたい時にも使い勝手が良い。

右のイヤーカップを包むようにワンタッチで、外音を取り込める「ボイススルー」機能がONになる

ハイレゾ相当の微細音の再現性を実現

音質については、最初にRP-HD600NとiPhone 8を組み合わせ、CD音質の音源をワイヤレスでチェックした。

映画「ラ・ラ・ランド」サントラのジャズ音源『アナザー・デイ・オブ・サン』を聴くと、まずピアノの生音の透き通るような再現力、そして広大なサウンドフィールドまで響き渡るリッチな楽器、そして人の声の帯域の粒立ちの良さまで素晴らしいサウンドを実感。またティンパニーの躍動感あるサウンドの響き、トランペットの音を質感まで踏み込む再現力は見事だ。

様々な音源をハイレベルに再現。特に微細音の再現性に優れる

ウッドベースの低音は刻みも音の弾力感と共に、その立ち上がりの像すら浮かぶような圧倒的なリニアリティを達成している。このクオリティのヘッドホンなら…と期待して聴いたカーペンターズの『トップ・オブ・ザ・ワールド』も、音のメロディを超えて、録音時に秘められたギターの質感と立体感、ボーカルの機微までも鳴らし分ける域に到達している。どんな音源を聴いても鳴りはハイレベルだが、特に微細音の再現性に優れたタイプのヘッドホンと言えるだろう。

邦楽からはRADWIMPSの『前前前世 (movie ver.) 』を聴いた。まさに情報量一本勝負といったところで、エレキギターのエッジある、鳴りの質感まで見通すリニアリティの良さ、そしてボーカルも誇張なく声の抑揚まで全て音情報として出し尽くす。洋楽ではMarkRonsonの『Uptown Funk feat.Bruno Mars』を聴くと、極めて広大に展開するサウンドフィールドに、タイトルで正確無比に刻むリズムの激しさ、そしてトランペットの鳴りはアタックだけでなく、楽器の鳴りの質感まで引き出した。

続いて組み合わせるスマートフォンをGRANBEATに変更し、同じ音源を聴き込んでいく。すると、やはりaptX HDによる音質向上が強く感じられた。『アナザー・デイ・オブ・サン』で実感するのは、持ち前の楽器の生音の再現力に加え、音がよりソリッドな実体感を持ち、高域までのワイドレンジな伸びやかさ、更に音の静寂の見通しまでも一段向上する。

『トップ・オブ・ザ・ワールド』はサウンドフィールドの広がりが一段増し、ボーカルの粒立ちの鋭さとエコーも正確に引き出してくる。特にaptX HDの効果が大きく感じられたのは『前前前世 (movie ver.) 』。ギターの音のシャープさと刻みの正確さ、そして男性ボーカルの奥行き感によるセパレーションが大きく現れた。MarkRonsonの『Uptown Funk feat.Bruno Mars』も、音の歯切れと静寂からの立ち上がりが鮮明かつ、音の止めの鋭さも向上する。

RP-HD600Nはワイヤレス対応モデルの中でも、中域の音のクリアネスや厚みのレベルが高く、その音質はハイクオリティだ。GRANBEATとRP-HD600Nを付属ケーブルで有線接続してみると、若干ニュアンスは異なるものの、ハイレゾ志向で音のセパレーションに優れた非常に高精度なサウンドが楽しめる。ただし、この差程度であれば、aptX HDのワイヤレスでも十分満足できるのではないだろうか。

続いてRP-HD500BをiPhone 8から組み合わせ、先ほどと同じ楽曲で改めて聴き込んでみると、RP-HD600Nとベースは同じだがサウンドのキャラクターはやや異なっている。RP-HD500Bで聴く『アナザー・デイ・オブ・サン』はゴージャスで情報量豊富な鳴り、『トップ・オブ・ザ・ワールド』では空間がマイルドに再現される。『前前前世 (movie ver.) 』もキレよくストレートに鳴らし、『Uptown Funk feat.Bruno Mars』はダイナミックに感じられた。

RP-HD500Bの操作ボタン部分

RP-HD500Bにはソフトケースが付属する

一方、GRANBEATと組み合わせたaptX HDの試聴では、『アナザー・デイ・オブ・サン』は生楽器の質感を引き出す音のバランス。そして『トップ・オブ・ザ・ワールド』ではその音の質感が現れ、『前前前世 (movie ver.) 』は情報量志向に、MarkRonsonの『Uptown Funk feat.Bruno Mars』はリズムの刻みの正確さ、そして空間表現と低音表現の安定感を実感した。

RP-HD500Bは音楽再生時にノイズキャンセリング機能がかからない分、AACでは空間表現より音の粒立ち志向になっているが、aptX HDで聴くと、再現できる微細音の領域が広がり、結果的にRP-HD600Nに近い水準まで引き上げられる。有線接続でGRANBEATとRP-HD500Bを接続した際のサウンドにおいても、音質面ではやはり、RP-HD600Nの弟分といった印象だ。



パナソニックが新たに送り出した「RP-HD600N」「RP-HD500B」の2モデルを改めてじっくり使い込んでみると、LDAC & aptX HDという高音質コーデックへの対応と、そのポテンシャルを十二分に引き出すヘッドホンとしての基本性能の高さ、RP-HD600Nにおいては高精度で実用性十分なノイズキャンセル機能、そして上質なデザインと、全ての要素において期待の上を行く高い完成度を見せつけられた。

「ハイレゾ相当ワイヤレスでノイズキャンセリングのヘッドホンを選ぶならRP-HD600N」と言える。今後のこのカテゴリの製品を語る上でリファレンスとすべき一台だ。弟分の「RP-HD500B」と合わせて、2018年の新世代ヘッドホンを語る上での最重要モデルとして推薦したい。

(協力:パナソニック)

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE